東大大学院一部専攻の入試情報サイトなどに「六四天安門」がキーワードとして一時、指定されていたことが東京大学新聞社の調査で分かった。昨年8月から9月に書き込まれてから、3月に同専攻が削除するまで中国からの同サイトへのアクセスができなくなっていた可能性がある。中国からの留学を阻害する目的で行われた疑いが浮上してきた。
問題の書き込みがあったのは、新領域創成科学研究科(新領域)・メディカル情報生命専攻の入試情報ページや英語版トップページ。ソースコード(ウェブページの情報をプログラミング言語で記述した文書)上でメタキーワード(検索エンジンにページの記述内容を伝える文言。ページ上では直接表示されない)として指定されていた。「六四天安門」は昨年8月12日から9月29日までの間に書き込まれたと見られる。(写真1、2)当該ページに天安門事件に関する内容は含まれていなかった。
当該時期の書き込みは国立国会図書館の運営するインターネット資料保存収集事業(WARP)や、ウェブサイトの情報を収集し保存するサイト「Wayback Machine」で確認。一部メディアは6日午後8時ごろにこの問題を報じた。
「六四天安門」は1989年6月4日に中国の北京で発生した天安門事件を指す言葉。中国では情報統制により、サイト内に天安門事件に関連する用語を含む場合、検索結果として表示されなくなると言われる。問題の書き込みがあったウェブページには、一時的に中国からのアクセスができなくなっていた可能性がある。中国からの受験生を排除する意図で不適切なキーワードの指定がなされた疑いが浮上している。
東大、3月の情報提供で把握「大変遺憾だ」
東大本部広報課によると、東大本部は今年3月に情報提供を受けて、書き込みがされていた事実を把握。メディカル情報生命専攻が問題のキーワードを削除し、ソースコードに不適切なキーワードを混入ができないようシステムをリニューアルしたという。今後はソースコードも定期的にチェックすることで当面の再発防止策とする。新領域は現在キーワードの混入が起きた経緯などの事実関係を確認中だ。
東大はUTokyo Compass(藤井総長の就任後に示された、東大の基本方針)で「世界の誰もが来たくなる大学」の実現を掲げる。「東京大学ダイバーシティ&インクルージョン宣言」を2022年に制定するなど、これまで多様性の尊重と包摂性の推進に力を入れてきた。本部広報課は、特定の国からのアクセスを阻害する意図があったとすれば、国内外から多彩な学生・教職員を迎える東大の方針に反する不適切な行為であり、大変遺憾だとコメントした。
過去には差別発言で懲戒解雇の事例も
2019年には大澤昇平特任准教授(当時、情報学環)が「(自身が経営する)弊社Daisyでは中国人は採用しません」とツイッター(当時、現・X)で投稿し問題となった。これに対し情報学環・学際情報学府は異例の声明を発表し、投稿を「不適切」とした上で謝罪。翌年、大澤氏は懲戒解雇となった。
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