学術ニュース

2019年10月18日

結晶構造の関連解明 ゼオライト合成条件 機械学習を活用

 村岡恒輝さん(工学系・博士課程=研究当時)らは、内部にナノ構造を有する材料であるゼオライトの合成条件と結晶構造の関連を機械学習を活用して解明した。成果は1日付の英科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載された。

 

 ゼオライトは、エネルギー的には不安定だが安定して存在できる準安定相として合成され、わずかな合成条件の違いでさまざまな結晶構造を取る。準安定相を理論的に予測する手法はいまだ整備されておらず、狙った結晶構造を合理的に合成することができなかった。

 

 今回の研究では、勾配ブースティング法と決定木という二つの機械学習アルゴリズムを用いて合計686件のゼオライト合成の実験データを解析。ゼオライト合成の化学空間が、少量加えたゼオライトを核として、共通した構造の結晶が生成される領域と、わずかな合成条件の違いで生成物が大きく変化する領域に大別できることを示した。加えて、ゼオライト合成の際に重要度の高い合成条件を抽出することにも成功した。

 

 さらに、村岡さんらは類似した結晶構造を有するゼオライトを結び付けたネットワークを構築。これを手掛かりに合成条件を設計し、目的とする構造を持つゼオライトを合成することが可能になった。今回の研究では実際にこのネットワークを活用し、4種類のゼオライトの間の類似性を発見。EUO型ゼオライトの新たな合成法の開発にも成功した。

 

 今回の研究のアプローチは、新しい物質を発見するためのあらゆる合成システムに適用できる。今後は、ゼオライトを含む準安定相として得られる材料の合成の理解への貢献が期待される。


この記事は2019年10月15日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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