『正直なシラバス』は、Woolopが手掛ける大学の授業を学生が評価する口コミサイト。学生が便利に使うだけでなく、大学にも教員にも喜ばれる「三方良し」のサービスを目指す。Woolopを創業したのは現役大学生の江澤拓宣さんと河村進太郎さん。中学時代からの友人同士だ。
江澤拓宣さん(左)と、河村進太郎(右)さん。
6月のサービス開始から、3カ月ほどで利用者数1万人を突破した『正直なシラバス』。現在は東大、早稲田大学、慶應塾大学の限定公開だ。各大学とも学生の手による授業評価は既に雑誌などで行われているが、紙では掲載できる情報に限りがある。100人の学生がいれば、その数だけ評価が掲載できるのがウェブの強みだ。
ボタンの色などささいな変化が利用者の行動に大きな影響を及ぼすウェブの世界。そのため使い勝手の改善にも余念がない。河村さんが務めるグロスハッカーは、利用データを分析し利用者拡大を達成するのが役割だ。実際に、多くの利用者がトップページを経ずに、検索エンジンから直接個別の授業のページに訪れていることを発見した。最初に訪れたときにサービスの案内ページを挿入することで、「利用者の滞在時間が大幅に改善しました」。
『正直なシラバス』が目的とするのは、教員が熱意を持ち、内容が充実した本当に良い授業がどれか分かることだ。こうした評価システムにより、教員間の競争をも巻き起こし、大学も人事評価などに利用することを期待できる。単に閲覧回数を稼ぎ、「お金もうけを第一の目的にしたくない」と江澤さん。2年後までに全国全ての大学へと拡大を目指すという。
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高校時代、受験のための勉強に疑問を覚え、米国に留学した江澤さん。しかし米国の高校生たちも、名門大学に行き大金持ちになる、など日本と同じような夢ばかり口にする姿に違和感を持ったという。事業を起こし、0から1を作り出すことこそ価値があると考えるようになった。
起業に当たり、真っ先に仲間に誘ったのが河村さんだった。中高時代の株取引の仲間で、江澤さんがデータ分析の天才と太鼓判を押す人材だ。当時東大受験を控えた12月だったが、二つ返事で承諾。河村さんも「起業したい」という目標を持っていたのだ。
その後、現在取締役に名を連ねる西武史さんや鈴木啓文さんらも加わり、13年の年末には『正直なシラバス』の事業アイデアも固まった。そこから先は、つらくも楽しい、あっと言う間の半年間だったという。
留学のため1年遅れで大学を受験した江澤さんが早稲田大学を選んだことには理由がある。最年少で東証一部上場を果たした村上太一さんをはじめとする起業家養成の実績が豊富にあるのだ。また、起業家養成の講座も単位に認められ、あえて河村さんとは違う大学に通うことで、それぞれが異なる人的ネットワークを築くことができた。
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11月には、『collegino』という大学横断型のメディアサービスを開始予定だ。自分の通う大学以外の情報があまり入って来ないことに着目したという。サービス開始を前に「ワクワクしている」と口をそろえる江澤さんと河村さん。2人の夢はまだまだ続く。
(取材・文 編集部 渡邊勝太郎)
江澤 拓宣(えざわ ひろのぶ)さん
Woolop 代表取締役社長
早稲田大学政治経済学部1年。14年にWoolopを設立。
河村 進太郎(かわむら しんたろう)さん
Woolop 最高情報責任者
理科Ⅰ類2年。14年にWoolopを設立。
この記事は、2014年10月28日号に掲載された連載「飛び出せ!東大発ベンチャー」から転載したものです。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。