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2025年1月18日

東大新聞記者 vs. AI記者 より魅力的な記事を書けるのは?

 

 AIが急速に発展し、さまざまな分野において活用されるようになっている昨今。天気のニュースやスポーツニュースなどの報道の場でもAIの活用が進んでいる。そこで今回は東大新聞の記者とAIが同じテーマについて記事を書き、人間とAI、それぞれの得意不得意について探った。(執筆・山本桃歌)

 

人間とAI記者の記事を部員が比較 その結果は

 

 人とAIの強み、弱みを探るため、まずはChatGPTが生成したスポーツニュースと東大新聞の記者が書いたスポーツニュースを編集部員に読み比べてもらい、アンケートを取った。今回は2024年9月21日に行われたアメリカンフットボール部の試合を取り上げた。ChatGPTには東京大学アメリカンフットボール部WARRIORSの公式ウェブサイトに掲載されている戦績から試合経過のテキストをスポーツニュースにするよう入力した。部員には①見出し②分かりやすさ③正確さ④面白さの四つの観点についてどちらが良いか判断し、理由を記入してもらった。その上で、人とAIそれぞれの強み、弱みは何か、東大新聞でAIを活用するとしたらどのように活用したいか、について考えを書いてもらった。

 

 まずは①の見出し。こちらは回答者全員一致で東大新聞の記者が作った見出しの方が魅力的だと答えた。その理由としては、AI の見出しは事実を述べただけの淡々としたものであるのに対し、記者が書いた見出しは感情が盛り込まれているなど、劇的に見せようとした見出しである、といったことが挙げられた。

 

 ②の分かりやすさと③の正確さでは意見が分かれたものの、どちらも東大新聞の記者を選んだ人の方が多かった。②で東大新聞の記者の方が分かりやすいと答えた理由としては、用語の説明が丁寧、表現が豊富である、記者の感情ののった文章である、各段落の構成が整っている、といったものが挙げられた。一方AIを選んだ理由としては、情報がコンパクトにまとまっている、最後にまとめがあるため読み返すことなく結果を把握できる、といったものが挙げられた。③の正確さで東大新聞の記者を選んだ理由として、実際の試合を見ることで適切な表現を選択できていることが挙げられた一方、AIが書いた記事は事実が明確に書かれていて分かりやすい、という意見もあった。

 

 最後に④の面白さ。こちらは全員一致で東大新聞の記者が書いた記事を選んだ。試合結果だけでなく細かいプレーの様子や感情が書かれていて、修飾語を用いることにより臨場感が表れていること、この試合が年に1回東京ドームで行われる大一番であることが書かれていることなどが理由に挙げられた。

 

 今回、AIには試合経過のテキストからスポーツニュースを作ってもらったものの、試合の日付や校正上の表記統一ルールの指示をしなかったため、それらに誤りが散見された。また、AIは第三者視点に立った記事を書いたため、東大に焦点を当てた東大新聞の記事とは異なり、読者層を意識していない記事となった。

 

人間とAI記者 それぞれの強みと弱みは

 

 記事の比較をもとに、人とAI記者の強みと弱みについて考えてみる。まずは人の強み。記事の比較から、人は実際に見たものを、感情を交えながら適切な表現を用いて伝えることができる、という点が挙げられそうだ。人は実際に試合を見る中で選手の感情を読み取り、それを記事に入れることができる。また、記者の感情を織り込むことで、読者が記者の観戦を追体験することができる。その結果、人が書いた記事は、臨場感を生み出すことができ、淡々と事実を並べただけのAIの記事よりも読者を引き込むことができるため、面白いと感じられたのだろう。一方AIは試合を見て感情を抱いたり、選手の感情を読み取ったりして記事に反映させることが難しいため、事実を並べた単調な記事になった。そのため、AIが書いた記事は読者を感情的に引き込む記事とはならなかったと考えられる。

 

 次にAIの強みを考えてみる。AIが生成した記事は無感情な印象を受けたが、事実を簡潔に述べていた。短時間で試合経過と結果の要約を知りたい場合にはもってこいの記事を書くことができるのだ。そしてなんといっても記事執筆の速さが強みであるといえるだろう。AIに記事の作成を頼むと瞬時に記事を出してくれる。対して人は推敲を含め、記事を書くのに時間がかかる。AIは記事を速く書くことができるため、人が一つの記事を執筆している間に複数の記事を出すことができるのだ。また、データに基づいて執筆する記事の場合、AIは人よりもデータ処理のミスが少ないのではないか、という意見も挙がった。人がデータを処理するにはAIよりも時間がかかるうえ、やはりどうしても処理に誤りが起こることも。AIは、校正作業などで適切な指示を出せば人よりも間違いが少なくなる可能性がある。

 

 二つの記事の比較から、人とAIの強みと弱みの中には相補的な関係があるものも存在し、AIは使い方次第で人の弱みを補えるかもしれないことが見えてきた。

 

東大新聞でAIを導入するなら? 人間が記事を書く意味とは?

 

 ここまで見てきた人とAIそれぞれの強みと弱みをもとに、東大新聞でAIを導入するとしたら、どのように活用できるだろうか?まずは最新ニュースや学術ニュースなど、速報性と簡潔さ、正確性が求められ、基本的には事実のみを述べればよい記事の執筆だ。AIを使い記事の大枠を確認することで、速く記事を書けるようになるだろう。そのほかにも、記事の企画立案の時にAIに相談する、作成した紙面レイアウトへのアドバイス、見出しの提案、表記のチェックの補助といった意見が挙がった。

 

 ここで注目すべき点は、どの部員も事実を述べるだけの記事以外を執筆する時は、AIを補助的にしか活用したくないと考えている点だ。事実を述べるだけの記事を書けばよいのなら、速さ、正確性でAIに劣る人間が記事を書く意味はない。このアンケートから分かることは、部員は事実を述べた記事以外、つまり人の感情や考えが入った記事を発信したいと考えているということである。人の感情や考えを入れる意味とは何だろうか。例えば今回取り上げたようなスポーツニュースでは、結果と途中経過の要約を知りたいだけならばAIの記事で十分だ。しかし、ここに人の感情を入れることによって、単なる試合結果ではなく、選手が試合をしている景色や臨場感を浮かび上がらせることができ、そのスポーツが好きな人だけでなく、よく知らない人にも魅力を伝えることができる。記事に人の感情が入っているからこそ、読者の感情を動かすことができるのだ。これは他の記事にも当てはまる。記者が「これを伝えたい」という思いを持って書いた記事は、事実のみを淡々と述べただけの記事とは異なる需要そしてそれはおそらく消えることのない需要に対応することができるのだろう。

 

 AIは適切かつ十分な指示を出すことができれば、人の執筆作業を効率化させたり、ミスを減らしたりすることができる。それだけではなく、記事の企画段階で人が見落としていた視点を与えてくれたり、人が組むよりも読みやすく分かりやすいレイアウトを提案してくれたりすることで、記事をより良いものにしてくれる可能性も秘めている。一方、AIが書いたものにはしばしば内容に誤りが含まれることもあるといわれている。事実だけを述べた記事であったとしても、人が事実確認をする必要性もまだまだありそうだ。人とAIの弱みを理解したうえで、それらを補い合えるように人とAIがそれぞれの強みを生かせば、どちらかだけでは作ることのできない記事を作ることができるかもしれない。

 

 AIが急速に進歩し、人との共存方法が探られている時代。そのような時代の中で、東大新聞は、どのようにAIを活用していくのか、そして人が記事を書く意味とは何なのか。それらを考えながら、人だからこそ書ける記事を執筆し、発信していくことが求められている。

 

比較した記事はこちら

 

【東大新聞記者が書いた記事】

https://www.todaishimbun.org/football_20241024/

 

【AIが書いた記事】

ChatGPT 4o mini(https://chatgpt.com/)で2024年12月15日に作成

 

早稲田が東大を下し、3-24で勝利

 東京大学アメリカンフットボール部は、12月15日(土)、早稲田大学との試合で惜しくも敗北を喫し、最終スコアは3-24となった。試合は激しい攻防が繰り広げられる中、早稲田の強力なオフェンスと粘り強いディフェンスが光った。

第1クオーター:両チーム守備が奮闘

 試合は東大の大島(開成)のキックオフから始まり、早々に東大のディフェンス陣が活躍を見せた。2年DBの稲垣(洛南)が会心のロスタックルで早稲田のオフェンスを止め、早稲田は4thダウンを迎える。しかし、その後は東大の攻撃も早稲田ディフェンスに阻まれ、両チームともに点を取ることなく1Qを終了。スコアは0-0で、次の展開を予感させる接戦となった。

第2クオーター:早稲田が先制

 第2Qに入ると、早稲田がついに試合の流れを掴んだ。早稲田のオフェンスは着実にゲインを重ね、東大のディフェンスが粘り強く抵抗を見せるも、最終的に早稲田はタッチダウン(TD)を決めて先制(東大0-7早稲田)。その後、東大は自陣33ydからオフェンスをスタート。3年QBの林(開成)が巧みなランプレーで敵陣まで攻め込むが、最後は4thダウンに追い込まれ、フィールドゴール(FG)を選択。2年DBの原(甲陽学院)が48ydのFGトライを成功させ、前半終了間際に東大が3点を返した(東大3-7早稲田)。

第3クオーター:早稲田が追加点

 後半に入ると、東大はオフェンスで良いテンポを見せるも、痛恨のファンブルによって得点に繋がらず。続くディフェンスも粘りを見せるが、早稲田の素早いパスプレーに翻弄され、連続して1stダウンを許す。最終的に早稲田はゴールラインに迫り、タッチダウンを追加(東大3-14早稲田)。その後、東大はオフェンスで1stダウンを更新できず、早稲田のオフェンスに再び圧倒され、追加のタッチダウンを許し、スコアは東大3-21早稲田となった。

第4クオーター:東大反撃するも届かず

 

 試合も最終クオーターに突入。東大はQBを4年の風間(開成)に交代し、攻撃に活気を取り戻す。林(開成)のランや風間(開成)のパスを駆使して着実に前進し、4thダウンでギャンブルを成功させる場面も。しかし、最後の4thダウンで早稲田のディフェンスにボールを奪われ、ターンオーバー。早稲田はその後も2RB隊形のランで時間を使いつつゲインを重ね、FGを決めて残り時間をほぼ使い切った。東大に攻撃権が回るも、時間切れで試合終了となった。

結果と今後の展望

 最終的に早稲田は24-3で東大を下し、勝利を収めた。東大は粘り強いディフェンスと攻撃を見せたが、早稲田の攻撃力とキープ力に圧倒された。特に早稲田のパスとランが効果的で、東大はそれに対応しきれなかった。東大の今後の課題は、早稲田のような強力なオフェンスに対する守備力の向上と、攻撃のクオリティアップにある。

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