就活では多くの業界・企業を見た上で進路を選択することが重要だ。しかし多種多様な仕事について、社会人の話を直接聞ける機会は多くない。そこで今回は幅広い業界から五つの企業を訪問。東大出身者に仕事の内容ややりがい、就活時の経験などについて聞いた。インターネット上の情報だけでは知ることができない、業界や企業の魅力や実態を知って進路選択の参考にしてほしい。(構成・石橋咲、取材・佐藤健)
Profile
- 新卒入社
- 4年目
- 学部卒
- 文系
ジャンルを問わず編集スキルを磨く
入社時より純文学の単行本編集を担当。昨年7月から『文學界』編集部に異動し、小説、評論、エッセイや、インタビュー・対談などの記事を担当している。作家の原稿が届くタイミングや、特集を担当する号などにより受け持つ仕事量は流動的。単行本の編集では入稿から宣伝まで、一人の作家と長く仕事をすることが多かったが、雑誌に異動したことで、新しい書き手とのやり取りが増えた。裏方として作家と構想段階から伴走してきたものが形となり、世に出るまでを見届けられることがやりがいだ。
日や社員によって働き方はさまざまだ。原稿の確認が中心になることもあれば作家との打ち合わせや対談の準備などが中心となることもある。出社時間や休憩の時間、勤務場所も自由だ。
文藝春秋は『週刊文春』や『文藝春秋』、スポーツ雑誌や女性誌、ノンフィクションの書籍など、文芸以外にもさまざまなジャンルの出版物を扱い、多様な視点を持った社員がいる。立場を問わず社員を「さん付け」で呼ぶ文化があり、年次問わず意見を言い合える環境にもつながっている。
部署異動が多く入社時にも3、4年に一度は異動があると言われた。今後はジャンルを問わず編集者としてのスキルを身に付けたいと考えている。
就活を始めたのは3年次の11月ごろ。新聞や広告、IT、コンサルなども併願しつつ出版業界対策に力を入れた。「倍率は高いですが、多くの出版社が採用を受け付けてくれる機会は新卒しかないと思って。後悔しないためにも挑戦しました」
開始が遅れた分、多くの企業の説明会や選考に並行して参加した。「エントリーシートは、必ずしも志望企業の社員でなくても誰かに読んでもらうと良いと思います。インターンや卒業生訪問は効果的ですが、説明会に参加するだけでも意味があったと思います。一度自分の眼で確かめることで会社の雰囲気がつかみやすくなります」
長期戦の就活では面接の反省を次に生かすことが大切だ。経験を積み、納得のいく受け答えができた文藝春秋に内定した。「漫画編集者を志望していると話して、読んでいないですよね? と指摘されたことも。企業に合わせるだけではだめですね」
出版社を志望する学生には自分が好きな本がどの出版社から出ているかを調べたり興味がないジャンルの書籍でも面白いと感じたポイントを答えられるようにしたりすることが大事だとアドバイスを送る。
大学では留学や教員免許の取得などにも取り組んだ。レポートや卒業論文のための文献収集は現在の資料集めと似たところがあり、留学経験のおかげで海外のアーティストに装丁イラストを依頼した際もやり取りにハードルを感じなかった。「大学での学びや人間関係が直接的にも間接的にも今に生きています。一生懸命学び遊ぶことを大切にしてください」