就活では多くの企業を見た上で進路を選択することが重要だ。しかし多種多様な業界の仕事について話を聞く機会はそう多くない。そこで今回は幅広い業界から五つの企業を訪問。東大出身者に現在の職務と就活・転職時の経験について聞いた。会社や職業の実態だけでなく、キャリアプランを考える上で参考になる情報をお届けする。今回はテック系ベンチャー企業のティアフォーに勤めている田中敬さんに話を聞いた。(構成、取材・安部道裕)
Profile
☑︎新卒入社 ☑︎院卒
☑︎入社3年目 ☑︎理系
サークルで培った「想定外」を「想定内」にする力
2020年入社の田中さん。自動運転の「目」に当たる認識の分野で、自社システムへの最新技術の導入や、ソフトウェアの開発・実装を手掛けている。ティアフォーでは自社で開発を主導しているソフトウェア搭載の車を実際に動かすところまで行う。「試行錯誤して作り上げたシステムがうまく作動した時にやりがいを感じますね」
開発しているのはオープンソースソフトウェアで、世界中の技術者が共同で開発し、その成果をソフトウェアに追加していく。数百人に上る開発者それぞれの考えをまとめながら、一つのものを作ることができるのは貴重な経験だと語る。成果は全て公開されるため、周りに対して「自分はこういうものを作っている」とアピールしやすく人を巻き込みやすい。
ベンチャー企業であるが故に、会社が日々成長し規模が大きくなっていることを肌で感じているという。社員数は入社時の数倍に。「大所帯だと全体の意思決定などに苦労します。その辺りは入社前にあまり想像できなかった部分ですね」
プログラミングの他、最新の論文を読むことも仕事なのだという。オフィスの雰囲気は理工系の情報学の研究室に近い。
就活では「手を動かして何かを作るのが好きなので、実際の業務でプログラムのコードを書くことができる仕事かという基準で企業を選びました」。ベンチャー企業を選んだ理由は「自由さ」と「スピード感」。大企業とベンチャー企業の両方でアルバイトをした経験から、ベンチャー企業の方が合っていると感じた。
学生時代はロボットを作るサークル活動をしており、そこでの経験は今に生きているという。「行ったことのない場所でロボットを動かす時にあらかじめ『こういうケースがあり得るだろう』と想像し、準備しておくことは経験のある人にしかできません。事故は大概『想定外』という言葉で片付けられてしまいますが、そこを考えられると『想定内』として対応できるわけです」
将来については、具体的なことはまだ考えていない。東大生に向けて「すぐに役立つ知識を身に付けるより自分の興味があることを優先してほしい」と田中さん。「意外なところで役に立ったりしますよ」
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