就活では多くの業界・企業を見た上で進路を選択することが重要だ。しかし多種多様な仕事について、社会人の話を直接聞ける機会は多くない。そこで今回は幅広い業界から五つの企業を訪問。東大出身者に仕事の内容ややりがい、就活時の経験などについて聞いた。インターネット上の情報だけでは知ることができない、業界や企業の魅力や実態を知って進路選択の参考にしてほしい。(構成、取材・石橋咲)
Profile
- 中途採用
- 12年目
- 学部卒
- 理系
主体的な学びのために試行錯誤
卒業後すぐ、地元の群馬県の中学校の理科の教員になった。生徒の主体的な学びを思い描いており、それを先駆けて実践していた東京大学教育学部附属中等教育学校に魅力を感じて就職を希望し、採用された。公立の学校では、教員は数年ごとに学校間を異動するが、附属中等教育学校では一度雇用されたら定年まで在籍するのが基本だ。先進的な教育法の実践が行われており、東大教育学部の教員が相談に乗ってくれたり、助言をくれたりするという。
教員間の打ち合わせや朝の会から一日が始まり、午前8時50分から50分単位で授業を行う。学校の特徴として中高の区別はしないが、一般的にいう中学生から高校生までの理科を担当している。授業がない時は実験の片付けなどをし、昼休みや放課後には受け持つ委員会や部活のマネジメントを行ったり、会議に出たりする。
生徒の主体的な学びのために、自分が説明しないということを大切にしている。「生徒は教えればすぐに答えを出せると思いますが、自分の力で答えまで行きつけるのを待つようにしています」。生徒の成長や、開花していなかった可能性が開いた瞬間を目の当たりにできるのがやりがいだ。
学校や勉強が好きで、教職に就くことは小学生の頃からの夢だった。東大に入学してからもそれは変わらず、教職科目の単位は1年次からコツコツ取り続けた。「卒業に必要な単位数よりも教職科目の単位数を意識していましたね」。研究より教員になるための勉強ばかりしていたため「もっと専門的な勉強をしておけば良かった」と言うが、一方でサークルのイベント運営を行った経験は、現在の学校行事の運営や学校と地域の連携を考えることに役立っている。
今後は生徒が自分に合ったタイミングで学習できる環境を作りたいと語る。学年や優劣などの感覚にとらわれず、それぞれの得意・不得意や意欲に応じて学習内容や勉強量を調整できるように、ソフト面もハード面も整えていきたいという。
就職を控えた学生には、新卒で就職したところが自分の望んでいた職種や業界でなくても、そこで経験を積んでほしいとアドバイスする。「必ず自分の力を発揮できるところがあると思うので、それまで頑張ってレベルアップしていってください」