就活では多くの業界・企業を見た上で進路を選択することが重要だ。しかし多種多様な仕事について、社会人の話を直接聞ける機会は多くない。そこで今回は幅広い業界から四つの企業を訪問。東大出身者に仕事の内容ややりがい、就活時の経験などについて聞いた。インターネット上の情報だけでは知ることができない、業界や企業の魅力や実態を知って進路選択の参考にしてほしい。(取材・内田翔也)
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学生の進路選択に寄り添うプロダクトを
リクルートのまなび進学情報プロダクトマネジメントユニットに所属する河野さん。「スタディサプリ進路」という、主に高校生の進路選択をサポートするために、大学や専門学校、学問・分野情報のリクルートが運営する進路情報サイトの企画業務を担っている。業務内容は幅広く、UI/UX(UI は「操作画面や見た目など“使いやすさ”の設計」、UX は「UI によって得られる、全体的な使ったときの満足感や体験の良さ」)の改修から大きいものでは新機能追加の企画まで行う。ときに事業戦略、エンジニアやデザイナーなどとのコミュニケーションも取りながら、ウェブ企画にまつわる多種多様な仕事をこなしている。ウェブ企画を俯瞰(ふかん)するような立ち位置であるゆえに、さまざまな職種の人と協働し、それぞれの意見をもとにプロダクトを改善できたときにやりがいがあるのだという。
「新規機能開発の際には、ユーザーがどういうものを求めているのか、何を不として感じているのかを大事にしています」。その言葉通り、多いときは週に3回ほどのユーザーインタビューを実施したり、定量的なデータの収集にも努めたり、ユーザーの抱く不満や悩みを第一に、大がかりな企画にも取り組んでいる。
「リクルートの社員はみんなガツガツしていて主張が強いというイメージがあったけど、穏やかで、業務外のことでも話しやすいような人が多い」と河野さんが言うように、社員の中には多様性を尊重し協働していくという姿勢の人が多いようだ。さまざまなプロダクトを持つリクルートにおいて、部内だけでなく部署を超えて知見やナレッジの共有も盛んにおこなわれており、非常に風通しの良い環境が構築されている。また、会社は個々人に求めるものとして「自律・チーム・進化」を掲げ、会社としては個人の能力を遺憾なく発揮するための機会・環境を提供。一人ひとりが自らのライフスタイルに合わせ、時間や場所を選んで働けるよう、柔軟な働き方を実現している。河野さん自身も、チームの週例会議で週1回出社する他、自分のコンディションに合わせて自由に出社を調整できる部分にも大きな魅力を感じているという。「自律的に働く環境は、IT スキルの効率的な習得や、プロダクトの企画力向上につながっています。また、個人の意志を尊重しながらもチームワークを大切にする文化は、自分がやりたいと思うことを構造的に整理する力や、合意形成をするためのプレゼン力も培うことができています」
学生時代から、女子中高生の進路支援活動を積極的に行い、誰かの人生の選択をサポートできるような仕事をしたいと考えていた。
「就活の軸も、何がやりたい、どんな業界に入りたいというよりは、自分の持ってきた問題意識に照らして、女性の進路・キャリア支援など、自分が共鳴できるような活動を行っているか、企業の掲げているビジョンが自分に合っているかを大事にしました」
そういった考えの中で、リクナビやスタディサプリに代表されるように、個人の自由な選択を後押しするような仕組みづくりをしているリクルートは最初に浮かんだ選択肢だった。
自身の就活の経験も踏まえ、最後にこんなメッセージをもらった。「会社が選ぶ側、学生は選ばれる側と力の差を感じてしまう場面もあると思います。でも、新卒での就職は今後何十年続くキャリアの入り口として、自分の好奇心を大切に、うまくリフレッシュも取り入れながら、気楽にやっていけばいいと思います。後悔のないようにじっくり考えるのも大事ですけど、将来を想像しながら、たくさんの会社が大切にしていることを知る機会を楽しんでほしいです」