就活では多くの業界・企業を見た上で進路を選択することが重要だ。しかし多種多様な仕事について、社会人の話を直接聞ける機会は多くない。そこで今回は幅広い業界から五つの企業を訪問。東大出身者に仕事の内容ややりがい、就活時の経験などについて聞いた。インターネット上の情報だけでは知ることができない、業界や企業の魅力や実態を知って進路選択の参考にしてほしい。(構成、取材・石橋咲)
Profile
- 新卒入社
- 5年目
- 学部卒
- 文系
確かな技術と新たな事業の両立が魅力
最も規模の大きいゼネコン(総合建設業)の一つ、鹿島建設。事務系採用の場合、入社して最初の4年間は全国各地の支店に配属され、建設現場の労務や会計業務を担当する。そこで鹿島建設の主な事業である建設業の最前線を経験。5年目の異動のタイミングで、次は別の観点から会社を見たいと希望を出して不動産事業を扱う本社部署の開発事業本部に異動した。現在はその中の経理部に所属。日々の支払いや入金の管理から各プロジェクトの損益、本部の資金計画の取りまとめまで行っている。
建物や道路をはじめ、生活の基盤になる部分で0からのものづくりができるところ、その技術力や経験が蓄積されているところが鹿島建設の魅力だという。入社前は建設業界ということもあり伝統を重んじ、古い日本企業的な雰囲気が残っているというイメージを持っていたが、実際には本社部署のほとんどで固定席がないフリーアドレス型のオフィスが導入されるなど社員同士でコミュニケーションを取りながら仕事を進めていくオープンな雰囲気だった。会社の事業も施主や設計会社、工事会社などを含めた社内外のさまざまな立場の人が関わることが多い。それぞれの利害関係や思いをくみ取り、最適な案を探って確実に仕事を前に進めていくためのコミュニケーション能力が身に付いたという。
もともとは国家公務員志望。3年次に企画立案能力を重視する教養区分の試験に合格した。しかし「せっかくだから」と民間企業の説明会に参加したり社員と話したりするうちに、従来の事業では品質・技術のさらなる向上を図りながら、新しい事業にも積極的に取り組み、価値を生み出していく民間企業に魅力を感じた。就活とは、今までとこれからの人生を真剣に考えるチャンス。自分の気持ちに素直に従うことと、社会人の話を聞くことを意識したという。「幅広い業界や会社の人から本音ベースの話を聞ける機会は社会人になるとなかなかないですし、社会人1年目でも視野の広さが変わってくると思います」
鹿島建設は専門的な技術職の社員が多く文系学部出身の社員は少ない。しかし建設や不動産について学べる機会も豊富で、文系出身者が扱う業務も幅広く、十分活躍できる職場だ。宇佐美さんはこれからもさまざまな知識やノウハウを吸収し、会社全体を俯瞰(ふかん)して経営戦略に落とし込めるような役割を果たしたいと語る。