就活では多くの業界・企業を見た上で進路を選択することが重要だ。しかし多種多様な仕事について、社会人の話を直接聞ける機会は多くない。そこで今回は幅広い業界から五つの企業を訪問。東大出身者に仕事の内容ややりがい、就活時の経験などについて聞いた。インターネット上の情報だけでは知ることができない、業界や企業の魅力や実態を知って進路選択の参考にしてほしい。(構成、取材・石橋咲)
Profile
- 新卒入社
- 5年目
- 院卒
- 理系
サービスとしての研究 質を高めるためデータ活用
工学系研究科化学生命工学専攻を修士で卒業。在学時は人工的に合成したDNAをがん診断へ活用する技術に関する研究を行っていた。味の素社へ入社後、現在はバイオ・ファイン研究所の評価・分析室データサイエンスグループに所属。研究所で日々実験をして得られたデータをAIなどを使って解析・活用し、サービスや製品の開発などの基盤となる研究の加速を目指している。
個人で進める解析業務が中心のためリモートワークが多く、勤務時間はフレックスタイム制。出社するのは1〜2週間に1回程度で、会議に参加したり、実験が行われている研究現場で話を聞いたりする。上下関係が厳しい雰囲気はなく、上司に分からないことを質問したり、意見交換したりしやすいという。
データサイエンスは研究領域として新しく、データサイエンスの計画や手法のスタンダードが確立されていない。どのようにデータを研究現場に活用できる形にするか一から考えるのは、「難しいところでもありますが、自由度が高い分、やりがいを感じられます」。学生時代はデータ処理を専門としておらず、入社してからスキルを身に付けた。学んだ新しいスキルを仕事に直接生かせる環境が整っているのも味の素社の魅力だ。
企業研究に携わるようになり、研究のサービスとしての質を高く保つことを強く意識するようになった。学生時代はデータ取得に失敗しても実験をやり直せばいいと考えやすい環境だったが、現在の研究は被験者の協力の上で成り立っており、やり直しは容易ではない。確実に必要なデータを取るために、計画を緻密に立てる必要があるという。
修士1年の夏から他社のワンデイのインターンに参加し、冬ごろから本格的に就活を始めた。博士課程への進学も考えたが「別の研究テーマや企業での研究も見てみたいと思い、就職するという選択をしました」。味の素社では、がん診断に関わるサービスの開発を行っている。学生時代に取り組んだ研究テーマとの関連から興味を持ち、入社を決めた。
就職面接では正直に話すことを大切にした。「自分の思いとは違うことを話しても面接官は気付いてしまいますし、採用されたとしても、自分の思いとはうまくマッチングしておらず良くないです」。就活生には、ベストな選択をするために自分が何をしたいのか正直にさらけ出してほしいという。