GRADUATE

2023年2月21日

【卒業生訪問2023】東大卒業生に聞く、職場事情と就活のポイント ②物質・材料研究機構

 

 就活では多くの企業を見た上で進路を選択することが重要だ。しかし多種多様な業界の仕事について話を聞く機会はそう多くない。そこで今回は幅広い業界から五つの企業を訪問。東大出身者に現在の職務と就活・転職時の経験について聞いた。会社や職業の実態だけでなく、キャリアプランを考える上で参考になる情報をお届けする。今回は物質・材料研究機構に勤めている桂ゆかりさんに話を聞いた。(構成・安部道裕、取材・上田朔)

 

Profile

 

桂ゆかり(かつら・ゆかり)さん(物質・材料研究機構) 09 年東大大学院工学系研究科博士課程修了

 

☑︎中途採用  ☑︎院卒

☑︎入社3年目 ☑︎理系

 

大学での人脈がキャリアにつながる

 

 理化学研究所(理研)と東大で研究員・助教のポストを渡り歩き、2020年度からNIMSにて任期なしで雇用される主任研究員となった桂さん。これまで超伝導材料や熱電材料(熱と電気を互いに変換できる材料)の開発に取り組んできたが、現在ではさらにデータ科学を応用することで新たな機能材料を探索する「マテリアルズ・インフォマティクス」の研究を行っている。

 

 NIMSでは組織の掲げるミッションを達成するための「組織ミッション型研究」と、個々の研究者が外部資金などを獲得することで自由な内容で研究をできる「自由裁量型研究」の労力の比が研究者全体で1:1になれば良いとされており「とても仕事がしやすい」と話す。桂さんはいずれの研究でも、さまざまな材料の実験データを論文から集めたデータベース「Starrydata」の開発を軸にしている。このデータから未知の物質の性質を予測することで、有望な新材料の候補を提案して、実験系の共同研究者らがそれらの合成と評価に取り組んでいる。

 

 桂さんが代表を務めるStarrydataプロジェクトでは、研究費で雇用したWebエンジニアや派遣職員、共同研究者、企業などが協力してデータ収集やアプリ開発を行っている。やりがいを感じるのは「チームメンバーが充実した表情で楽しそうに仕事をできているのを確認できたとき」。ただし「自分の関わっているプロジェクトが増えすぎて、全ての仕事に全力で取り組むための頭の切り替えが大変です」

 

 桂さんは大学院を修了した後、理研でポスドク研究員になった。ポストを紹介したのは学部時代を過ごした応用化学科の教員。桂さんが学部生のころ、授業を最前列で受け、気合の入った学生実験レポートを提出していたことを何年経っても覚えていたのだという。「気合が入ったのはその回だけだったのですが、答えが用意されていない問題の方が考察に燃えてしまいまして(笑)」

 

 理研在籍中に結婚し、子どもが生まれた。「男女ともに子育てへの理解の深い研究室でした」。産後2カ月から保育園の助けを借りて仕事を続けたことで育児中も孤独を感じずに済み、任期終了後は東大の二つの研究室でポスドク研究員になった。15年からは別の東大の研究室から声をかけられ、助教に着任。これは研究室が東大から獲得してくれた女性限定ポストだった。

 

 研究者キャリアにおいてチャンスに巡り合うには「研究職の公募を出す人に、イメージしてもらえる人物になること」が重要だと話す。「学会発表でも、参加者の印象に残るクオリティの高い発表をできるように準備しておくと良いです」

 

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