就活では多くの企業を見た上で進路を選択することが重要だ。しかし多種多様な業界の仕事について話を聞く機会はそう多くない。そこで今回は幅広い業界から五つの企業を訪問。東大出身者に現在の職務と就活・転職時の経験について聞いた。会社や職業の実態だけでなく、キャリアプランを考える上で参考になる情報をお届けする。今回はJICAに勤めている石丸大輝さんに話を聞いた。(構成・安部道裕、取材・松崎文香)
Profile
☑︎新卒入社 ☑︎学部卒(+海外での研究留学)
☑︎入社8年目 ☑︎文系
国創りのプロデューサー
都市開発、インフラ整備、保健医療、教育……。ODAの一部を担い、途上国に対して幅広い開発協力を行うJICA。「国創りのプロデューサー役」だ。現地の政府や住民、日本の企業や行政官などさまざまな人が開発に関わる。そのまとめ役を、早ければ1年目から任されるという。大使館や国際機関と連携する政策の川上から、草の根のボランティアにまで関われる業務の幅広さも魅力だ。
石丸さんは入構後、途上国の行政官に日本の技術・経験を伝える研修の運営や、アフリカの水資源開発を担当。その後ベトナムの在外拠点を希望し、現地で3年間人材分野に携わった。例えばベトナムから日本に来る技能実習生は、悪徳な送出機関により不良な労働現場に派遣されたり、仲介者に払う料金が高額であったりと問題を抱えていた。そこで石丸さんは、日本の求人情報に直接アクセスできるプラットフォームを構築する事業を両国政府と企画。また送出機関を評価する口コミ機能をつけ、実習生が仲介者を介さず優良な機関につながることを目指す。「外国人労働者がますます必要とされ、他国との競争も予想される中、日本が選ばれる国にすることは外交・成長戦略上重要です。日本の将来を左右する業務に携われることにやりがいを感じました」
現在は帰国し東・中央アジアを担当。「案件形成が主となる部署なので、国や制度への深い理解が必要です。積極的に担当国の政治経済に関する勉強会に参加しています」
学部時代は国際NPO「AIESEC」で海外からのインターン受入に熱中する傍ら、漠然と裁判官を目指していた石丸さん。大3で進路に迷いが生じ、手当たり次第にインターンも試す中、ある社長に「想定外の問題解決経験を積んでいるかが社会人としての価値を決める」と言われたことが転機となった。「東大から法曹」の王道を歩む自分をつまらなく感じ、担当教授の支えもあり、ゼミで研究していた中国に留学した。
留学先でも研究とインターンに励む中で、興味の核は国際性だと改めて気が付いた。世界を舞台に専門性を生かした仕事がしたいと商社やコンサルタントも考えた。最終的には、ビジネスだけでなく制度改善にも携われる点、外国の政府を相手にできる点に引かれ、JICAを選んだ。
「ジェネラリストかつ深い専門性を備えた『T型人材』が叫ばれていますが、これからは専門の軸を二つ以上持った『Π型人材』が求められると思います。JICAでは、国内外で様々な課題を扱う中で、専門性を深めることも、新たな専門性を身に付けることもできて、おすすめですよ」
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