東大が機能強化を進める学習支援システムUTokyo ONE(UTONE、ユートーン)が、2025年度末に全学展開される見通しとなった。機能を絞って全学運用を開始し、徐々に拡充する方向性が1月27日付の東大の広報誌『学内広報』で示された。まずは学生個人の関心に応じた情報を表示する掲示板機能と、自身の目標の達成度を確認する学修ポートフォリオの実装を目指すという。東大大学総合教育研究センターによると、全ての機能がリリースされるのは3〜4年後の予定。
東大はUTONEの導入で、学生に個人に合った情報提供をしたり、学生が課外活動を含めた在学中の学修を一覧できるようにしたりすることを目指している。現在はPEAK(教養学部英語コース)で試験的に運用されている段階。東大は24年夏にワークショップを開き、学生や教職員からUTONEの機能拡充に関する意見を聞いていた。
27日付の『学内広報』や、先立って大学総合教育研究センターが学内向けに公開した「UTONE構想ガイドブック」では、ワークショップを踏まえた方向性が明らかになった。全学展開は当初26年度中の予定だったというが、25年度末に早めることにしたという。UTONEの導入を目指す方針は「UTokyo Compass(2.0)」(藤井輝夫総長が就任した21年度に示された東大の基本方針)でも掲げられており、24年度中を目処に教養学部で展開を目指す方針も示されていた。教養学部での導入は現時点で実現には至っておらず、後ろ倒しとなることが実質的に確定した。
機能面では、研究室検索の機能や全学の授業を対象に検索できるシラバス検索機能など、より具体的な検討案が提示された。「UTONE構想ガイドブック」では、「『知』『人』『場』を提供するキャンパスライフの案内人」というスローガンに沿った諸機能の案(表)のほか、各学年の学生のニーズに合わせた活用案も提示されている。既存の東大のシステム(学務システムUTAS、学習管理システムUTOLなど)との連携を試みる方向性も示された。
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UTONEにより大学が期待する効果として学生の満足度向上と経営力の確立という二つの柱があることも明らかになってきた。開発チームの松田恭幸教授(東大大学院総合文化研究科)は「学生時代の満足度が高ければ、卒業後に寄付をしてくれるかもしれないし、就職した企業で東大と共同研究を始めてくれるかもしれません」と『学内広報』で語っている。
卒業後も利用可能なプラットフォームとすることで、卒業後に履修した授業に関連する社会講座の案内をするという案を松田教授は提示。加えて、入学前の高校生も利用できるようにする可能性も示唆した。
東大では25年度学部入学者などから授業料が値上げされる。UTONEの機能強化は授業料値上げに伴う大学側の増収分の用途の一つとしても言及されている。
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