教養学部学生自治会は6月25日~7月6日、UTokyo WiFiの利用状況に関する東大生を対象としたアンケートと通信速度の測定を行った。これらは2月の学部交渉で教務課が自治会に要請した、UTokyo WiFiを整備する場所の優先順位決定のためのものだった。東京大学新聞社は、学生自治会と駒場のUTokyo WiFiの設置・維持を担当する情報ネットワーク室に取材。学生と大学の事情や、WiFiに対する認識の違いが浮き彫りとなった。(取材・中井健太)
学生自治会のアンケートでは、最もUTokyo WiFiへの不満が多い建物を調べる項目で、有効回答約1200の44%が「7号館に最も不満がある」と答えた。7号館は、詳細な時期は未定であるものの、取り壊しが予定されている。そのため、駒場祭用に特別に整備された1階の一部を除いてUTokyo WiFiが整備されていない。学部側は7号館にはインターネットが必要とされない授業を配置するよう対策を行っているが、必要なファイルがダウンロードできない、用語の意味を調べられない、など学生の不満も多い。
今回の調査で、講義棟でUTokyo WiFiを利用している学生の約9割が授業に関連した情報の検索、授業に使用する資料のダウンロードにUTokyo WiFiを使っているということが分かった。さらに、回答者の半分が授業中の調べものが授業の理解を深めるのにとても役立ったと答えた。
学生自治会理事の岡元雅人さん(文Ⅱ・2年)と依田浩実さん(文Ⅱ・2年)は今回の調査を「授業中のUTokyo WiFiの通信速度の調査など、大学側ができない、学生の実感に沿った調査ができた」と評価。今後はWiFiへの投資が、学生に大きな利益をもたらすことを示すために、WiFiが学習効果に与える影響について調査するという。さらに、講義棟以外での学習環境の改善を目指して、図書館や食堂でのUTokyo WiFiの整備も訴えていくとのことだ。
予算や人員難が障壁
情報ネットワーク室の山口泰教授と石原知洋助教(共に総合文化研究科)によると、情報ネットワーク室の歴史の浅さに起因する予算や人員の不足が、現在の駒場におけるWiFi環境整備の最大の障害だという。教室の壁や教室内の人がどのくらい電波を遮るかを事前に計算し切れないのも、効率的な整備を妨げている。特に1号館は壁が厚く、収容人数も多いため、多数の無線基地局を設置しても十分な通信環境を整備できないのが現状だ。
そもそもUTokyo WiFiは駒場キャンパス全域に整備されているわけではない。そのため教務課では事前に教室設備に関するアンケートを取り、WiFiを必要とする授業は重点的にUTokyo WiFiを整備した21KOMCEEで行うようにしている。しかし、担当教員がWiFiを必要と考えない授業については、学生がWiFiの利用を希望しても、WiFiが十分に整備されていない教室に割り当てられることもある。
UTokyo WiFiの本来の用途は、学生・教職員の授業準備や研究をサポートするものであるため、現在すべての教室でWiFiを快適に利用できる訳ではない。それに対して、構内全域での快適な通信環境が必要だと考える学生側との認識の齟齬(そご)が、学生の不満の原因の一つだ。今回の学生自治会の調査を機に、大学側と学生側相互の理解が深まり、双方の納得のいく形で整備が進むことを期待したい。
この記事は、2018年9月25日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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