東大女子のためのプログラミングコンテスト「東大ガールズハッカソン」が12月3、4日に日本ビジネスシステムズ(虎ノ門ヒルズ)で開催された。ハッカソンとはハック(hack)とマラソン(marathon)を組み合わせた用語で、決められた短期間でプログラムの開発やサービスの考案を行いチームごとにそのアイデアや成果を競うもの。当日の様子を写真と共に振り返る。
(取材・撮影 石井達也、石沢成美)
ハッカソンには東大の学部生から院生までの計29人(理系16人、文系13人)が参加した。初顔合わせとなった11月4日のアイデアソンで、各チームはアイデアを出し合い、ハッカソン本番までにさらなる磨きを加えた。本番前の数週間ではプログラミング講習会を実施。29人中12人はプログラミングの経験がゼロだったが、参加者はアプリ制作に必要となる基礎的な力を身に付けていった。
本番では、2日目の発表会の直前まで、各チームで机を囲んで一心にアプリ開発に取り組んだ。メンターと呼ばれる各チームをサポートする協賛企業の社員からの助言を基に、アプリ完成のために一つ一つ課題をこなしていく。意図した通りの動作が完成したときには、歓声や拍手が起こることも。発表用資料提出の制限時間が迫る中、多少の焦りを見せるチームもあった。それでもホワイトボードにやるべきことを書き出して冷静さを保ち、何とか完成させようと努める様子が印象的だった。
2日間の各チームでの作業を終えて迎えた発表会。東京タワーなど東京の夜景を一望できるオフィス内のカフェテリアで、参加者はそれぞれ工夫を凝らしたプレゼンテーションを行った。ジェスチャー、アニメーション、ドラマ仕立ての動画などでアプリの魅力をアピール。董思碧さん(経済学・修士2年)のチームは足に合う靴のようなぴったりの仕事が見つかる就活アプリ「shoebuddy」を開発した。アプリ内の記録から「時間に厳しい」「リーダーシップがある」といった行動が分析され、提携企業から仕事のオファーが来る仕組みを考案。「他チームと違い就活という独自性を出せたので、自信があります」と話していた。
各チームの発表の後、授与式で10社の協賛企業からさまざまな賞が贈られた。各企業が賞を与えた理由は「目標設定が明確」「会社勤めの身では思い付かない、フレッシュな立場ならではのアイデアが生かされていた」など。学生のアイデアに審査員だった協賛企業の社員も刺激を受けていた。
心拍数のデータを基に独自のときめき度を測るアプリ「ときめきハートレート」は、審査員を納得させたアプリの一つ。開発チームの谷口芽さん(文Ⅲ・2年)は「チームのメンバーがアイデアを次々と出してくれたので、助けられました」。チーム内の団結の強さがよく表れていた。
今回のハッカソン開催の目的は、東大で2割ほどにとどまる女子学生の交流の場を作り、彼女たちにエンジニアの仕事を知ってもらうこと。背景には女性エンジニア不足がある。参加企業の一人によると「エンジニア系の企業には、文系学部出身者が半分を占めるところもある」という。理系学生に専門性を高めてもらうだけでなく、文系学生には理系分野に興味を持ってもらう。双方にとってエンジニアの仕事が身近になり後輩にも伝わっていくという大きな流れの出発点は、東大ガールズハッカソンだったといえる日は近く訪れるかもしれない。
最優秀賞に輝いたのは
最優秀賞に輝いたのは、チーム「一日三膳」の「Global Walk」。利用者は地球1周分踏破を目標に、歩いた距離を記録していく。正確な記録とは別に、歩いた距離を10倍、100倍として一定時間計算できるチケットという機能から遊び心もうかがえた。チームの3人にハッカソンを振り返ってもらった。
アイデアソンからハッカソン本番までは、メンバーで何度か会ってアイデアについて話し合い、最終的にはチャットでアイデアを決めました。アプリ制作の際にJavaやxmlの言語の書き方が分からず、苦労しましたが、メンターに助けてもらいました。文系である私はこの機会がなければプログラムを書くことは一生なかったと思います。アプリ開発の世界を身近に感じることができ、とても楽しい2日間でした。
ブレインストーミングした案を採用し、企画を書いたりデザインを決めたりして残りはプログラミングをすればいい状態まで持っていき、他のメンバーに投げ掛けました。発表用のスライドショーを作っている時には、私たちのアプリがいかに課題解決的かを論理的に説明するのが難しかったです。全体としては、もう少しプログラミング講習をして、実装がうまくいくサポートがあれば良かったと思います。
本番に備え、少し習ったことのある言語仕様をできる限り復習しつつ、紹介されたウェブ上のテキストを活用してAndroidアプリ開発について予習しました。見栄えを良くするためにアニメーションの検討を重ねました。初めてのアプリ開発で、1日半でここまでの作品を作り上げられ、自信が付きました。断片的に学んでいたプログラミングに関する内容のつながりが少し見えてきて、理解と興味がより深まりました。
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