2次試験では英語は配点が高く合否を左右するが、リスニング試験に大きく影響を与える2次試験会場は受験生の努力ではどうにかできるものではない。前編では、受験会場や受験教室の違いでリスニング試験の聞こえやすさが左右されることを指す「教室ガチャ」にどう備えるべきか、座談会を通じて考える。(構成・渡邊詩恵奈)
後編では、英語の時間配分や解き方で工夫すべきことや本番で心がけるべきことについて話し合いました。
【後編はこちら】
参加者
佐々ひなた 文Ⅰ・1年(以下、笹)
高倉仁美 文Ⅲ・1年(以下、仁)
岡部義文 理Ⅰ・1年(以下、文)
新内智之 文Ⅰ・2年(以下、眞)
教室ごとに聞こえ方の差は存在する? 経験者は語る
──東大の2次試験当日のリスニング試験の環境(音質、教室、座席による違い)はどのようなものでしたか
【笹】当日は比較的大きめの教室が多く、天井が高い11号館で試験がありました。「東大のリスニングは聞きづらいよ」と結構脅されていたので、思っているより聞こえるなっていうのが当時の印象です。でもはっきり聞こえるわけじゃなくて、すごく頑張ったら聞こえるかなぐらいの音質でした。座席はその教室の真ん中の方で。スピーカーって1番前に付いてますよね。
【仁】教室によって違うんじゃないですかね。私は横に付いてたような気がする。
【笹】確か私は真ん前で流すタイプのやつだった。席もすごい聞き取りに有利だったわけではないけど、1番後ろの不利な位置でもないみたいな微妙な位置でした。
【仁】私は5号館でした。よくリスニングの音環境に当たり外れがあるよとは聞いていたんですけど、私は逆にそんなひどいことはないだろうと思って行ったら、想像よりひどかったパターンで。rとlの違いがわからないぐらいモゴモゴしてました。2次試験の英語に慣れてて、こういう発音だったらこの単語なんだろうなって推測して聞き取れる人が点数を取れたのかなと思います。私の場合は席が端だったんですけど、同じ受験の教室で全然違う席に座っていた子もその教室はひどかったって言ってたので、多分私の教室は相当スピーカーの音質がひどかったんじゃないかな‥。
【笹】5号館って結構新しいですよね?
【仁】そうだよね。私も最初そう思った。
【笹】11号館の方がまだ聞き取れた説、面白いです。
【文】私は理系なので、本郷で受験したんですけど、工学部の2号館の221教室でめちゃくちゃ音質が良かったんですよね。天井が高く、後ろの壁がガラス張りで新しい感じの教室でした。すごく聞きやすくて。そのおかげか分からないけど、点数も良くて。想像と違いました。座席は教室の右斜め後ろぐらい。スピーカーが両側の壁に付いていて、すごく遠くにある感じではなかったように記憶してます。同じクラスの人に聞くと地下の教室で受験した人は結構くぐもっていて聞こえにくかったと言っていたので、同じ建物でもまちまちだったみたいですけど。少なくとも私の所はすごく良かったので嬉しかったですね。
【眞】周りで地下の人がくぐもってたっていうのは他の人も言ってた?
【文】そんなに際立ってひどいっていうのは、その人以外聞かなかったですねー。そんなに言うほどひどくはなかったのかな。でも、地下でくぐもってたって言ってる人も点数は取れてたみたいだったので、あんまり悲観するほどのことでもないという気もしましたね。あと、法文系の大教室で受けてた人がリスニングは反響しなかったと言っていました。
【眞】なるほど。法文系って結構古い教室だよね。
【文】そうですね。多分1番大きいですけど、意外とこれが反響しないみたいで。
【眞】僕は11号館か13号館のどっちかだった気がする。現役の時は大教室で受けて、浪人の時はどっちも小さな教室で受けたけど、現役の時がめちゃくちゃ聞きづらかった印象が。音が上の方で反響してて全然耳に入ってこないというか。どうしよう、こんな聞こえづらいんだと思ったのは覚えてる。浪人の時も上で反響してる感じはあったけど、狭い分まだ聞きやすかったような気がするな。席は現役の時は大教室の真ん中の方で、1回目の浪人時が小さめの教室の後ろで、2回目が前だった。3回ともスピーカーは前の方にあったけど、小さな教室は前でも後ろでも全然変わらなかった。
──2次試験当日、リスニング試験受験時の環境やそれに伴う聞こえ方の違いが、模試などのリスニングとそもそも違っていましたか。違っていたと感じた場合、どういう差を感じましたか
【笹】予備校の模試を受ける時ってすごいはっきり聞こえるので、反響したり、モゴモゴした感じがあったりする本番とは違うなとは思った。本番は模試よりも人数が多い分、鉛筆の音も結構聞こえる印象はありました。ただ、自分で直前期はわざとくぐもらせて勉強して当日までに耳を慣らしていました。
【仁】モゴモゴしてて、模試より全然聞き取りづらかったのが1番大きいんですけど、それ以外はびっくりするぐらい変わらなかった。自分としては模試とは発音の仕方とか、声の男女比っていうのも、もしかしたら当日の試験は違うのかなって思ってたんですけど、そういうところは模試と同じだなって。模試の本試験の再現度の高さに感心しました。
【文】模試と1箇所違ったのが日本語のリード文が読み上げられたんですよね。大問の最初にこの会話はなんとかについて、みたいに書いてある部分が。大問に入ってから英語が流れ始めるまで、時間があったので模試と比べて少し余裕があったっていう感じでした。
【眞】僕は普段CDプレイヤーとかウォークマンとかを横に置いてたから、スピーカーが上に設置されてたせいで普段は横にあるものが上から聞こえてきてすごい焦って。あと、普段から1.1倍か1.3倍速ぐらいで聞いて練習してたんだけど、速くしてもくぐもったとこには全く対応できないというか。何も聞こえないのには焦った。くぐもったところに対応したって【笹】さん言ってたけど、どう練習したの?
【笹】私はお風呂の中で聞くっていうのを。ちょっとモゴモゴ反響するじゃないですか。あとは注意を散漫にさせるために歩きながら聞いてました。
【眞】なるほど。僕は浪人した時はCDを離した所に置いて聞いたりしたかな。でも聞こえ方はあんまり変わらなかった気がする。
【文】音割れ対策だと教材とか模試によっては雑音入りのCDがあったりしますよね。私は使わなかったけど。雑音入りでリスニングやる模試があったって聞いたことがあります。市販のリスニングのちょっと難しめの東大向けの教材で雑音を入れましたみたいなのもありますよね。ノイズが入るというよりは、バックでちょっと車が通ってる音がするとか。東大志望の人はリスニング対策にそういうものも使っているのかもしれないですね。
【眞】確かに。結構みんな過去問からやって、模試を受けるところまでは行くかもしれないけど、問題集まで行く人って少ないかもね。過去問より先に問題集やるのも1つの手。先にじゃなくて並行してやるのでもいいけど。
──音源そのものが模試や過去問と違ってると感じた部分はありましたか
【笹】練習の問題の方があんまり聞かないようなアクセントを多く使ってる印象。実際の問題の方がよく聞く発音や音声が使われている感じがします。逆に模試の方が難しいかもしれないです。
【仁】私も同じで、模試って塾側があえてひねってくるじゃないですか。雑音入りもそうだし、たまにインド系の発音を混ぜるとかして。それに慣れてたので逆に受験時の試験は、割と拍子抜けするぐらい普通でした。
【文】私も日本語のリード文が読まれたことぐらい。問題文や選択肢が模試ほどは長くなくて、全体的に解きやすかったと思います。
【眞】僕も同じだけど、意外と遅いなと思った。焦って全然聞こえないってなった時に速くて追いつかないんじゃなくて、環境のせいでくぐもってて聞こえないだけだから、自分の耳が悪いんじゃないって安心したところはあったかもしれません。
【笹】多分模試って人をふるい分けたいじゃないですか。だから難しくするのかなって思ったんですけど、東大の本番の試験って、受からせるためのものでもあるので。だから、絶対的にできない人を落とすためにあえて標準にしてるのかもって。
【眞】東大のリスニング的に英語聞けますか、というよりも、内容を理解できますかってところが大きい気がするから。そこまで英語的に難しくしたり、変にひねったりするのは東大の本意じゃないのかもしれないね。
──受験前から本番聞き取りにくいと前情報を持った状態で受けたようですが、そういう情報を聞いて少し不安を感じている受験生に何か受験当日に関わる内容でアドバイスをお願いします
【笹】受験生にはすごい楽観的なタイプと、めっちゃ緊張しちゃうタイプがいると思います。楽観的に思っちゃう子には意外と酷くないって言っても、聞き取りづらいのは本当なのでちゃんと対策した方がいいよと言いたい。でも緊張しちゃう子に対してはあんまり気負いすぎず、リスニングができないとしても全体の英語の点数が取れるなら、思い詰めなくていいんじゃないかな。
【仁】私も同じ感じです。楽観的な子に対しては、シンプルに耳を英語に慣らせるとかの最低限の対策はした方がいい。モゴモゴした環境で聞いてみる対策をして損することも全くないから、余裕があるんだったら最低限は対策した方がいいとは思います。緊張してる人に対しては、想像よりは大したことないっていうのが最大のアドバイスですかね。
【文】リスニングがすごく聞きやすい教室に当たることもあるのでそこまで気にしなくていいのかなという気がしますね。リスニングの教室問題については不平等感はなくはないですけど、それは言っても仕方がないのであんまり気にせずに気楽に行ってください。
【眞】実は環境面はそんなモゴモゴしてるって知らなくて。緊張してもいいように、速くして聞く練習はしてたけどモゴモゴした音を聞こうとか、そういう環境面を重視してなくて。本当に面食らいはしたんだけど、逆に練習で速い音を聞いてたから、別に追いついてないわけじゃないのは心の安心感になったし。もっと言えば、リスニングの一つの大問あたり5問でそれが3題あるから、2つずつミスしても30点中の18点ぐらい取れるはずだし各大問で2つミスしてもいいよと。全問正解を取りに行かないのは1つの手かなという風に思いました。
お風呂で再生?逆に勉強しない? 「教室ガチャ」を乗り越えるリスニング対策
用語説明
冠模試:特定の大学を志望する受験者向けに実施される模試。各大学の入試の形式や出題傾向に沿った問題が出ることが多い。
──2次試験のリスニングと英語全体の目標得点もしくは得点率がどれくらいだったか、実際の英語の開示得点と合わせて教えてください
【笹】英語の中でリスニングは得意じゃなかったので、大体7割取れたらいいなって思ってましたね。開示得点は英語全体が120点中89点でした。英語全体だと90点ぐらいを目標にしてたので、取れたかなっていう。
【仁】あんまり参考になんないと思うんですけど帰国子女なんで、全然英語は勉強してなくて。目標は90後半で当日の結果は100ピッタリでした。リスニングは英語の中でも確実に100%取んないといけないなとは思ってたので、リスニングの目標は満点でした。日常的に英語を喋る家庭なので取れないとまずいな、くらいでした。
【文】私は大体英語全体で80点台を目標にしてて、結果が82点でした。リスニングは結構苦手で、22点ぐらいが多かったので、模試の段階では3分の2ぐらいできたらいいかなと思っていたら、当日は多分2個間違えたぐらいだったので、結構私の中ではリスニングは良い結果になりました。音源が綺麗だったおかげかなと思ってます。
【眞】英語全体では一応、80点が目標と言っておきながら、75がマックスだろうなというような感じで思ってて。実際に得点開示見ても、現役が1番高くて79で、浪人した時はそれぞれ、70、72とあんまり良い点は取ってない。リスニングは、最低でも20点を取れるようにしてた。ライティングとリスニングで45点取りたいなってところがあったから、リスニング、ライティングを両方30点満点と考えてどっちか7割、どっちか8割取りたいなって考えてました。
──受験生の時、受験までの間、皆さんが実際にどうリスニングの対策をしていたか、どういうふうに勉強していたかをお聞きしたいと思います
【笹】私そもそも中3の時に英検準1級をとっていて、英語そのものに対する苦手意識はそんなになかったので、高3になってもあんまり勉強してこなくて。リスニングやるのが嫌いすぎて、全然やってなかったら点が伸びなかったので秋ぐらいから始めました。具体的にはさっきも言ったようにお風呂の中とか、歩きながら聞くっていうので。音質悪い場合の対策になるし、隙間時間にやることで他の勉強の時間を邪魔されないですね。私は別に苦手科目があったので、そっちに時間を割いて、隙間時間にリスニング対策をするのを結構大切にしてました。リスニングの点を上げるためには前読みが大事だと思うので、その時間を取るためにライティングとリーティングを速く解いて、ちょっと間接的ではあるんですけど対策してました。
【仁】英語を聞く習慣を付けるようにするとか、入試の当日と前日は家族と英語で喋るようにするとか、意識的に耳を英語に慣らしていました。
【文】私はまず、多分高1とか高2ぐらいの頃から頑張ってリスニング聞く習慣を付けようと思うだけ思って、何もしてこず、高3を迎えまして。結局受験直前、数学と物理に時間をかけたかったのであんまり英語をやってなかったんです。対策としてやったのは先生が半分ご好意でやってくださった補習ぐらいで。2次試験でリスニングをする人で集まって、リスニングを聞く補習をやっていたのでそれが対策になったかなと思ってます。東大の問題だけじゃなくて、一橋大学と東京外国語大学の過去問やCNNのニュースを聞いてましたね。
【眞】高校の授業でリスニングの演習もやってくれてたからそれで聞いてたけど、リスニングに対して頑張った記憶はあんまり無いかな。リスニングって真面目にやればやるほど考えすぎて逆にうまくいかないとか、聞いたことを信じてポンってやった方が結構点取れたっていうのがあったので。逆にリスニングあんまりやらなくて、他のところに力入れた方が良いんじゃない?と思って、結局リスニングは浪人時代も含めて学校以外でやった記憶が無いです。