戸谷友則教授(理学系研究科)は、宇宙の中で非生物的な現象から生命が誕生する、これまでで最も現実的なシナリオを見いだした。シナリオが正しければ、将来地球外生命を発見する確率は極めて低いと予想される。成果は3日付の英科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』に掲載された。
非生物的な現象からの生命誕生の問題は、RNAが構成単位となるヌクレオチドから偶然どのように作られたかが焦点になっている。従来、さまざまな仮説に基づいた研究が行われてきたものの、どれも未知の反応や機構を前提とし、具体的かつ現実的ではなかった。
戸谷教授は今回、最新の宇宙論に基づく宇宙の広さに注目。最先端の天文学で支持されている、宇宙は一様に指数関数的に広がるとする「インフレーション宇宙論」によると、宇宙には少なくとも10の100乗個以上の星が存在することになる。
研究では、生命誕生に必要な長さと情報配列を持つRNAが生まれる確率と、宇宙の星の数を結び付ける方程式を作成。生物的活性を持つために必要最低限となる、ヌクレオチド40単位の長さのRNAが偶然に生まれるには10の40乗個ほどの星が必要となり、インフレーション宇宙論に基づくと生命の誕生は自然であることが示された。シナリオに基づくと、その確率の低さから生命を育む惑星は地球のみである可能性が高い。
この記事は2020年2月11日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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