関真一郎准教授(工学系研究科)らは、電子スピンが作る100万分の1ミリスケールの糸状の構造「スキルミオンひも」の中を振動が伝わる様子を観測することに成功した。消費電力の低い情報伝送路の実現が期待される。成果は14日付の英科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載された。
スピンとは、電子の小さな磁石としての性質を指し、スピンが作る渦状の構造として「磁気スキルミオン」が注目されている。2次元系であるスキルミオン粒子は運動や安定性の制御が可能なため、情報処理への応用に向けて近年盛んに研究されている。ただ、3次元系では安定な「ひも」としての性質を持つことが分かっていた一方、スキルミオンひもがどのような応答や機能を示すのかは明らかになっていなかった。
関准教授らは、ひもを揺らした時の振動の伝わり方を観測することで、スキルミオンひもの情報伝達の性質を解明。直径の1000倍以上の長距離にわたる信号伝達が可能なことや、信号伝達の方向によって異なる信号伝搬の特性が現れることを発見した。
スキルミオンひもの振動は、電線中の電気信号とは異なり、導体内に熱が発生せずエネルギー損失も生じない。さらに、局所的な磁場や電場を外部から与えることでスキルミオンひも自体の書き込み・消去も可能。これらの性質を利用することでさまざまな状況に柔軟に対応できる情報伝送路への活用が期待される。
この記事は2020年1月28日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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