東大は4月21日、ロシアによるウクライナ侵攻により影響を受けた学生・研究者のための「特別受入れプログラム」で、2人のウクライナ人研究者の受け入れを決めたと発表した。2人は東大の研究組織、東京カレッジで研究を行う。
2人の研究者のうち、キーウ国立言語大学東洋語学講座研究員のイリーナ・ペトリチェンコさんは21日から「訪問研究員」として東京カレッジでの研究を開始。同日午前10時ごろ、東京カレッジの羽田正カレッジ長と共に取材に応じ「本当は体験してはいけない戦争というもので人生が狂ってしまったウクライナの研究界・教育界の人たちに温かいお心をかけてくださった東京大学に深く感謝しております」と日本語でコメントした。東大本部広報課の担当者によると、同プログラムで研究を開始したのはペトリチェンコさんが一人目。今回報道関係者向けに取材の機会を設けた経緯については「東大としても(今回の受け入れを)社会に説明した方がいいと考え、(ペトリチェンコさんに)ご協力いただければとお伝えした」といい、コメントだけという条件で受け入れてもらったという。
東大は3月30日にプログラムを発表。21日時点で学生・研究者を合わせ約50件の問い合わせが来ているという。東大は公式サイトやSNSで日本語・英語による告知を実施。ウクライナ語での告知を行ったわけではなかったが、東大本部広報課の担当者は「日本語でのプレスでも効果があった」とした。21日時点で受け入れが決まっているのは2人のみだが、今後も本人の専門分野を踏まえながら各部局で受け入れを進めていく。
同プログラムは「ロシアによるウクライナへの武力侵攻により、学ぶ場や研究する場を安全に確保することができなくなった学生及び研究者」が対象。部局ごとのプログラムを提供するほか、渡航費用や生活支援金の支給といった経済的支援や住居支援、生活支援も行う。学生は学位取得を目的としない非正規生として、研究者は無給の研究ポジションで受け入れられ、東京大学新聞社の取材によると最大で「数十人程度」の規模を想定しているという。受け入れ期間は来年3月31日までを予定しているが、今後の情勢に応じ見直すことがあり得るという。大学の財源をどこから拠出するかについては調整中だというが、取り組みの推進のため、東京大学基金で寄付も呼び掛けている。