受験

2024年9月26日

誰にでも東大を目指す権利がある─地方・非進学校・女子受験生応援座談会

 

 受験勉強が本格化し始めた9月。受験を本格的に見据えるようになった受験生もいるのではないだろうか。東大には多様な立場の中高生を応援するサークルがある。その中からFairWind、UTFR、polarisの代表者が集まる座談会を開催。自身の経験やサークル活動を通して知った中高生のリアルな声と中高生へのエールを聞いた。(構成・丹羽美貴)

 

参加者

山本博健さん(法・3年):FairWindに所属。自身も地方出身である経験から、地方に住む中高生の背中を後押ししたいと意気込む。

平原寛太郎さん(理I・2年):UTFRの副代表を務める。自身の経験を生かして非進学校に通う中高生と交流を続ける。

藤條玉葉さん(文II・2年):UTFRに所属。東大生をもっと身近に、親しみやすく感じてほしいという思いで活動に臨む。

北山友也さん(文III・2年):UTFRに所属。孤独な受験生時代を乗り越え、その経験を生かし活動に取り組む。

下村咲樹さん(理・3年):polarisの副代表を務める。等身大の東大生の姿を全国の女子中高生に発信し続ける。

 

──普段行われている活動内容を教えてください

 

山本 僕が所属しているFairWindでは主に非都市圏に住んでいる中高生を教育支援の対象にしています。毎年30〜40校程度の高校から依頼を受けて、それぞれのニーズに沿って大学受験や高校受験に関するプレゼンや、大学生と一緒に学習計画を考えるワークショップの開催などを行っています。また、オンラインツールを活用し、週に2回のメールマガジンの配信や中高生から寄せられる質問への回答、YouTubeやXでの情報発信もしています。

平原 僕たちが所属しているUTFRは非進学校出身の東大生のみで構成されていて、中高生への教育支援サークルであると同時に大学生同士の交流を深めるコミュニティーでもあります。普段は大学生同士でイベントや勉強会を企画しているほか、教育団体として全国の高校を訪問したり、Discord(オンラインチャットサービス)上で中高生と交流したりしています。オンライン上では大学生が中高生からの質問に答えるだけでなく、中高生同士の交流も深めることができます。

下村 polarisでは年に2回、女子中高生を対象としたキャンパスツアーやパネルディスカッション、相談会を企画しているほか、オンラインでの相談会やInstagramでの情報発信にも力を入れています。

 

──さまざまな立場の中高生にアプローチしているのですね。中高生が東大受験を視野に入れる中でどういった点がハードルとなり得るのでしょうか

 

山本 そうですね。地方に住む中高生の場合は「東大を目指すこと」そのものがハードルとなり得るのかな、とも思っています。情報が不足している地域ほど東大生を過度に神格化してしまっているところがあるように思いますね。得られる情報も偏っていて、東大生のロールモデルが少ないのも一因だと思います。また、東大を目指すにしても高校に東大受験指導のノウハウが少なかったり、周囲が地元志向で切磋琢磨(せっさたくま)できる環境でなかったりすることも活動の中で感じています。

北山 僕の経験上、通っている学校の偏差値が低いこともあって自分の地頭に自信を持てないことがありましたね。自分がいくら頑張ったところで、全国の進学校に通う受験生が少し頑張ったら容易に抜かされてしまうのではないかという不安が常にありました。

平原 僕も、山本さんや北山くんのおっしゃっていることは本当にその通りだと思います。確かに、僕も自分のポテンシャルを信じきれていないところがありました。自分の成長の余地がどれほど残っているのか不安でした。

藤條 私は非進学校であったことに加えて地方の出身だったこともあり、そもそも東京の大学に進学すること自体へのハードルが高かったです。生活費や安全性を懸念して地元での進学を選択した先輩もいました。

下村 地方の女子中高生は特に、東大に通っている女性のロールモデルがいないことも多く、polarisの企画を通して東大生と初めて会った、という中高生もいます。 相談会では東京での1人暮らしを不安に思っている、生活費の懸念や地元の大学への進学を望む保護者との思いのすれ違いに悩んでいるという声もよく聞きます。

 

──そうした東大受験へのハードルを少しでも下げるにはどのような取り組みが必要だと考えますか

 

山本 東大生も普通の人間だよ、ということを伝えてあげることが大切だと思います。どうしても情報が少ないと偏った像になりがちです。東大生も数年前まではあなたと同じような環境で頑張ってきた一人の高校生だったんだよ、ということを伝えたいですね。

平原 ロールモデルが身近にいない、ということはやはり大きなハードルだと思います。自分自身の経験を話すことで少しでも中高生の後押しができればと思います。訪問する高校の中には大学進学をすることが当たり前の選択ではないところもあります。大学のリアルについて発信し、大学生を身近に感じてもらうことが重要な第一歩だと思います。

北山 教育団体の内容とは少し逸れてしまうかもしれませんが、東大生の中でも全員真面目に勉強しているというわけでもないので、そうした東大生のリアルな姿を発信することも心理的なハードルを下げるきっかけになるのではないかと考えています (笑)。

藤條 アプローチする中高生と似た属性であると親しみを持ってもらいやすいかな、と思いますね。地方出身であるとか、趣味の話とか、何でも良いので共通点があると話が広がっていくことがあります。訪問先の高校生とはアニメの話題から話が広がって1人暮らしや東京での生活について話したこともありました。

下村 等身大の東大生の姿を知ってもらうことが大切だと思います。テレビなどで見る東大生の姿や周囲の話を聞くだけだとどうしても東大生に関する偏見や固定観念を持ってしまいがちです。そうした気持ちを払拭して、自分にも東大を目指せるんだ、という思いや自分の進路への気持ちに素直に向き合えるようになってもらえたら非常にうれしいです。

 

──今まで活動を続けてきた中で特に印象的だった中高生からの言葉はありますか

 

山本 一番うれしかったのは、「私も東大に合格してFairWindの一員として活動したい」という言葉ですね。実際に活動している大学生メンバーには中高時代にFairWindの活動を知って東大を目指した人もいます。 こうしたサイクルが今後も続くとうれしいです。

平原 山本さんと同じく、「東大に合格してUTFRに入りたい」という声はとてもうれしいですね。Discord上でUTFRと交流していた生徒が、実際に東大に合格し、UTFRに入ってくれたということもあります。

北山 イベント後のアンケートでは、「イベントを通して東大の志望度が上がった」、「今までは東大を遠い雲の上の存在と感じていましたが、実際に東大生と話して第1志望として東大を目指せるのではないかと思った」という声を聞くと活動をしていてよかったと感じます。

 

──最後に、この記事を読んでいる受験生にエールをお願いします

 

山本 僕も地方出身で中高生の時は東大について知らないことがたくさんありました。ですが、東大に入って想像もしなかった世界に出会うことができました。優秀な同級生の存在や質の高い授業、体験活動プログラムなどで東大の良さを日々実感しています。だからこそぜひ、 恐れずに東大を目指してほしいです。自分が思っている以上の実力を皆さんは秘めていますし、僕たちをはじめ皆さんのことを応援している人はたくさんいます。そのことを励みにこれからも頑張ってください!

平原 僕も受験生の頃、たった一人の東大志望で東大生の先輩もおらず、ずっと孤独でした。UTFRの理念として「孤独な君は一人じゃない」という言葉があります。 皆さんは受験において孤独を抱えているかもしれませんが、それはきっとどの受験生も一緒です。皆さんの周りには一緒に頑張れる仲間や応援してくれる人がたくさんいるということをどうか覚えておいてほしいです。

藤條 勉強をする中で「別に東大じゃなくてもいいのではないか…」と思うこともあるかもしれません。もちろんどんな将来の選択をしても得られるものはありますが、その中で自分が最初に決めた進路に向かってずっと努力し続けた経験というのは、必ず自分の役に立つはずです。気持ちが折れそうになってもどうか自分の思いを貫いて欲しいです。

北山 自分の高校から東大に合格したという前例がないとつい弱気になりがちです。しかし、例が少ないからといって東大を目指すことに臆する必要はありません。ぜひ強気の姿勢で臨んで欲しいです!

下村 「女子は数学が苦手」「女子は文系」といった偏見がどうしてもあります。そうした意見に惑わされることなく、どうか自分のやりたいことや好きなことを追い求めて欲しいなと思います。そのためにpolarisでも皆さんのモチベーションになるようなコンテンツを発信していきます。応援しています!

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