新型コロナウィルス感染症の影響で、授業がオンライン・対面併用になってから1年。学生をサポートする制度が整えられ、活動制限も緩和される一方、この非常事態における最適な履修の組み方に関する戸惑いは多少残っているだろう。そのため、昨年度に初めてオンライン授業を経験した新2年生に履修の組み方や、授業形式への対応方法、それぞれの授業への感想、情報の入手方法について話を聞いた。必修の多い1Sセメスター(学部1年の夏学期)だけではなく、より自由度の高い1Aセメスター(学部1年の冬学期)も履修を組む時は何を考慮すべきかについて、各科類の経験談をまとめた。
(取材・川北祐梨子、渡辺光、伊藤凜花)
文科一類:ゆとりある履修を
入学直後で自信にあふれていた1Sは、週18こまの時間割を組みました。しかしバイトや課外活動と週18こま分の学習との両立はかなり厳しく、好成績を確保できませんでした。1Aでは週12こまとしたところ、生活にゆとりが生じ、以前より授業を楽しめるようになりました。履修はキャパシティを考え冷静に組むことが重要です。
1Sではドイツ語TLPに参加しました。留学生の私にとって、実質的に第二外国語である日本語を用いて新たな言語を学ぶドイツ語一列・二列の授業はとても大変でしたが、TLPでは主にドイツ語が用いられ、他の学生と同じスタートだったため比較的楽でした。TLPは他の学生との交流機会が多く、良いコミュニティーでした。
私は法学部に進学予定ですが、1Sでも1Aでも、生命科学や演劇論など後期課程で学習機会があまりなさそうな科目を進んで取りました。ただ、あえて後期課程と関連性の高い科目を多く選ぶ友人もいたので、各自で前期教養課程に何を求めるかを考え選択すると良いでしょう。(文Ⅰ・2年)
文科二類:履修の失敗恐れずに
1Sは、東大の授業は内容や課題が難しいと考え、週12こまと少なめの履修に抑えました。授業や課題とアルバイトを無理なく両立できて良かったとは思いますが、消極的過ぎたかもしれません。少しでも興味がある授業は積極的に履修を検討するのも良いと思います。
1Sは各教科の評価方法をあまり確認せず履修を組みました。その結果、試験で評価される科目が多かったため、7月に忙しくなってしまいました。1Aではレポート評価の授業を中心に履修し、試験期間への負担集中を避けました。
経済学部への進学を考えていたため、基礎科目の経済I、IIに加え総合科目の「現代経済理論」を履修したところ、経済学のはっきりしたイメージを持てました。駒場時代は広く浅く学ぶ良い機会だとも思い、他にも心理学、教育学、文学など多様な総合科目を選択しました。
履修の仕方は多々ありますが、実際に履修して初めて分かることも多いと思います。学期初めの2週間程度は履修を確定させずに授業を受けられますし、1Sの履修での多少の失敗は後からでも取り返すことができます。悩み過ぎずに履修に臨みましょう。(文Ⅱ・2年)
文科三類:生活までシミュレーションを
好きな科目なら前向きに勉強できるだろうという考えから、興味を持った授業を積極的に履修し、結果的に成績も付いてきた印象でした。一方苦手意識のある理系分野の総合科目は関心だけで判断せず、ウェブ上の情報などを参考に吟味しました。
1Aには、関心の一端として第三外国語の韓国朝鮮語を履修しましたが、週1こましかない分、自習をもっとしっかりしておくべきだったと反省しています。初修外国語のインテンシヴ(応用レベル集中学習)クラスは、L系列の単位と学習時間増加による初修外国語の必修授業の学習との相乗効果の両方が期待できお薦めです。
履修を組むときは『履修の手引き』や上級生主催のクラスオリエンテーションだけでなく、さまざまな団体の履修の組み方講座も利用しました。高校の友達とも互いの時間割を確認しあうなど、念を入れました。今年もオンラインと対面の授業が混在することになりますが、時間割決定の前に、その時間割で送る生活スタイルをシミュレーションしておくと良いでしょう。早起きできそうか、体力が持つかどうか、食事の時間は確保できるかなどを具体的に考えておくのが重要です。(文Ⅲ・2年)
理科一類:オンラインならではの工夫を
初修外国語はせっかく学ぶなら使えるようになりたかったので、1Sではインテンシヴを受講し、1AからはTLPに編入しました。さらに、教員の仕事に興味があったので、教職課程も履修。1年生のうちから単位を取らないと後に厳しくなるので、シラバスや逆評定(サークル時代錯誤社が発行する教員・授業に関する情報冊子)を参考に、2こま選びました。理科で必修も多い中、総合科目も少しは取らないとまずいと思い、基礎化学を受講しました。
履修を組む上で、オンラインであることは意識しました。多くの科目を受講したのも、試験が少ないだろうと考えたからです。交流が減ることも考え、ディスカッションなど、他の学生と話す機会のある授業を選びました。知り合いを増やすには、自分から動くしかありません。カメラオンで話す機会のある授業や、対面の授業の積極的な履修をお薦めします。また、多く単位を取らないといけない人には、オンデマンド形式の授業がお薦めです。いずれも、最初の2週間で、詳細な授業内容を把握する必要があると思います。
1Aでは、必要な単位数を計算して焦り、1S以上に多くのこまを埋めましたが、これは失敗でした。手を抜く科目が増え、成績も微妙でした。2Sは余裕があるので、焦らずに、少ない科目に集中した方がいいと思います。(理I・2年)
理科二類:情報収集し必修に集中
1Sで登録できる授業数は、TLP履修生を除いて最大15こまですが、理科生の授業選択の余地は多くなく、ほとんどである12こまが必修科目で埋まりました。いきなり負担が重くなりすぎないよう最終的な履修はクラス指定科目と合わせて14こまにとどめましたが、それでも課題が重なったり課外活動が本格化したりすると、かなり忙しくなると感じました。
教員免許取得を目指しているため、人文系の授業でも履修が必要となる科目がありますが、それらは必修が少なくなる1Aから少しずつ履修し始めています。自分の関心の中心である環境問題に関連した講義など、取りたい授業は2年次からようやく本格的に履修できる余裕が生まれそうです。
地方から進学したこともあり、入学したときには頼れる先輩や友人がほぼいませんでした。『履修の手引き』を自力でひもとくのも大事ですが、それだけでは不安になると思います。ウェブ上の情報を参照したり、クラスオリエンテーションなどに参加したりすることで「答え合わせ」できることもありますので、積極的に情報を集め適宜活用することを勧めます。(理Ⅱ・2年)
理科三類:上クラの先輩参考に
理科類で必修科目が多い上にTLPを受講。キャパシティーを考え、履修の上限数までの残り3こまのうち、選択科目は2こまにとどめました。友人の薦めもあり、興味分野だった人間行動基礎論と、準必修の基礎統計を選択。その結果、金曜日は5こま連続に。集中力が続かず、課題も大変でした。生活リズムの整調にもつながるので、可能ならば曜日は分散させた方がいいと思います。
興味がある内容の授業を選ぶのも大切です。1Aでは成績を考え、興味分野から外れた内容の授業を選びましたが、オンライン授業だったこともありやる気が続かず、授業に出なくなってしまいました。
TLPは、せっかく初修外国語を学ぶなら少しでも話せるようになりたいと思い受講しました。スピードが速く負担も大きいので、つらく感じることもありましたが、文系の学生との交流を持てたり、必死に食らいつく経験ができたりしたことは良かったと思います。
1Aからは身体運動・健康科学実習(スポ身)・実験・初修外国語でハイブリッド授業が始まり、ようやくクラスの人と会って話す機会ができました。快適な大学生活を送る上で、交友関係はやはり重要です。サークルなどの新歓も積極的に参加しましょう。特に履修に関する相談は、実際にオンライン授業を受けたばかりの上クラの先輩にするのが一番かもしれません。(理Ⅲ・2年)
授業・履修で困った時に頼れる主なウェブサイト・ウェブページ
オンライン授業・Web会議 ポータルサイト@東京大学(オンライン授業やウェブ会議に関する情報をまとめて提供)
総合文化研究科・教養学部公式サイト内「前期課程(1・2年生)」(学部の新入生らを対象に、開講時限の変更と授業の実施形態などについて伝達)
東京大学附属図書館 「オンライン学習、在宅研究・勤務で利用できるオンラインサービスのご案内」(図書館に行かずとも利用できる書籍などについて説明)
【記事修正】2021年4月10日12時35分
文科三類の1A時間割を追加しました。