2月8日東大駒場キャンパスにて、東大在学中に先端技術であるVR(Virtual Reality: 仮想現実)やAR(Augmented Reality: 拡張現実)、MR(Mixed Reality: 複合現実)の領域で起業した竹下俊一さん(養・4年)と牛尾湧さん(法・2016年卒)のパネルディスカッションが行われた。東大VR学生団体UT-Virtualの代表である竹下さんは16年4月に株式会社GATARIを設立。一方、牛尾さんは在学時に東大起業サークルTNKの代表を務め大学3年時の2014年7月にプレティア株式会社を設立した。このイベントは2人が参加したプログラムであるTokyo XR StartupsとUT-Virtualの共催で開かれた。(XRとはVR、AR、MRなどの先端技術の総称として用いられる)
今回、初めて東大で行われたXRスタートアップのパネルディスカッションのコーディネーターを務めたのはTokyo XR Startups株式会社の代表取締役である新清士さんで、自身の起業体験も交えてシード期(ビジネスモデルやコンセプトを固めている段階)のスタートアップの魅力や課題について議論が行われた。
就活中にVR空間でアバターに面接を受け起業を決意―竹下俊一さん
竹下さんは、就職活動中に外資系のコンサル会社の模擬面接をVR空間で受けたことがきっかけで心に火がついた。その当時、東大内に誰もが気軽に仮想空間を体験できる場がないと考え、所属する研究室やTokyo XR Startupsなどから支援を得るために奔走。サークルを立ち上げ、VRの体験や開発を可能にする環境を整えた。今では70人を抱えるインカレサークルになり、都内のイベントでデモ版のVR体験を提供できるレベルにまで成長している。彼の率いる株式会社GATARIは現在、音声を使ったコミュニケーションがARやMRの発展とともに広がることを予測し、スマートフォンの次の世代に向けたプロダクトを開発中である。会社の経営に関して壁にぶつかることもあったが、五月祭でVR関連の展示をしている学生に声をかけてスカウトするなどチーム・ビルディングのために熱心に営業をした。さらに、現段階では人数的にも少ないと言われているVR専門のエンジニアの育成をサークル活動を通じて行うことで社内のエンジニアを獲得している。
メンバーの半数以上が外国籍のスタートアップを牽引する―牛尾湧さん
牛尾さんは、はじめ大学の友人とVRで旅行を体験できるという画期的なサービスを立ち上げた。しかし、ユーザーに喜ばれる割には継続的なニーズがないことに気づきピボット(企業経営における方向転換)を決意し、現在は女子高校生をターゲットに絞りARとAI(人工知能)を用いたコミュニケーションツールの制作をしている。プロダクトの制作の過程ではユーザー・インタビューの目安を5人程度と決めていて、5人にインタビューをすればユーザビリティに関する大きな問題点の7〜8割を発見することができるという。こういったプロダクトの制作や経営に関して読書を通じて知見を得ることもあると話し、『スプリント 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法』(ジェイク・ナップほか2名著/ダイヤモンド社)と『ウェブユーザビリティの法則』(スティーブ・クルーグ著/SBクリエイティブ)を参考にしている2冊として挙げた。現在は社員の半数以上が外国籍のチームを率いているが、社長として気をつけていることは「自分の思っていることを正直に話す」ことで、社員と良好な関係性を構築することに欠かせないと言う。
モデレーターの新清士さんは、最後に次世代のプロダクトを作っているという喜びはXR領域の会社を経営している醍醐味だと説明し、会場の参加者にXR領域の起業を喚起して幕を閉じた。竹下さんと牛尾さんはTokyo XR StartupsというXR領域に特化したインキュベーションプログラム(旧Tokyo VR Startups)の出身で、同プログラムでは現在第4期の参加者を募集している。詳しくは、Tokyo XR startupsのHPを参照してほしい。
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(寄稿)