理事長挨拶
東京大学新聞は、創刊100 周年を機に、紙の新聞の発行形態を週刊から月刊へと改めることを、検討しています。
100 年前の創刊以来、東京大学新聞は、学生目線の公正な取材・報道により東大の現在を伝え、読者の皆さんが東大の在るべき姿を考えることに貢献する「東大の変革を主導するジャーナリズム」であり続けてきました。
今後もこの使命を果たしていくため、東京大学新聞は、活動の力点を紙の新聞からオンラインへと移し、これにより、新しい時代にふさわしい経営の基礎を整えます。
オンラインの活用で、東大の現在を、より速く、より豊かにお伝えすることができます。また、オンラインメディアの持つ双方向性を生かし、読者の皆さんとともにオンラインで情報発信・交流を行うなど新たな可能性も広がります。
紙の新聞を月刊化する場合には、号あたりの面数を大幅に増強します。週刊発行の紙面では報じきれなかった東大の姿を、より広く、より深く掘り下げてお伝えすることを目指します。
東京大学新聞の「次の100年」の礎となる今回の変革にご期待ください。読者・広告主の皆さん、東大コミュニティーの皆さんのご理解、ご支援をお願いいたします。
公益財団法人 東京大学新聞社理事長
東京大学大学院法学政治学研究科教授 宍戸 常寿
編集長挨拶
平素より「東京大学新聞」および「東大新聞オンライン」をご愛読いただき、誠にありがとうございます。1920年12月25日に「帝国大学新聞」として創刊した本紙はこのたび100周年を迎え、このように「100周年記念号」を発行する運びとなりました。これもひとえに読者の皆さまのおかげでございます。
さて、「帝国大学新聞」としてそのスタートを切った本紙はこれまでの100年間、東大や社会におけるさまざまな出来事を報道してまいりました。例を挙げればきりがなく、1935年の天皇機関説事件、1968年からの東大紛争、近年では1989年の弔旗掲揚問題など社会における重要度も極めて高いものばかりです。東大に入学して間もなかった頃の私にとっては、こうした過去の報道は「東大の動きが激しい時代」の出来事であり現在の東大においてこのようなことは起こり得ないと考えておりました。
しかし、記者として東大の現在に向き合い始めた私がその認識を改めるのに時間はかかりませんでした。国からの運営費交付金が年々減少する中で求められる経営改革、政府や社会との距離感の変化、国際化の要請、新型コロナウイルス感染症の流行で見直される学び、総長選考の混乱を契機に問われる大学自治の未来。まさに東大は今、1877年以来の歴史の中でも極めて重要な転換点にあります。誰も5年後の東大の姿を明確に予想することはできないでしょう。
そのような状況にあって、権力や社会の動きを監視し、多様なステークホルダーに寄り添い、変わりゆく東大を突き動かさんとするジャーナリズムを展開することこそがまさに、東大に100年間根ざし続けてきたメディアに課せられた使命ではないでしょうか。もちろんその営みは東大というフィールドの中のみで活動するということを意味しません。国内に目を向けると東大よりもはるかに深刻な問題を抱える大学は数多く存在します。そしてあらゆる社会問題はもはや日本という枠組みだけで捉えることは不可能となりました。我々はこれからも東大と社会に対し批判的精神とペンを武器に立ち向かうことを宣言します。
またデジタル化の波が否応なく押し寄せる中、メディア、とりわけ紙媒体を発行する組織は急激な変化を迫られています。我々のやるべきことは紙の新聞を従前通りに発行し続けることなどではありません。社会にとって価値のあるジャーナリズムを展開するためには、激動の中を変化しながら生き残らなければならない。変化することをやめたメディアに明日は来ません。東京大学新聞社では2014年に現在の東大新聞オンラインを開設して以来、ウェブ上での活動を試みてきました。これからは編集の方針を完全なデジタル・ファーストに転換し、読者の皆さまにとって議論の土台となるような情報をより速く、より深く提供いたします。
東大は、社会は、変わらなければなりません。変わりながら変え続けていくことこそが、我々東京大学新聞社の在るべき姿です。これからもご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
「東京大学新聞」編集長
東京大学教養学部文科Ⅲ類2年 中野 快紀
副編集長挨拶
人の体は日々生まれ変わりますが、私が私であるという事実や認識は原則としてその人が死ぬまで続きます。多くは4年で卒業していってしまう東大の学生が取材・執筆などを担う東京大学新聞社もまた、代謝する組織でありますが、先達たちの意思や技術を継承し発信を続けることで今日まで存続してきました。
100年間、東大新聞という器には何千何万の記事が盛られてきました。その間にはかつて「帝国大学新聞」だった名前が今は「東京大学新聞」になっていたり、オンラインメディアの現「東大新聞オンライン」が誕生したり、手書きの原稿がWordの原稿になったり、活版印刷からデジタル印刷になったりと、小さなことも含めれば、数え切れないほどの変化があったようです。本号8、9面の「東大今昔物語」をご覧いただけばお分かりになるかと思いますが、フォントもレイアウトも変わりました。表記統一のルールも変わりました。100周年目の今年は新型コロナウイルス感染症流行の下、毎日編集部にこもって行っていた入稿作業がオンラインになり、取材のほとんどをZoomで行うという試みが始まりました。しかし、編集部員たちが何を思って取材し、記事を書き、紙面を作ってきたか、その本質は100年間そこまで変わっていないのではないでしょうか。それは知りたい、伝えたいという情熱や使命感も同様ですが、同僚からの「記事を書け」への焦燥や、授業や課題をそっちのけで取材へ飛んだり原稿を執筆したりしなければならない後ろめたさ、なんていうところも、きっと同じなのではと推測します。
週刊であること、伝統的な新聞然とした新聞であること、紙の新聞を重視することをはじめとして、間違いなく東大新聞のアイデンティティーの一部であり東大新聞の当たり前だったさまざまな要素が、今回の変革に際して俎上に載せられました。しかし東大新聞はこれまでとは違う何かになってしまうのでしょうか。
「東大新聞は変わりません」
「東大新聞は変わります」
今回の挨拶にはどちらの宣言がよりふさわしいのか、執筆に当たって三日三晩考えましたが、とどのつまり、どちらもふさわしいだろうという結論になりました。
まず、東大新聞は変わりません。今後もこれまでと同じように、本紙でこそ報道する意義のある、あらゆる人や事物にスポットライトを当て、東大生やそのご家族、教員、受験生、東大新聞を読んでくださる全ての方々に向けて、面白い人、面白いこと、研究する人、作る人、発信する人、東大の最新ニュース、役に立つこと、考えなければならないこと、そうしたさまざまな情報を、東大の学生という私たちの今にだけ付与された視点から発信していきます。
一方で、東大新聞は変わります。もっと多くの人に読んでいただけるように、もっと読者の皆さまの役に立てるように、もっと読者の皆さまに楽しんでいただけるように、誰かを傷付けないように、社が存続し常に情報を発信し続けられるように、変化を惜しみません。
「東京大学新聞」副編集長
東京大学文学部3年 長廣 美乃
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