キャンパスライフ

2020年3月12日

多言語で世界を考える喜びを 教員と参加学生に聞くTLP制度 ②学生編

 入試時に高い英語の能力(上位1割程度)を持つと認められた学生のうち、希望者を対象に第二外国語を集中的に鍛えるトライリンガル・プログラム(通称TLP)。中国語を皮切りに、2019年度現在、六つの言語でTLPが用意されている(表1)。TLPの設立に携わり、現在は後期TLPから発展したEAA「東アジア教養学」のコーディネーターを務める石井剛教授(総合文化研究科)に中国語を例にTLPについて話を聞き、TLPに参加した学生3人の声を聞いた。

 

 

(取材・米原有里)

 

負担多くも、成長実感 前期TLP生

 

 通常より重点的に語学を勉強できるTLPのカリキュラムに魅力を感じていました。そのため、入学手続きで第二外国語を登録する際迷わず応募しました。選んだ言語は以前から興味があったロシア語です。

 

 授業中は文法の練習だけでなくテキストの音読やリスニングも行い、ほぼ毎週作文の課題が出されてハードでした。少人数故に各学生の発言回数が多いのも特徴でしょう。量的負担に加え、TLP継続のために良い成績を残すことへの心理的負担もありました。

 

 しかし集中して学習する分、文法や語彙 を早く確実に習得できたという実感がありました。1年半にわたる履修の後に受験したロシア語検定試験で、東大が推奨する第1レベル(ロシアの大学に入学できるレベル)に合格した時は、大きな達成感を得られました。

 

 ロシア語クラスの研修は2年次の夏休みに行われます。私の代はサンクトペテルブルクとモスクワに行きました。サンクトペテルブルク国立大学でロシアの政治史を学び、両都市の観光で生のロシア語に触れ町の空気や生活感を味わいました。

 

 確かにTLPを受講するかどうか現実的に検討することは大切です。TLPのホームページにカリキュラムが載っているので、負担が気になる場合は参考にしてください。ただ、少しでも語学に興味があるならば受講することをお勧めします。頑張り次第で、負担以上の成果と充実感を得られるでしょう。

(文Ⅰ・2年・ロシア語)

 

語学から実用への発展 後期TLP生

 

 新たな言語を学ぶならばしっかりと学び、より多くの人や世界とつながるための力にしたいと考え前期TLPに応募。中でも話者の多い中国語を選びました。また、前期TLPを通してTLPクラスの友人や中国の方と触れ合う中で、中国語をさらに上達させたいという思いや、中国語を学ぶ喜びを経験し、後期TLPにも応募しました。

 

 前期TLPでは中国語の上達が授業の主眼で「中国語を」学んでいたのに対し、後期TLPでは中国語を手段とした「中国語で」しかできない学びを得ています。授業では実際に中国の文章を取り扱い、中国語での深い議論や評論の執筆も行いました。文法に関してもより学問および実用の観点で重要な細かい事柄を学びました。

 

 前期に引き続き、後期でも一つの言語に触れるための機会が多く提供されるのがTLPの魅力です。私は3年生の時、TLPを通じて北京大学への留学も経験しました。中国人の友人と交流し、彼らの視点を知れたことで、英語や日本語を学ぶだけでは持ち得なかった多角的な思考能力が身につきました。大げさかもしれませんが、TLPは私の人生観にも変化を与えたんです。

 

 後期TLPには意欲の高い仲間が集まり、自ずと自分の意識も高まります。確かにTLPに参加すると要求される学習のレベルは高くなりますが、その分得られるものも多いです。TLPで集中的に勉強してみるのも面白いと思います。

(養・3年・中国語)

 

負担に耐えきれず…… TLP離脱者

 

 ドイツ語TLP生だった姉が研修でドイツに行くのを見て、楽しそうだと思ったのがTLPに応募した主な理由です。今思えば浅はかな動機ですが、入学した当初は中国語を頑張ろう、という意識もありました。

 

 しかし、TLPだと1年生のSセメスターに必修の中国語の授業が週5コマもあり、大きな負担を感じました。関心がある授業があってもTLPの授業と被っているために履修を諦めたこともあります。また、先生方が熱心である分、授業がどんどん進み、他のTLPのクラス(注・中国語TLPは文科2クラスと理科1クラスに分かれて授業を受ける)と僕のクラスとを比較する先生もいて、少し嫌でした。数多い必修授業や先生からの期待などの負担の中勉強するよりは、自分の好きな授業を履修しながら無理のない範囲で中国語をやりたい、と思って1年生のAセメスターからTLPの授業の履修をやめました。

 

 一方で、TLPの学生は勉強熱心で優秀な人が多く、大学生は勉強をしない、という固定観念を打ち砕かれました。常に刺激を与えてくれて、これからも仲良くしたいと思えるTLP生の友人たちと出会えたので、TLPに応募したことを後悔していません。

 

 TLPに応募しようかどうか迷っているなら、1回挑戦してみてもいいと思います。実際に試してみて、自分に合わないと感じたら僕のように辞めればいいのです。選択肢があるのなら、やらない後悔よりやる後悔です。

(文Ⅱ・1年・中国語)

 

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この記事は2020年3月10日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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キャンパスのひと 中村慧地さん(文Ⅱ・2年)

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