学術

2020年8月13日

自宅で作業に集中できない人へ 作業効率を上げる片付け方

 7月も終わりに近づき、レポート執筆やオンライン試験が佳境を迎えている学生も多いだろう。しかし、部屋が片付いていないと作業の効率も落ちてしまいがちだ。そこで、自宅で快適に作業できるような環境をつくるための部屋や机周りの片付け方について、東大卒で整理収納アドバイザーとして活動している米田まりなさんに話を聞いた。

(取材・武井風花)

 

 

大切な物見極めて

 

  片付ける時に、物を捨てなければと思っても捨てられなかったり、捨てたけれど後悔したりといった悩みを抱えている人は多いと思います。一方米田さんは「捨てない片付け」という独自のスタイルを提唱していますが、本当に捨てないで片付くのでしょうか

 

 はい、片付きます。確かに片付けというと不要な物を迅速に振り分けて捨てる作業というイメージがありますが、物への愛着が強い人は、それだけで片付けに挫折してしまいます。それに、収納に入らないからといってよく考えずに物を捨てると、本当は必要な物まで捨ててしまう危険もあります。本来部屋の大きさと物の大切さは関係ないはずです。家の外で荷物を保管する方法もあります。そのため私は、物を捨てるのがゴールではなく、物の意味を繰り返し考え直す作業を通し、物の質を高めることを最終的な目標にした片付けを提案しています。

 

  勢いで大切な物を捨てて後悔しないためには、どのような点に気を付けるべきですか

 

 コツは二つあります。まず、片付けは一気に進めず1日3時間までにすることです。自分に必要な物とそうでない物を振り分ける作業は精神をすり減らします。一気に進めようとすると判断を誤って大切な物を捨ててしまう危険があります。

 

 二つ目は、自分が何を愛しているのか把握することです。一見ガラクタでも、その人にとっては大切な物もあります。優先順位の表を作るなどして、自分が何を大切にしているのか自分で把握しておけば、捨てたくない物を捨ててしまうことを防ぐことができます。

 

  部屋全体の片付け方のコツを教えてください

 

 本は本棚、服はクローゼットに入れる、といった物の属性によって収納場所を決める方法ではなく「いつ使うか」によって収納場所を決めるのがコツです。持ち物をすぐ使う物と使わない物に分け、前者は直立状態で自分の手が届く範囲(ハンディゾーン)にまとめ、後者は箱に詰めて収納場所の奥にしまいます。

 

 一人暮らしの学生の場合は、トイレットペーパーや歯ブラシなどの消耗品の買い置きが増えてしまうことがあると思います。そういう事態を防ぐために、買い置きは1カ所にまとめて収納し、写真を撮影しておくと良いです。自宅にあるストックが外出先でも一目で分かるので、買い置きに偏りが出るのを防ぐことができます。写真を撮っておくことで探し物の手間も省ける点でもお勧めです。

 

  今すぐは使わない物はどこに収納すれば良いでしょうか

 

 押し入れの上部など自分の手が届きにくい位置に置くと良いと思います。家の外で保管するという手もあります。私が今関わっている「サマリーポケット」は、専用ボックスに荷物を詰めて送ると倉庫で預かってもらえる収納サービスです。私も卒業アルバムや色紙、オフシーズンの衣類などを預けています。アプリで収納している物の写真を確認できるのも利点です。こういったサービスを利用すれば、家の収納が小さくても物であふれず快適に過ごせます。

 

机には何も置かない

 

  作業に集中できる環境をつくるための方法についてお聞きします。机周りの片付け方を教えてください

 

 私も学生の時そうだったのですが、東大生は辞書や書籍を机の上に並べるのが好きな人が多いですよね。そうすると、視界の隅にちらちらと表紙の文字が入ってきて気が散ってしまいます。クリエーターなど発想力を広げる仕事をしている時は役に立ちますが、試験中は集中する必要があるので邪魔になってしまいます。照明やパソコンといった作業する際に必ず使う物以外は、思い切って机の上からどかしましょう。机の上に置いていた文房具や書籍は、机の脇にカラーボックスや本棚などを置き、使うたびに取り出すようにします。とにかく視界から余計な物を排除することが大切です。

 

集中しにくい机:一見きれいだが、小物が多く気が散りやすい(写真は米田さん提供)
集中しやすい机:机の上は「ゼロ」が基本。小物は別の場所に収納(写真は米田さん提供)

 

  片付けるのに便利なグッズはありますか

 

 100円ショップなどで売っているシンプルなカラーボックスや不織布の箱、段ボールは、規格が統一されていてお薦めです。ただ、箱の中に物を入れるだけだと中身がごちゃごちゃになるので「二重構造」で片付けると良いと思います。箱に小物を入れる際、種類ごとに透明な袋に分けて入れるのです。ラベルを貼っておくとより取り出しやすくなります。

 

  大学生は授業で大量のレジュメや教科書を使います。これらはどのように整理すれば良いでしょうか

 

 昨年使った教科書と、今使っている教科書を一緒に並べていると取り出しづらくなってしまいます。すぐには使わないけれど捨て難い教科書は、段ボールに詰めて押し入れに入れ、視界に入らないようにするとすっきりします。紙だとどうしてもかさばるので、データで保管するという手もあります。段ボールに書類を詰めて送るとスキャンを代行してくれるサービスもあるので、うまく活用してみてください。

 

  東大生にメッセージをお願いします

 

 東大生は物への愛着が強く、ため込む人が多いのではないかと思います。それだけ深い趣味を持っていたり、多くの思い出を持っていたりするということなので、誇りに思って良いです。部屋が片付かないからといって気に病む必要はありません。最初からコツコツ片付ける習慣を付けるのは難しいですが、習い事やプロジェクトをこなすように、生活を快適にする手段の一つだと思って片付けを役立ててください。

 

米田 まりな(こめだ まりな)さん(整理収納アドバイザー) 14年東京大学経済学部卒。同年、住友商事入社。17年より株式会社サマリーに出向。著書に『モノが多い 部屋が狭い 時間がない でも、捨てられない人の捨てない片づけ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

この記事は2020年7月28日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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