王妍大学院生(研究当時)、王漪大学院生、濱崎純講師、村田茂穂教授ら(いずれも東大大学院薬学系研究科)の研究グループは、神経疾患ジストニアの原因遺伝子THAP1が、有害なタンパク質を除去するプロテアソームの組み立てと活性に重要な役割を果たしていることを明らかにした。成果は2月14日付で英科学誌『Nature Communications』に掲載された。
ジストニアは、脳の過剰な活動によって異常な筋収縮や意図しない運動、姿勢の異常などを引き起こす神経疾患。これまでに原因となる遺伝子の異常が複数報告されてきた。中でもDTY6ジストニアと呼ばれるジストニアは、THAP1の機能喪失によって引き起こされると考えられてきたが、その詳細な仕組みは不明だった。
今回の研究ではまず、THAP1を除去した細胞において、プロテアソームの活性が下がることを明らかにした。プロテアソームは、有害なタンパク質を分解するタンパク質複合体で、複数のサブユニットが組み立てられて形成される。プロテアソームの活性が下がると、細胞内に有害なタンパク質が蓄積されてしまう。
THAP1を除去した細胞を詳細に調べたところ、プロテアソームを構成するサブユニットのβ5が減少しており、プロテアソームの形成不全を引き起こしていることが示唆された。この細胞では、β5をコードする遺伝子PSMB5の発現量が大幅に低下していることが分かり、THAP1がPSMB5の発現制御を介してプロテアソームの形成に重要な役割を果たすことが示唆された(図)。さらに、THAP1を除去した細胞で、PSMB5を継続的に過剰発現させると、β5が増加してプロテアソーム活性が回復することも分かった。
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今回の研究によって、ジストニアをはじめとする神経疾患の原因が、プロテアソームの機能不全にある可能性が示唆された。今後はプロテアソームの機能に着目した治療方法の開発や、神経疾患メカニズムの解明が期待される。
論文情報
Wang, Y., Wang, Y., Iriki, T., Hashimoto, E., Inami, M., Hashimoto, S., … & Murata, S. (2025). The DYT6 dystonia causative protein THAP1 is responsible for proteasome activity via PSMB5 transcriptional regulation. Nature Communications, 16(1), 1600.
DOI:10.1038/s41467-025-56867-x