学術ニュース

2020年1月19日

遺伝子発現の制御に茶カテキンが関係

 荻原洲介さん(薬学系・博士1年)らは12月23日、遺伝子発現の制御に関わる薬剤を効率的に探索する仕組みを確立し、茶カテキンによって大腸がん細胞が細胞死を起こしやすくなることを発見したと発表した。緑茶の健康効果の説明につながると期待される。

 

 遺伝子発現は、遺伝情報からタンパク質を合成する働き。この機能は多様な因子で調節され、タンパク質や遺伝子の「メチル化」はその一つだ。近年、メチル化を行う酵素は「S―アデノシルメチオニン(SAM)」という物質の濃度変化で制御されることが分かった。SAM濃度とがんなどの疾患の関係も報告されており、濃度変化の仕組みを理解。制御する方法の開発が求められていた。

 

 萩原さんらは、SAM濃度の高感度な測定法を開発し、細胞内のSAM濃度を変化させる薬剤を効率的に探索する実験系を確立した。SAM濃度の上昇が悪化に寄与することが示唆されている大腸がんの細胞を使って探索を行った結果、茶に含まれるカテキンや類似化合物が大腸がん細胞のSAM濃度を低下させることが判明。大腸がん細胞が作る薬物代謝酵素の一種が関わっているなど詳しい仕組みも明らかにした。

 

 カテキンによるSAM濃度の低下が実際に大腸がん細胞に影響を与えるかも検証。細胞内のヒストンタンパク質のメチル化を低下させ、細胞死を起こしやすくすることを確かめた。


この記事は2020年1月14日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

ニュース:東大の足元は今③学生寮 教育の場としての学生寮を デジタル化時代の大学教育の在り方とは
ニュース:阿部選手10区を駆ける 箱根駅伝 「悔しいが未練ない」
ニュース:教養学部学部交渉 食事環境の整備など6項目を要求
ニュース:理学系・西増准教授が受賞へ 日本学術振興会賞 生研・野村准教授も
ニュース:流体中の微小粒子を安価簡便に自動測定
ニュース:遺伝子発現の制御に茶カテキンが関係
ニュース:七大戦 東大は最下位発進 アイスホッケー欠場響く
企画:国境越えた中国茶の世界 歴史や味わい方をのぞき見
WHO,ROBOT:第3回 ロボット通じ学生の挑戦促す 「ヒト型ロボット」研究開発の意義とは
教員の振り返る東大生活:インド哲学仏教学研究室 蓑輪顕量教授(人文社会系研究科)
研究室散歩:@情報熱力学 沙川貴大准教授(工学系研究科)
青春の一冊:畑村洋太郎編著『実際の設計 機械設計の考え方と方法』 高橋宏和准教授(情報理工学系研究科)
キャンパスガイ:堀井崇史さん(理Ⅰ・2年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit

   
           
                             
TOPに戻る