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2023年5月9日

世界的建築家、アーティストによるトークセッションも 「つくりかたのつくりかた」建築学生による五月祭企画

 

 建築家・隈研吾氏が2020年6月に立ち上げたSEKISUI HOUSE-KUMA LABが展開するデジタルファブリケーション(デジファブ)施設T-BOXで、建築学科の学生たちが五月祭で展示企画を行う。企画名は「つくりかたのつくりかた」。作品展示、ワークショップに加えて世界的建築家の伊東豊雄氏、デザイナーの野老(ところ)朝雄氏らによるトークセッションも開催される。今回、責任者の金子照由さん(工・4年)に企画の背景や見どころについて話を聞いた。(取材・安部道裕)

 

建築らしからぬ「ゆらゆら」と「ふわふわ」

 

 手のひらサイズのものから4メートル四方の大きさのものまで、計8作品を展示する。これらの作品には学生たちの考案した「4つ又テンセグリティ構造」と「たわみ柔構造」という二つの構造が用いられている。

 

 テンセグリティとは引っ張る力がかかる部材をひもなどに置き換えた浮遊感が特徴的な構造のこと。金子さんたちはこの構造を研究・発展させた。4つ又の圧縮材の幾何学的な位置をコントロールすることで、自由な形状をつくることを実現。最も大きい展示は複雑な曲率を持つ「メビウスの輪」をモチーフにし、さらに構造の不思議さ、軽快さを高めた。

 

4つ又テンセグリティの模型。各部材が浮いているように見える(写真は金子さん提供)
4つ又テンセグリティの模型。各部材が浮いているように見える(写真は金子さん提供)

 

 たわみ柔構造は、細い部材を曲げて組み合わせてつくった構造だ。あらかじめ曲げておくことで、自立しながらもゆらゆらと揺れ動くことができる。たわみ柔構造も自由な曲面をつくることが可能だ。建築らしくないゆらゆらとする空間を体験してほしいと金子さんは語る。

 

たわみ柔構造による自由曲面の例として展示されるうさぎ(写真は金子さん提供)
たわみ柔構造による自由曲面の例として展示されるうさぎ(写真は金子さん提供)

 

デジファブで「ゆらゆら」のデザインを追体験

 

この企画は金子さんら学生の「気付き」から始まった。「建築の歴史を紐解いてみると、構法・構造技術、つまり『つくりかた』の発展が新しい空間を生んできました。上述した二つの構造をデザインしていたとき、私たちは単に構造を考案したのではなく『つくりかたをつくっていた』ことに気付いたのです」

 

 つくりかたをつくる上でキーとなったのがラピッドプロトタイピングだ。ラピッドプロトタイピングとは、レーザーカッターや3Dプリンターといった「デジファブ」を使って、短時間で試作品をつくること。アイデアを素早く発展させることができる。ワークショップではこのラピッドプロトタイピングを体験し、たわみ柔構造を応用したものをつくれる。「私たちのデザインのプロセスを追体験してもらうことが目的です」

 

本企画のロゴ
本企画のロゴ(画像は金子さん提供)

 

「つくる」プロと「つくる」を再考する

 

 5月13、14日にはトークセッションも行われる。13日は建築家の伊東氏と佐藤淳准教授(東大大学院新領域創成科学研究科)、14日はデザイナーの野老氏と池田靖史特任教授(東大大学院工学系研究科)が登壇する。伊東氏は東大の建築学科出身で、「建築界のノーベル賞」とも呼ばれるプリツカー建築賞を受賞した経歴を持つ世界的建築家だ。代表作にせんだいメディアテーク、台中国家歌劇院などがある。佐藤准教授は、東大で教壇に立ちながら構造設計者としても活躍しており、独創的な構造デザインで国内外から高い評価を得ている。

 

伊東豊雄氏
伊東豊雄氏(© 藤塚光政)
せんだいメディアテーク(写真は伊東豊雄建築設計事務所 提供)
せんだいメディアテーク(写真は伊東豊雄建築設計事務所提供)

 

 野老氏は美術、デザイン、建築と幅広い領域で活躍するアーティスト。東京2020オリンピック・パラリンピックエンブレムを手掛けたことは記憶に新しい。16年から東大で非常勤講師を務めている。池田特任教授は、建築学と情報学を掛け合わせた学問分野である「建築情報学」のパイオニアだ。

 

野老朝雄氏(写真はTOKOLOCOM提供)
野老朝雄氏(写真はTOKOLOCOM提供)
野老朝雄、平本知樹両氏による『122 CHEQUERED SPHERE(NEGATIVE)for Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions』

 

 トークセッションの主題は「つくることを再考する」。このテーマの根底にあるのは金子さんの抱いている問題意識だ。「現代では本が電子書籍化されるなど、さまざまなものがデジタル化しています。それは建築も例外ではありません。現実世界に建築をつくる意味が問われているのです」。

 

 つくり手の変化にも金子さんは言及する。「ChatGPTに代表されるようなAIの発展により、人間以外でも芸術や建築をデザインすることが可能になっています。人間の創造とは何か、を再考することが必要です」金子さんら東大建築学科の学生は、東京藝術大学の建築科の学生たちも交えてこのテーマについて議論を行った。「私たち学生の議論の結果やそこから得られた新たな疑問を伊東氏や野老氏、建築学科の教員2人にぶつけ、対談してもらおうと思います」。当日のトークセッションではこれらのテーマについて話すほか、観客からの質問も募集する。

 

企画責任者の金子照由さん(写真は金子さん提供)
企画責任者の金子照由さん(写真は金子さん提供)

 

【企画概要】

・開催場所:工学部1号館4階「T-BOX」(展示、ワークショップ)、3階多目的演習室(トークセッション)。トークセッションはオンラインでも配信される。

・開催日時:展示は全日。ワークショップ(参加費無料)は 13、14日の10時半、12時、午後1時半から1時間ずつ(計6回)。トークセッションは13、14日午後3時〜4時30分。

 

【関連情報】

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