お笑いを通して子どもにも分かりやすく社会問題の発信を続ける「お笑いジャーナリスト」たかまつななさん。慶應義塾大学在学中にブレークし、同大在学中に東大情報学環教育部に入学するなど、異色の経歴を持つ。2016年には「笑下村塾」を創設し、全国各地の学校へ芸人による出張授業を提供してきた。環境問題や政治問題などの発信・教育を志した経緯や、ジャーナリズムの手段として「お笑い」を選んできた理由など、進路への思いを聞いた。(取材・丸山莉歩)
【前編はこちらから】
https://www.todaishimbun.org/takamatsu_20220919
現場の価値観を学んだ情報学環教育部
──大学4年生の時に東大大学院情報学環教育部に入学しました
いろいろなところでここの存在は耳にしていました。マスコミやジャーナリズムのことを勉強したくて、他の大学のメディア関連学部と比べても、行きやすいのはここかなと。
──印象に残っている授業はありますか
前田幸男准教授(当時)が担当していた、総理大臣に関して出版された書籍や論文を輪読してディスカッションする授業が面白かったです。他には、教員がテレビ朝日の方で、自身の作ったドキュメンタリーの裏側を聞かせてくれる授業など。検察の闇を暴く番組を取り上げて、撮影時の苦労話を話していました。どの授業も面白かったです。現場の経験がある先生が多く、現場の感覚や価値観が学べました。
──慶應の授業、芸人活動に加えて情報学環教育部での授業となると、かなり多忙だったのでは
教員免許取得に目処(めど)がついていたので情報学環教育部への入学に踏み切れたところはありますが、それでも忙しかったです。慶應の湘南藤沢キャンパスから三田キャンパス、そして本郷キャンパスと、1日に3キャンパスをはしごした上で仕事が入る日もありました。
待つよりも「とりあえずやってみる」
──慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科入学と同じ2016年に笑下村塾を設立しました
この年に18歳選挙権が導入されて、チャンスだと思いました。若者が政治の中心になれると。しかし、若者が面白く政治を学べる教材がまだ世間にはない。これは今も続く問題だと思いますよ。私たちの作っている教材は政治や社会問題を学ぶための面白い教材だと自負していますが、全体として政治を学ぶことの敷居が低いとはいえません。そこで、全国の学校にお笑い芸人による出張授業を届け、政治や社会問題を身近に伝える「笑下村塾」を立ち上げました。
これまで6万人に、芸人による出張授業を届けてきた他、授業内で使う教材に「悪い政治家を見抜く人狼ゲーム」「お笑い芸人と学ぶSDGsババぬきカードゲーム」を開発しました。
──大学院修了後の2年間NHKに在籍していました。なぜ活動拠点を移したのでしょうか
NHK在籍時は、企画の立案から放送されるまでに長時間かかることを歯がゆく思っていました。丁寧に作る企画なら1年くらい。でもYouTubeで個人的に活動すれば、無編集ならその日に上げることだってできる。また、私の作った『若者よ、選挙に行くな』という動画がネットでバズり、30社ほどのメディアに取り上げられたことがありました。NHKの視聴者層を超えたネットの拡散力は魅力だと思います。
──これからの笑下村塾は
われわれ笑下村塾は、日本で唯一主権者教育を全国に展開する会社だと思っています。子供にツケを回さないため、また若者が明るい未来を見いだせない現代社会を変えていくため、お笑いを通じて教育を届けていきたいです。
──進路について悩んでいる学生や子どもたちにメッセージをお願いします
「とりあえずやってみる」ことはしてほしいなと思います。学生という時代はすごくて、周りの協力も得やすいですし、うまくいかなければやり直せる。もちろん、何歳になっても挑戦できるというのは真理だと思います。しかし体力と時間があって、満足に勉強する機会のある学生のうちにいろいろ試してみてほしいです。「大人になったらできそうなこと」のために機が熟すのを待つよりも、今それをやってしまおう。そして若いうちに「自分は何がしたいのか」、嫌ってほど向き合ってください。自分と向き合うのはつらいことですが、流されて選んだ進路の方がきっとつらいですから。
──最後に一言お願いします
SDGsババ抜きカードゲームは、現在Amazonなどで発売中です。何より、選挙に行ってくださいね!
【記事修正】2022年10月25日15時08分、経歴部分について、「慶應大学大学院博士課程修了」となっていた部分を「慶應大学大学院修士課程修了」と修正しました。お詫びして訂正いたします。
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