就職活動。いずれ多くの人が通る道だが、その全体像は、就活をしていく中でも把握することがなかなか難しい。そこで東大新聞では、「就職座談会」を開催。多くの企業が就活に取り入れている「グループディスカッション」と、それぞれの参加者が就活に対して抱く悩みや疑問を打ち明けあう「お悩み相談会」の2部構成で、就活の実態やそれぞれのエピソードを探っていった。(企画・構成 内田翔也)
参加者
条(4年・経)就活済み。メディア系に内定。
眞(3年・法)就活中。ディベロッパー・鉄道などを志望。
海(2年・文III)就活前。かねてより興味を持っていた考古学専修に進学が決まり、院進も考えている。
日(2年・理I)就活前。理系は院に行くという東大の不文律(?)のもと、院進を軸に検討している。
乃(2年・文III)就活中?広告で出てきたインターンに出来心で参加したら内定をもらった。今回はモデレーター。
第1部 グループディスカッション
お題:新聞社は若者の活字離れをどう克服するか?
乃 時間は20分です。それでは始めてください。
海 とりあえず、まずは前提を確認しましょうか。
条 まず、議題が少し曖昧な部分があるというか、若年層っていうのがどこまでを含むのかっていうのとか、活字って何を意味するのかとか。
海 まあ20代くらいまでなんじゃないでしょうか。
条 中高生は?
海 ああ、だから10代20代。
日 新聞って古い媒体ですよね?その側面を考えると、30代まで含んでいいような気がする。
海 確かに。じゃあとりあえず、中学生〜30代で。
条 次に「活字」ってどうしよう。
眞 新聞それ自体だけじゃなくて、オンラインの記事とか本とかも含むのかねえ。
日 今回は新聞社ってあるので、本とかは含まなくていいのでは。オンラインとかは含むとして。
条 そんな気がする。新聞社系の出版社もあるにはあるけど、まあ時間の制約もあるし……。
条 ひとまず、紙面とオンラインの活字に限定するっていう流れでいいですかね。時間も4分くらい経っているので、議論を次に移さないと。
海 そうですね。じゃあ中学生から30代までで、この人たちに読んでもらうためにどうすればいいか考えればいいかな?
条 そうだね。じゃあそういう意味ではマーケティングとかを考えていけばいいって方向かな。そしたらここからは大喜利タイムなので(笑)。アイデア出しですかね。
一同 (笑)

日 これ議論を破壊しちゃうかもしれないんですけど、「克服すべきか?」っていうのは、若者に活字を読ませるってだけじゃなくて、読者が減っても経営的には生き残れるようにするっていう選択肢もあるような気がするんですけど、どうですかね?
眞 YouTubeチャンネルとかに活路を見出すってこと?
日 それもあるし、単純にコストカットとか、キャッシュポイントの多角化とか。
条 いい視点ですね。さっきの「新聞は古い!」のマイナスを取り返しているんじゃないですか(笑)
日 (笑)
海 いいですがちょっと曖昧ですね。どう多角化していくか。
条 とりあえず施策を考えますか。
(30 秒ほど沈黙が流れる)
日 考えるの難しくなっちゃいそうなので、最初の活字を読ませるマーケティングの話に戻りましょうか。
(一同 賛成)
海 やっぱり若年層ってなるとSNSとか?動画とかそうなってくるんですかね。
条 そうなってくるとテレビ局とのつながりとかも大事なんじゃない?
日 確かに。TBSと毎日新聞みたいに、テレビ局と新聞社で関係が深い部分もあるので実現可能性は高そうだけど、それが新聞社の生き残りになるかっていうとちょっと疑問符がつくかもしれないですね。
眞 でも、ワンシーンだけ切り取ってYouTubeに投稿するみたいなやり方はできるんじゃない?
条 フルでの動画はオンラインの記事に誘導して、みたいな?
眞 そうそう。
日 それこそショート動画とか。
条 それだったらYouTubeである必要すらない。長い動画ですら最近は見られなくなってるから。
海 なるほど、そうなんですね。
条 そういう意味では1番若年層に刺さる、強いものはTikTokだと思います。
日 でもこれ、じゃあそうやってTikTokなどで若年層集めたとして、どう収益に結びつけるかわからないのが僕的には難しいと思うんですけど。YouTubeの収益とかもすずめの涙だろうし。
条 だから、これはもうマーケティングとして、つまり100人視聴して1人が課金にたどり着いてくれるとすれば収益にも結びつくと思う。広告を自分たちで作っているイメージ。
日 なるほど。
条 残り5分ほどなのでまとめにかかりましょうか。
(一同 議論の整理を始める)
海 まあ活字だけに頼ってられないので、TikTokをはじめとしたSNSで広報活動をすることで、本業の新聞記事販売の収入増につなげるって感じですかね。
条 で、なんでTikTokなのかってのにも触れて置けるといいかな、一応。プラットフォームとして。
一同 確かに。
眞 まあ若年層が1番見るから?
海 ところで関係ないですけど皆さんTikTokって見るんですか?
日 僕はインストールしていないです。
眞 私も見てない。
条 まあここにいる人間を若年層のサンプルにするのはデータが偏りすぎるか。
一同 (笑)
条 Twitter(現X)でバズった店はそこまではやらないけど、TikTokだとバズるみたいな違いもあるみたいだし、まあTikTokでいいんじゃない(笑)
乃 あと1、2分で発表お願いします〜
条 やっぱ発表大事ですからね〜、練習したほうがいいんじゃないですか(目下就活中の眞へ目線を向ける)
眞 やるか〜、え、でも怖いな〜(笑)
条 まあ仮にここまで喋らなくても、発表でちゃんとできれば「この子ちゃんと議論分かってるんだ」って面接官に思ってもらえるかもしれませんし。
日 ちなみに発表って1人じゃないといけないんですか?
条 まあ1人じゃなくてもいいけど、2人以上で成功したのを見たことはないです(笑)
乃 じゃあお願いします。
眞 はい、では私から。お題に対して、「中学生から30代が最も時間を費やすであろうSNSであるTikTokを活用し、短い映像で興味を引いて記事へ誘導する。なお、テレビ局との違いは、映像だけで完結せず新聞の長文記事につなげる点で、両者のノウハウを掛け合わせ相乗効果を狙う」という戦略に落ち着きました。
乃 ありがとうございます。では、1点質問を。聞いててわからなかったのは、TikTokでのマーケティングということだと思うんですけど、それが結局どれだけ購買に結びつくのか、その根拠が少し薄いな、というふうなところで、そこについてどうお考えですかね。
眞 オンラインサービスって有料記事もあるけど無料もあるし、PV数で広告収入を得られるし、認知を高めるだけで新聞社としてはうまみがある、って考えました。
乃 なるほど、ありがとうございます。グループディスカッションは以上です。
第2部 お悩み相談会
──院進するつもりだが、それでも3年の夏でインターン行ったほうがいいのか?
条 行ってみると面白いですよ。社会の雰囲気知れるし、うまい弁当タダで食えるし(笑)
乃 報奨金が出るような会社もあるみたいですよ。
眞 行って損はないと思う。それに意外な部署の方が面白いかも。鉄道会社の広報部に行ったはずなのに初日は日経新聞とかテレ東の取材班と付きっ切り。「どの業界のインターン来たんだろう」って(笑)。でも広報はダイヤ管理、運転手から街づくりまでいろんな部署から人が集まっているから幅広い分野の話が聞けたな。
海・日 なるほど。
眞 それから大学の授業の内容も身近になった。自分の志望分野で起きた事件に出会ったりするから。例えば「点字ブロックがない駅で人身事故があって賠償沙汰になった」みたいな事例はなかなか忘れない。そうすると内容も残りやすいから一石二鳥。
条 東大新聞の同期にも、もともと院進する予定だったんだけどインターン行ってみて、存外面白いから就活もしたって人もいる。そいつから自分もインターンとか誘われたこともある。就活って抵抗ある人もいるし、嫌なイメージを持ちがちだけど、やってみると案外新しい視点が得られるから、ためらわずにとりあえずやってみるのはいいことなんじゃない?
海 ためになります。食わず嫌いせずにいろいろやってみようかな。でもやっぱり就職しなくて済むならそれがいいな……。
乃 でもお金はいるでしょ(笑)
条 ただ、某新聞社のインターンでは、記事を作成してみようって内容で、たまたま東大教授にインタビューすることになって、東大新聞となんも変わらんかった(笑)
一同 (笑)
──エントリーシート(ES)が難しい。親とか友達に相談したり書き方講座みたいな動画に目を通したりして理解したつもりになるが、書き始めてみるとどう書けば良いのかよく分からなくなってくる。
日 親世代だとちょっと視点が違ってくる気が。
眞 それは感じる。例えば東大新聞で役職を務めた話をどうアピールするかでも、同期と親だと微妙に答えが変わってくる、とか。
条 俺はESは「面接官に有利な質問をさせるためのもの」だと思ってる。書類選考を通るためっていうより、本番面接で相手が手元に持って読むから、そのときに都合よく喋りたい部分に誘導するといいとか。
眞 なるほど。じゃあむしろ、ES通すぞって気持ちで書くとむしろ落ちちゃうのか。
条 アピールばっかりで、まとまりがなかったり、突っ込みたい質問がないESはむしろダメかもね。
眞 業界ごとにころころ視点を変えすぎていたのかも。自分のやりたい軸を意識してやってみます。
──そういった意味では、面接で面接官が何を見ているか、というのも気になるポイント
乃 企業が見たいのは、肩書きや経験してきたこと自体というよりも、どういう人間性だったのかとか、その役割の中でどう成長したかとかだと思いますね。
眞 というと?
乃 リーダーシップの発揮の仕方にしても、牽引するのか場を活性化して周りを生かすのかは、環境にもよるしその人自身の人間性とか考え方にもよるじゃないですか。それは「私はこういう人間なんだ」というアピールの一つの道具になるし、その中で例えば「最初は引っ張っていこうとしたけど上手くいかなくて、反省の中で長所を引き出す方が場や自分の性格にもあっていると思った」といった試行錯誤や気付きがあったのだとしたら、それは役職を経験する中で明確に生じた成長になりますよね。そうやってエピソードを軸に自分の人間性とか成長可能性をアピールする場なんじゃないかな、と思っています。新卒採用って即戦力採用じゃなくて、ポテンシャル採用なので。
条 そうね。それでさっき言ったみたいに、やみくもに自分の実績とかをアピールするんじゃなくて、「こういう質問をしてほしい!」という意識を持って、じゃあその質問をしてもらうためにはどうすればいいか、という気持ちでESを書けばいいんじゃない?あとは、ESと数回の面接で全部お互いのことを理解し合うなんて無理なんだから、やったことを絞って伝えるってのもいいかも。役職って半年とか1年とか長いけど、その中でも極端に濃かった2週間にフォーカスしたり。限られた時間の中で伝えるためにそういった戦略を取るのは自分もやってました。
眞 なるほど。確かに小粒な経験をぽつぽつ書くよりも自分にとって印象が強い経験一つに絞ってアピールした方がまとまりやすいかもしれませんね。
乃 質問はこんな感じですかね。何か感想とかある方。
日 院進するつもりだったので正直何も考えていませんでしたが、自分の将来を立ち止まって考える機会として、少し目を配ってもいいかなと思いました。
海 私はやっぱり就職したくないですけどね。
一同 (笑)
自分の将来を熟考し、選択を迫られる大学生の時期。就活にせよ院進にせよ、各々が一度立ち止まって考える機会として、座談会は終わりを迎えた。