浅野倫子准教授(立教大学)と横澤一彦教授(人文社会系研究科)らは21日、特定の文字から特定の色を想起する「色字共感覚」で、各文字についての知識次第で想起される色が変わると発表した。色字共感覚と言語処理の間の密接な関係が明らかになり、人間の多様な認知処理の仕組みの全貌解明に寄与する。
特定の音を聞くと特定の色を想起するなど、ある一つの刺激が本来それに対応しない感覚を呼び起こす現象を、共感覚と呼ぶ。中でも文字自体の色とは別に、個々の文字に色の印象を受けることを「色字共感覚」といい、人口の1〜2%が該当する。同じ文字でも共感覚色は個々人で異なり、各文字にひも付けられる色は変わりづらい(時間的安定性が高い)とされてきた。
近年、桜という文字から薄ピンク色を想起する人が多いなど、文字の読みや意味といった知識が共感覚色を左右する場合が多いと判明。既知の文字の新しい読みや意味を覚えることで、共感覚色も変わる可能性が提唱され始めた。しかし、従来は共感覚色の時間的安定性の高さが注目されやすく、共感覚色が変わる可能性は未検証だった。
今回は日本語を母語とする成人の色字共感覚者に、既知の漢字について、未知の中国語での読みや意味を暗記させた(図)。結果、新しい読みや意味の学習によって、その文字の共感覚色がわずかに変わった。一方、新しい知識を学ばなかった文字では共感覚色の変化は見られなかった。
この記事は2019年10月29日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。
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