文化

2023年9月24日

【気軽に入れる出会いと挑戦の場 「しゃべランチ」の世界へようこそ】②フランス語でしゃべランチ編

 

昼休みの時間に行われている「しゃべランチ」を知っているだろうか。昼食をともにしながら他の学生や教員などと対話をするイベントで、いくつかの種類がある。新型コロナウイルス感染症の影響で規模が縮小されていたが、徐々に再始動している。今回、しゃべランチの運営に携わる人々を取材。しゃべランチの種類や、それぞれで「しゃべる」内容、魅力を探った。(構成・山口智優、取材・山口智優、金井貴広、丸山莉歩)

 

【①概要・教授としゃべランチ編】はこちら

【気軽に入れる出会いと挑戦の場 しゃべランチの世界へようこそ】 ①概要・教授としゃべランチ編

 

フランス語でしゃべランチ──誰もが安心してしゃべれる自信醸成の場

 

フランス語でしゃべランチ

 

 「フランス語でしゃべランチ」では、学生たちが各自持ち込んだ昼食を食べつつ、フランス語の会話を楽しむ。途中で入退室したり席移動して話し相手を変えたりできる自由な環境だ。本年度Sセメスターの参加学生は平均50人ほどで、教員やアシスタントの大学院生も各1〜2人加わる。雰囲気は活発で、外の人には「うるさい」とすら思われていそうだと運営者のアガエス・ジュリアン特任准教授(東大大学総合教育研究センター)は笑う。

 

アガエス・ジュリアン特任准教授
アガエス・ジュリアン特任准教授
(東京大学大学総合教育研究センター)
22年仏トゥールーズ第2大学言語教育フランス語教員養成課程修了。博士(言語教育学)。長崎外国語大学特任講師を経て、16年より現職。

 

 2016年の東大着任時に企画を始めた。参考にしたのは前任校で別の教員が実施していたプログラムだ。「参加していた学生が楽しそうだったので、東大でも行いたいと思いました」。フランス語・イタリア語部会の教員らの反応も好意的で、着任年のAセメスターには開催にこぎ着けた。当初の参加者は15人程度だったが、年度を重ねるごとに参加者は増加。「フランス語の先生方に学生への宣伝をお願いしています。授業を通じた呼び掛けの効果で認知度が上がっていると思います」。2年目からは12月にクリスマスに合わせたイベントを行い、お菓子や本をプレゼント。7年目の本年度からは、7月にもパリ祭(フランス革命記念日)にちなんで同様のイベントを実施する。

 

 参加者のフランス語の学習背景はさまざまだ。高校時代に学んだフランス語を少し話してみたい人や、学習歴はほぼなく友達の付き添いで来る人もいる。日本語混じりの会話もしばしば聞こえるが、アガエス特任准教授も学び始めはそれで良いと考えている。「Comment tu t’apelles?(君の名前は何ですか)」「Où vis-tu?(どこに住んでいますか)」といった定型表現だけでも、知らない人と話し、聞いてみることが大事だと話す。「授業や友達同士の練習の枠を超えて話していくことで、自信やエンパシー(共感)を養っていくことができます」。一方で中・上級者は歴史や哲学について話したり、フランス留学に関する情報交換をしたりしている。コロナ前は火曜日に中・上級者向けのしゃべランチも実施していた。今後復活する可能性もあるという。

 

フランス語でしゃべランチの様子
机を挟んでしゃべり合う(写真はアガエス特任准教授提供のものを東京大学新聞社がモザイク加工)

 

 言語教育を専門とするアガエス特任准教授は、しゃべランチを「心理的安全性」がある場にすることを意識していると話す。授業だと緊張する学生であれ、フランス語力に自信がない学生であれ、誰もがリラックスしながらフランス語を話せる・楽しめるよう工夫するということだ。例えば「あの人と話したことある?」といった声掛けを明るく行う。自信を育むのにかかる時間は人それぞれのため、無理に主体性を求めず、誰もが楽しめる雰囲気を目指しているという。

 

 参加者に笑顔が目立ち、リピート率も高いことから、学生に楽しんでもらえているとアガエス特任准教授は感じている。「フランス語をもっと勉強したい、他の人と話したいという人はぜひ楽しみに来てほしいです。『やってみよう』から自信をつけていってください」

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