大ヒットを記録し社会現象にもなった『ポケットモンスター』シリーズ誕生から20周年を迎えた2016年。日本科学未来館(東京・お台場)で企画展「GAME ON~ゲームってなんでおもしろい?~」が開催されるなど、改めて「ゲーム」に注目が集まっている。東京大学新聞社は現役東大生(院生も含む)を対象に、ゲームに関するアンケート調査を実施。総計357人から回答を得た。「ゲームをすると頭が悪くなる」とも言われる中、東大生のゲーム事情に迫る。
《調査方法》
2016年2月25~27日に調査を実施。事前に了承を得た現役東大生(院生も含む、所属は当時)総計357人から、ウェブフォームを用いて回答を得た。「ゲーム」とは電子機器(テレビ・ゲーム・パソコン・携帯電話など)を用いたもののことを指す。回答者の男女比および文系・理系の比率、学年は以下の通り。
理系
文系
計
男性
171
75
246
女性
46
65
111
計
217
140
357
小学校時代のルール「なし」が最多
「小学校時代にゲームに関するルールがあったか」を聞いたところ、全体の約44%に当たる158人が「なし」と回答した。その中で小学校時代にゲームを全くやっていなかったのは43人。残りの115人は特にルールを決めずゲームで遊んでいたことになる。
「親など家族と、ゲームとの関わり方について話し合ったか」を聞くと、「はい」と回答したのは全体の約55%に当たる196人。話し合いをした196人に「ゲームとの関わり方は、最終的には誰が決めたか」を尋ねたところ「親が決めた」と答えたのは約42%の82人。残りは「自分で決めた」「決めていない」「何となく決まっていた/分からない」と答えた。話し合いをした196人のうち約20%に当たる40人は「小学校時代にゲームに関するルールはなかった」と回答。親から一方的にルールを押し付けられるような関係ではなく、子供が主体的にゲームとの考え方を見いだす様子が推察できる。
熱中した時には自分の意志でトコトン突き詰める姿勢の現れなのか「最長で1日何時間ゲームで遊んだことがあるか」を聞いたところ、約22%に当たる80人が「12時間以上」と答えた。
小6のゲーム場所「リビング」が65%
小学6年生の時に最もゲームをしていた場所を聞いたところ、リビングでゲームをする人が一番多く、ゲームをしていた人全体の約65%を占めた。
「ゲームの話題を通して親睦が深まった」(理系・男性・3年)や「親が私の為に買ってきたゲームに親の方がはまっていた」(理系・女性・2年)など、コミュニケーション・ツールとしてゲームを活用する姿がうかがえる。中学3年生では約43%、高校3年生では約36%と歳を重ねるにつれて割合は低下していくが、それでもなお比較的多くの人がリビングでゲームをしていたと分かった。
人気ソフトはポケモン・スマブラ・モンハン
「好きなゲームソフト」を聞いたところ、『ポケットモンスター』『大乱闘スマッシュブラザーズ』『モンスターハンター』シリーズが上位を占めた。
理由について『ポケットモンスター』は「流行っていた」(理系・女性・1年)という意見が非常に多く、やりこみ要素の豊富さを評価する声もあった。『大乱闘スマッシュブラザーズ』『モンスターハンター』については「多人数でワイワイやれる」(文系・男性・1年)、「爽快感がある」(理系・男性・2年)などの意見が目立った。
DS・ゲームボーイを7割が所有
「所有していた/しているゲーム機」を聞いたところ、約93%に当たる332人が何かしらのゲーム機を所有した経験があると分かった。最も回答数が多かったのは「ニンテンドーDS」で、僅差で「ゲームボーイ/ゲームボーイアドバンス」が続いた。所有率はそれぞれ約70%と約69%。その後は「Wiiシリーズ」「PlayStationシリーズ」「ニンテンドーゲームキューブ」など、テレビと繋いで使用する家庭用ゲーム機が続いた。
9割が「今後もゲーム機は残る」
「スマートフォンを所有している」と答えた352人のうち、約57%に当たる200人が「スマートフォンで日常的にゲームをする」と答えた。そのうち36%が、1日平均1時間以上スマートフォンでゲームをしている。本調査でもほぼ全員が「所有している」と答えるなどスマートフォンの普及が進む中、ゲームへの新しい関わり方が確立されつつある。
そんな中で「スマートフォンが今後さらに普及してもゲーム機は残ると思うか」を聞いたところ、全体の約89%に当たる319人が「はい」と回答。理由を尋ねたところ「スマートフォンにはボタンが無いため、操作性に限界がある」(文系・男性・2年)、「大画面の迫力を欲している自分のような人がいる」(理系・男性・3年)のように、専用のゲーム機ならではの強みがあると捉える意見が目立った。
一方「いいえ」と答えた人からは「無料のゲームで満足する人が多くなると思う」(理系・男性・3年)という声や「スマートフォンがゲーム機と同じ機能を持つ日はそう遠くなさそう」(理系・女性・1年)と今後の技術革新でゲーム機の優位性が崩れていくという指摘もあった。
東大の志望動機は「ゲーム」
「ゲームに関して印象に残っているエピソード」や「ゲームから学んだこと」を聞いたところ、ゲームからさまざまな刺激や知見を得ている一面が浮かび上がる。
- 中学3年生の時に『ファイナルファンタジー』をレベル1キャラ一人で全ボス攻略するという記事を見つけ、そこで東京大学ゲーム研究会の存在を知り、東大を目指した。(理系・男性・2年)
- 『逆転裁判』や『逆転検事』がきっかけで現在司法の道を目指している。(文系・女性・1年)
- 幼稚園の時に「今度会ったらまたポケモンしよう」と約束していた友達と高校で再会して、実際またゲームをした。(文系・男性・2年)
- インフルエンザにかかったとき受験直前だったが勉強をせず一日中『モンスターハンター』をして遊んだ。一時の開放感を楽しんだ。(文系・女性・2年)
- 『無双』シリーズや『信長の野望』シリーズは歴史に対する興味の緒になり、『大神』は日本神話への誘いをうけた。『もじぴったん』からは語彙力を貰ったし『リズム天国』からはリズム力を貰い、ドラムに役立っている。(理系・男性・1年)
- 現在のレベルでは勝てない敵を倒したいときに、自分のレベルを上げる、弱点を探す、仲間を作るなどの行為をすることは、ゲームだけでなく、現実の勉強にも応用可能。(文系・男性・1年)
- 女の子との会話方法を、だいぶマスターした。機会があれば実践していきたい。(文系・男性・1年)
コミュニケーション・ツールとして、大学受験のきっかけとして、さまざまな視点でゲームに向き合う東大生。「ゲームをすると頭が悪くなる」と単に切り捨てるだけでない姿勢が垣間見えた。
(取材・文責 石原祥太郎)
現役東大生へのアンケート記事→ 東大生の65%が習っていた習い事とは?