2016年度から、多様な人材の獲得を目的として導入された「推薦入試」。ペーパーテストが主な評価対象となる一般入試とは異なり、小論文や面接などが課されており、毎年個性的な学生が推薦入試を利用して入学します。そんな彼らを一人一人取材するのが本連載「推薦の素顔」。東大に新たな風を吹き込む彼らに、あなたも触れてみませんか。
小学生の頃から家にあった地学関係の図鑑を読んで「自然の力だけで美しい鉱物の結晶ができることに、神秘を感じていました」。中学では地学部に入り鉱物の採集や地層の見学を開始。中・高で100以上の観察地点に出掛けたという筋金入りの地学好きだ。
地学部の活動の中でも特に力を入れたのが、高1から高3の春まで続けた研究。神奈川県三浦半島の「初声層」の形成年代を特定することを目指して、初声層に含まれるナノプランクトンの化石の発見に挑戦した。
東京の自宅から片道2時間かけて初声層へ行き、ひたすら歩いて化石が含まれる可能性のある泥岩層を見つけて地層の一部を持ち帰る。持ち帰った試料を不純物と化石に分離する作業は、遠心分離機などを用いる行程を約30回繰り返すため1カ月半ほどかかる。この試料採取と分離作業を計15回行い、いくつかの試料からは化石のようなものが出たが、化石の保存状態が良くなかったこともあり、挑戦は成功しなかった。しかし「自分のやりたいことができましたし、根気強さも付きました」と笑顔で振り返る。
推薦を目指した契機は高3で地学オリンピックの世界大会に出場したこと。元々東大を目指していたところ世界4位の成績を収め「推薦で受かるかも」と感じた上、1年次から研究に触れられるという制度に引かれて受験を決めたという。
現在は地文研究会地質部に所属。週末の実地調査では糸魚川などに出掛け、金曜日の午後10時に東京を出て日曜の午後8時に帰るハードスケジュールをこなす。地質への興味は健在で、将来は岩石の研究によって地震や火山噴火のメカニズムを解明したいと話す。災害大国日本を救うのはこの人かもしれない。
(取材・撮影 児玉祐基)
この記事は、2017年8月1日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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