推薦入試第1期生(現3年生)77人のうち、6人が入学時に決まっていた進学先と異なる学部学科へ進学していたことが本部学務課への取材で分かった。学部長の許可を得れば進学予定を撤回し進学選択へ参加できるとの全学的方針がある一方、実際の対応は各学部の判断に委ねられている実態も判明。全10学部中7学部は進学予定の撤回を認める方針を示したが、うち方針を進路決定前に周知したのは教育・教養・薬学部だけだった。(取材・太田聡一郎)
全学的には受入学部への進学予定「撤回可」 、対応は各学部に一任
本部学務課によると、推薦第1期生による進路変更の内訳は学部の変更が4人、学部は変わらず学科のみの変更が2人(表1)。「進学選択の結果、皆第1志望の進学先へ内定したと認識している」という。
そもそも、なぜ推薦生が進学選択へ参加できたのか。本部学務課によると推薦第1期生が入学したばかりの2016年4月、「受入学部における指導体制の中で意志などを十分に確認した上、受入学部の審査により進学予定の撤回を認めることがある」とする全学的な取り扱い(表2)を決定。どんな基準で撤回を許可するかは各受入学部の判断に委ねられた。撤回が許可された推薦生は一般学生と同様の条件で進学選択に参加し、内定できず留年・降年となった後も一般学生と同様の扱いとなった。
決定の背景には「例えば国費留学生はあらかじめ進学予定学部が決まっているが、変更を希望する場合はルールに基づいて認める場合があり、推薦生についても同じような取り扱いを定める必要がある」との判断があったと本部学務課の担当者は語る。各学部からも強い反対はなかったという。
ただ、個別の対応は各学部に任せており、各学部の運用は18年現在まで「本部としては把握していない」という。推薦生の進学先について、本部は2年次5月に各学部から報告を受けて初めて把握する。そのため実際に進学先を変更した6人以外にも、進学先を変更したかったが学部に認められなかった、または認めていたが周知されなかったために知らなかった第1期生がいた可能性は「否定できない」とのことだ。事実、本紙の調査では、進路を変えたかったが入学時に決まっていた受入学部へ進学・内定した学生が確認された。
各学部の方針、推薦生への周知の不徹底目立つ
では、各学部はどんな取り扱いを定めているのか(表3)。進路変更をした第1期生が所属していた4学部のうち、教養学部は「前期教養課程におけるさまざまな学習で学問領域の興味に強い変化があり、進学先を変えることが適切である場合があると判断されたため(撤回を認めた)」と学生の意思重視の方針を提示。一方教育・理学部は全学的方針の尊重を理由に挙げるにとどめた。ただ進路変更者がいない学部も「しっかりした理由があれば認めている」(工)、「撤回理由により個別に判断」(薬)などと答え、撤回希望者の個別の理由を重視する志向性は多かれ少なかれ各学部に共通していそうだ。
変更手続きも、各学部で表現や順序は異なるが①進学先撤回届の提出、②各推薦生に付くアドバイザー教員との相談・面談を設定する学部がほとんど。手続きは18年度現在も変わっていないという。一方で、進学予定の撤回を認めるかという学部の方針を進路決定以前に推薦生へ周知していたのは、2年次4月に通知した教育・薬学部、1年次2月下旬の面談で伝えた教養学部のみ。経済・文学部は学生から申し出があって初めて対応するとした。
またSNS上では、推薦第1期生には進路の変更を認めた法学部で、推薦第2期生は進路を変更できなかったとの情報が取りざたされている。本件について本部学務課は「把握していなかった」としながらも、「17年度には進路変更を認めていた学部が、18年度は一律に認めなくなるということは考えにくい」と評価する。一方法学部は、法学部に所属していた推薦第1期生が他学部へ進学したことは認めたが、それに至る学部内での検討状況と進学辞退希望者の存否については、回答を見合わせた。
推薦生が進学先を変更することについて、本部学務課の担当者は「募集要項上も出願時の志望学部へ進学すると明記されているので、進学先の撤回は例外的な取り扱い」とした上で「一般入試の学生と接し進学先を変えたくなる推薦生の気持ちも、入試実施から入学後の指導体制まで対応しているので推薦生には予定通り進学してほしいという学部の心情も理解できる」と語る。今後の方針については「問題が生じたら改善したいが、今のところ取扱いを変更する予定はない」とするにとどめた。
この記事は、2018年6月26日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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