スポーツニュース

2023年10月19日

【東大水球】七大戦、準優勝で連覇ならず 試合を分けた第3Q

 水泳部水球陣は8月26、27日、栃木県立温水プール館で開かれた第62回全国七大学総合体育大会(七大戦)に出場し、準優勝を収めた。大阪大学との準決勝は後半に地力の強さを見せつけ6―3で勝利したが、東北大学との決勝では個人技で勝る攻撃陣を止めることができず、5―8で敗れ、連覇を逃した。(取材・新内智之、川北祐梨子、清水央太郎)

 

準決勝、大阪大学戦 スタミナ見せつけ快勝

 

東大|0222|6
阪大|1200|3

 大会初日、総当たり戦で行われた予選をトップ通過した東大。勢いそのままに序盤から持ち味を発揮し、守りからの速攻で相手ゴールをたびたび脅かす。しかし阪大の粘り強い守備に苦しみ、シュートがポストを叩く不運にも見舞われなかなか流れをつかむことができない。両者一歩も譲らない展開の中、第2クォーター(Q)終了間際にはセンターライン付近からのロングシュートを決められ、1点ビハインドで前半2Qを終えた。

 後半戦、追いつきたい東大は第3Q冒頭、カウンターから相手キーパーとの一対一を演出しペナルティースロー(サッカーでいうPK)を獲得。地元・宇都宮東高校出身の渡邊魁(理I・1年)がゴール左に決め同点機をものにする。2分過ぎ、今度は経験豊富な笠間栄伸(工・3年)が魅せた。敵陣ゴールから6メートル付近でボールを持つとファウルを受けプレーが止まる。ここで相手ディフェンスが不用意に下がってできたスペースを見逃さない。リスタート直後、強烈なシュートをゴール左上に突き刺し勝ち越し点をもぎ取った。

 

渡邊 同点ゴール
第3Q、同点のシュートを決めた渡邊(撮影・川北祐梨子)

 

 勝ち越しを許した動揺か、ここから阪大の攻撃の手が止まり始めた。東大陣深くにパスを展開する場面が減り、攻め手を見いだせない。一方変わらない動きを見せる東大は、相手攻撃陣にぴたりと付き動きを封じる。ボールを奪うと、阪大守備陣を引き離し簡単に敵陣深くまで攻め込む。試合の主導権を握った東大は、第4Qにも川﨑祐輔(工・4年)のこの日3点目となる得点などで2点を加え、だめ押し。試合後半は阪大を無失点に抑え、決勝戦に駒を進めた。

 

永野 ダメ押しゴール
第4Q、東大6得点目となるゴールを決めた永野陽久(撮影・川北祐梨子)

 

決勝、東北大戦 プラン通りの戦い、第3Qに暗雲

 

東大 |2003|5

東北大|1223|8

 

 決勝の相手は東北大学。個人技に秀でた相手攻撃陣に対してキーパーの原田隆史(法・3年)がファインセーブを連発。守備陣も相手に体を寄せ満足な体勢でシュートを打たせず、チーム一丸となって耐える。攻撃陣もこぼれ球をつないで渡邊がゴールを決めるなど躍動し、第1Q終了時点で2―1と1点のリードを奪った。

 

笠間 一時勝ち越しゴール
1Q、一時勝ち越しとなる得点を決める笠間。この日笠間は準決勝で1得点、決勝で3得点の大活躍を見せた(撮影・川北祐梨子)

 

 第2Qは、ペナルティースローを止められるなど相手キーパーのファインセーブに再三阻まれ逆転を許す。それでも1点差で食い下がり、相手にパーソナルファウルも取らせていた。パーソナルファウルは退水(20秒間あるいは攻撃権の交代までの退場)が命じられたり相手にペナルティースローを与えたりする重大な反則のこと。パーソナルファウル3回でその選手は以後その試合に出場できなくなるため、パーソナルファウルが重なると終盤での思い切ったディフェンスが難しくなる。前半2Q終了段階で東北大は4人が2回のパーソナルファウルを宣告されており、終盤まで競った展開を維持できれば十分勝機はあった。

 

 命運を握る第3Q。開始2分、東北大オフェンスの突破を許しキーパーとの一対一を作られてしまう。絶体絶命の状況の中、原田が再びファインセーブを見せチームを救う。直後、今度は東大が攻め込みキーパーと一対一。しかし今度は相手キーパーのファインセーブに阻まれ絶好機を得点にできない。攻めあぐねている間に、東北大のふわりと浮かせる技ありシュートを決められ痛恨の失点を許す。これで余裕が出たのか、東北大の守備陣がより連携の取れた動きを見せる。東大は攻撃のテンポを封じられ、試合の主導権を失った。

 

原田 好セーブ
ファインセーブを連発するキーパー・原田(撮影・川北祐梨子)

 

 その後第4Qには笠間が複数得点を決めたり川崎にもゴールが生まれたりと東大も意地を見せたが、守備が東北大の攻撃を止められず。点差を縮められずに悔しい準優勝となった。

 

【コラム】水球ってどんな競技?

 

 コートの大きさはバスケットボールとほぼ同じで4クォーター(Q)制。「ショットクロック」同様に、シュートを放つまでの時間制限も定められている。自陣深くから直接最前線までパスが渡ることもあり、スピーディーな展開も瓜二つだ。

 

水球 バスケ 比較
水球のルールには5人制バスケットボールと似たものも多い(JOC、新潟県柏崎市、B.LEAGUEのホームページを基に東京大学新聞社が作成)

 

 一方で、ハンドボールのようなゴールが水面にあり、ゴールキーパーが最後のとりでとして立ちはだかる。さまざまな距離から鋭いシュートが左右に打ち分けられ、キーパーが俊敏に反応するゴール前の攻防はさながらサッカーのよう。水深2メートルと足が底に付かないのを忘れてしまいそうだ。

 

 驚くのは接触の激しさ。もっぱらパスコースを遮ろうとするサッカーやバスケットボールとは異なり、ボール保持者から直接ボールを奪い取る場面もしばしば。「水中の格闘技」の名にたがわぬ迫力満点の駆け引きが見られる。

 

牧野勇登監督のコメント

 

 今年度が始まる段階では試合に出られる部員が5人しかおらず、チームが組めない状況でした。入学前からの水球経験者の渡邊のほか、未経験者の新入部員を鍛え、全員が(大学以前からの)経験者である東北大学に善戦できたのは良かったですが、3連覇がかなわず(21年は代替大会)悔しいです。

 

 七大戦で今シーズンが終わるので監督としては最後の大会でした。来年に向けてまずは5月~6月にある(インカレ予選も兼ねる)関東学生リーグに照準を合わせて臨んでほしいですね。推薦入学者も在籍する自分たちよりレベルの高い大学に挑んでいってほしいです。

 

決勝で3得点を挙げた笠間選手のコメント

 

 3連覇を果たせなかったのが残念です。チームを勝たせるには力が及ばず。しかし、春の関東学生リーグでは水球歴1ヶ月の新入部員がスタメンになるほど深刻なメンバー不足だったところから、半年ほどかけてしっかりチーム作りができました。今大会では実力を発揮して、勝てる試合は勝つことができたので、良かったと思います。

 

 昨年とは異なり、現状でも3年生以下で7人を確保できるので、1年近くかけてチーム作りができます。来年は学生リーグや七大戦に向けて、格上相手に勝てるチームを作りたいと思っています。

 

地元・宇都宮東高校出身で2試合ともに得点を決めた渡邊選手のコメント

 

 後輩など知っている人がたくさん見に来た中で得点が取れたのは良かったですが、優勝を狙っていたので悔しいです。特に決勝でペナルティースローを外して相手に流れを渡してしまったのは不甲斐なかった。来年はチームを勝たせられるプレーをしていきたいと思います。

 

立て続けに好守を披露したゴールキーパー・原田選手のコメント

 

 準優勝という結果には満足いっていません。来年優勝します。主管校として優勝できず悔しいです。

個々が強くディフェンスを上手にいなしてゴールに迫ってくる東北大学の攻撃を前に、及びませんでした。チームリーダーとしては、全体を見て攻め方や守り方を変えるように声かけをせず流れを失ってしまったので、そこで一言発することができたらなと心残りがあります。

 

 来年の名古屋での七大戦で、優勝杯を取り戻します。

 

準決勝で3得点、決勝でも得点を記録した主将・川崎選手のコメント

 

 メンバー不足もあり春に新入部員が入ってからチーム作りが始まりましたが、七大戦が近づくにつれ連携などに手ごたえを感じていたので悔しいです。東大にはシュートが打てる選手と打てない選手がいますが、東北大学はそれをよく分かっていて、決勝の最後には東大が苦戦する守り方をしてきました。また、個人としては、決勝でもっと点が取れたかな、と思っています。相手が下がって守っているときに、焦ってシュートを打って外してしまった場面があったので。

 

 自分はこの大会で引退なので、来年は後輩たちに頑張ってほしいなと思います。

 

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