硬式野球部(東京六大学野球)は今年も多くの感動を届けてきた。特に秋季リーグ戦では7年ぶりの2勝を挙げ、思い出に残るシーズンとなった。そんな勝利を語るには欠かせない選手たちに、2024年の振り返りと今後の目標を聞いてみた。インタビュー3人目は捕手としてチームを引っ張ってきた杉浦海大選手(法・3年)だ。(取材・宇城謙人)
今秋のリーグ戦で勝利した2試合ではいずれも先発投手が九回まで1人で投げ抜いたが、常に捕手として投手を引っ張ったのは杉浦選手だった。
去年まで、リーグ戦での通算出場数はわずか1試合。しかも大差をつけられた試合の終盤での途中出場で、打席に立つこともできなかった。「このままではまずい」。悔しさを胸に、レギュラー争いに勝つと意気込んだ。課題はバッティング。SNSやYouTubeを駆使してさまざまな元プロ野球選手たちの球の待ち方を学び、情報の取捨選択をしつつ、試行錯誤を繰り返しながら自身のバッティングに生かした。
迎えた春。早大1回戦で初めてスタメン入り。その後は毎試合にスタメンで起用され続け、法大2回戦ではリーグ戦初ヒットと初ホームランをそれぞれ記録。しかも相手投手はリーグ屈指の好投手・吉鶴だった。「硬式野球部に入部してから、こういう(有名な)選手からヒットを打ちたいと思っていたので、練習してきて良かったなと思いました」と誇らしげに語る。
一気に出場機会を増やした春季リーグだが、捕手としての守備では反省する点があるという。「ランナーを進めないことが捕手としては大事」と語るが、投球を弾いたり、盗塁を許したりとランナーを進めてしまうことがあった。中でも自身が振り返るのは、立大1回戦。自身の前に転がった打球を投手とお見合いしてしまい、投手に捕球を任せた結果送球が乱れて相手に先制に許してしまった。「あの当たりは捕手が取らないとダメだし、それくらいの実力がないといけない。あのプレーがなければ勝てていたかもしれない」とチームの勝利のため、自身のレベルアップの必要性を改めて認識した。
夏はさまざまな面でレベルアップを図った。バッティングでは、直球を打ち返すことを目標にした。リード面ではベースを幅広く使うことを目指し、投手と共同で練習した。
厳しい練習を積んで迎えた秋季リーグは、チームに貢献しようという意識を高くして臨んだ。「東大の場合は守備からリズムを作っていくことが大事。投手を引っ張り、グラウンドを見渡せる位置にいる自分が崩れないように、焦りや慌てを見せないようにする」ことが自身の役割だと語る。自身初となる開幕スタメンの座をつかんだが、それはゴールではなかった。見据えるのはチームの勝利。もっとチームに貢献したいという思いを熱く語る。
秋季リーグでは春季リーグからさらに出場機会を増やし、結局11試合に出場。チームが挙げた「2勝」にも大きく貢献した。勝利した慶大2回戦では、うまく投手をリードできたと振り返る。「相手ベンチの雰囲気や打者の様子から相手のメンタルや相手の狙いを見定め、その時々でうまく判断しながらリードできました」
打撃では、勝利を挙げた試合でいずれも得点に絡む安打を放った。そこには改めて実感したことがあったという。「自分はバッティングがもともと苦手なんですけど、その自分が打たなければチームは勝てないんだって」。チームに貢献しようという姿勢で取り組んできた鍛錬が報われたときだった。
最終学年となる来年はキャプテンとしてチームを引っ張る。「説得力のあるキャプテンになろうと思います」。チームを引っ張るため、プレッシャーの中でも成績を残すことを誓った。具体的な目標は同期の中で4人目となるベストナイン。「ベストナインを取るくらいの活躍をして、チームを勝ちに導きたい」。やはりここでも根底にあったのは「チームのため」という意識の高さ。どのような活躍を見せるのか、期待が膨らむ。