本郷では、進路指導の一環なのか、キャンパス訪問中の中高生をよく見かける。記者も高校生の時、本郷キャンパスを訪れたことがあり、その時見た光景は今でも忘れられない。頭の良さそうな大学生が、キャンパスを闊歩(かっぽ)し、安田講堂前の草原で談笑している……。キラキラ感と希望にあふれて見え、うらやましく思ったものだ。
だが、自分が実際に大学生側の立場に立つと、実は高校生から見ている印象とは全く違い、東大生たちは苦悩し、憂え、もだえていることが分かる。特に、卒業を控えて学生気分のままではいられない後期学部生には顕著だ。その心境を赤裸々に語ってもらった。
Aさん(法・4年)は東大に入学して4年間、恋人が一人もできていない。22年間、恋愛とは縁遠い人生を送ってきた。「高校生の時から『自分に彼女は無理だ』と諦めていました」とAさん。「だけど、いざ大学卒業も近くなり『自分は一生独身かもしれない』という事実が現実味を帯びてくると、泣きたくなります」
180㎝を超す身長に、眼鏡の奥のつぶらな瞳。性格も温厚なAさん。恋人ができないようには見えないが、何が問題なのだろう。
「出会いを求めてこなかったこれまでの消極的な学生生活が悪いんです」。東大は男子学生の割合が8割と、女子学生の割合が少ない。男子学生にとっては、積極的に交流の場を見つけていかないと、異性と話す機会が乏しくなりがちというのが現実だ。
Aさんは武道系の部活と、出版系のサークルに所属しているが、共に女子部員は多くなく、交際に発展した出会いはなかった。もし、もう一度大学入学時からやり直せるとしたら「サークル選びで、もっと異性と交流する機会を積極的に確保しますね。今の状態は悔やんでも悔み切れません」。
***
この記事は、2018年8月に東京大学新聞社が発行した書籍『東大2019 東大オモテウラ』からの転載です。書籍ではこの他にも、さまざまな後期学部生の悩みを紹介しています。
『東大2019 東大オモテウラ』は現役東大生による、受験必勝法から合格体験記、入学後の学生生活のアドバイス、後期学部への進学、そして卒業後の進路に至るまで解説したガイドブック。東大受験を考えている高校生や中学生の皆さんにお薦めです。