日本最難関の東大入試を突破する。それは、受験生にとって一世一代の「たたかい」である。長きにわたる過酷なたたかいに、現役東大生たちはどう挑んだのか。彼らの成功と失敗から、東大入試のたたかい方を学ぼう。
理Ⅱ・男子・首都圏私立出身・2浪
悪循環を断てず
私は元来、自分のペースで勉強を進める方が好きでした。特に好きなのは、答え合わせよりも問題を解くこと。面倒な丸付けを後回しにして解き進めるという形を続けていました。問題が溜まると余計丸付けする気がなくなるという悪循環ですね。そんな勉強法を直すことができませんでした。
自分の意志をしっかりと持てていなかったことも不合格の要因でしょう。学校の自習室で勉強していても、同じ方面に住む友人から声を掛けられると釣られて下校ということがよくありました。自宅での勉強開始時にも意志の弱さに苦しめられました。例えば夕食後に勉強すると決めていても、食休みの名目でのんびりしていたら寝る時間になり、やるべきことを翌日に回してしまう。これをひたすら繰り返していました。
現役時は理Ⅰに出願。2次試験1日目は順調に終えたものの、2日目の化学でつまずきパニックに。受験後は合否のボーダーにいるだろうと思っていましたが、結果は7点差で不合格。東大を諦める気はなかったので、浪人して再受験するのは自然な選択でした。
浪人生活を始めたが……
浪人生活1年目は、大手予備校の東大受験専門校舎に通うことに。ただ、1年目の受験で期待以上の点数が取れたこともあり、好きな授業だけを受けるといった具合でした。特に数学の勉強を怠り、本番ではほとんど対応できず、5点差でまたも不合格。ここまで来ると半分ヤケでした。
浪人生活2年目は仮面浪人でしたが、前期の授業終了と同時に籍を置いていた私立大学を退学。気分を変え勉強する気になるよう近くの喫茶店に通う日々を過ごしました。理系科目に力を入れた他、センターで苦手だった地理に見切りを付け、世界史を開始。世界史がとにかく楽しく、全体の4割程度の勉強時間を割きました。センターでは、世界史の97点をはじめ、おおむね満足いく点数を取れました。
迎えた3度目の東大受験
出願先に悩んだ末、前の2年とも合格点に達していた理Ⅱに出願。2次試験前の2週間は、人生最大の虚無感が私を襲いました。よく分かりませんが、楽しかった世界史の勉強がなくなってしまったことや、志望の変更で緊張感が薄れてしまったことに理由があったのかもしれません。勉強に身が入らず、寝て起きてはスマホをいじる毎日を過ごすことに。勉強を再開したのは、危機感が込み上げてきた2次試験前日。現代文や数学の過去問を解き、当日の休み時間にも過去問を見て解法を確認。数学が易化したことが救いでした。結果は合格最低点を優に超えての合格。自宅で合格者番号を見たときはとにかくほっとしましたね。
私が受験を通じて学んだのは、人の性格は簡単には変わらないということ。自分の人となりを考えて、それに合った勉強を心掛けるべきです。怠惰ならば怠惰なりにあえて外に出て勉強するなど、自分ではなく環境を変えてしまうのが一番だと思います。
―私が不合格だったのは―
①問題を解きっ放しに
②意志の弱さを変えられなかった
③危機感なく浪人1年目を過ごした
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この記事は、2017年8月に東京大学新聞社が発行した書籍『東大2018 たたかう東大』からの転載です。本誌に収録された3人の不合格体験記のうち、1人分を抜粋しました。
『東大2018 たたかう東大』は現役東大生による、受験必勝法から合格体験記、入学後の学生生活のアドバイス、後期学部への進学、そして卒業後の進路に至るまで解説したガイドブック。東大受験を考えている高校生や中学生の皆さんにお薦めです。大河ドラマ『おんな城主 直虎』脚本家・森下佳子さんへのインタビューなど、読み物記事も充実しています。
【東大2018】