日本最難関の東大入試を突破する。それは、受験生にとって一世一代の「たたかい」である。長きにわたる過酷なたたかいに、現役東大生たちはどう挑んだのか。彼らの成功と失敗から、東大入試のたたかい方を学ぼう。
文Ⅲ・男子・首都圏私立出身・現役
苦手教科もある程度得点できる実力を
「どうせならレベルの高い大学を目指そう」と思い東大を志望しました。高2の4月、吹奏楽部引退後の10月からでは間に合わないと考え受験勉強を始めました。高校受験不要の中高一貫校だったのでロクに勉強していなくて。定期試験も一夜漬けに頼っていたので、特に数学は教科書の例題と同じ解法の問題しか解けず、それすら試験後すぐ忘れてしまうありさまでした。
そこで、数学は基礎から対策し基本問題を何度も反復しました。2カ月に一度の模試で、理解度を定期的に確認できたのが良かったですね。高1では2科目計50点未満だったセンター試験の得点が、高2の12月には150点を超えるまでに。東大入試ではセンター試験レベルの問題でしっかり得点すれば差はつきにくいと考えていたので、このまま勉強を続ければ視界が開けてくるという手応えは感じていました。
英語は、塾のカリキュラムに沿ってひたすら長文読解。その上で『システム英単語』(駿台文庫)を高2の冬までに2周し、単語を見たらすぐに意味を答えられる状態になりました。
国語は漢文が稼ぎどころ。『漢文ヤマのヤマ―三羽邦美の超基礎国語塾』(学研プラス)を2、3周して完璧に頭に入れたら、センター試験で安定して満点が取れるようになりました。参考書は何冊も手を出さず、1冊を何度も繰り返すのが効果的です。
「社会は後回しでいい」とよく聞きますが、現役合格したいなら、後回しでは間に合いません。日本史・世界史ともに塾の映像授業で通史を4カ月で終わらせ、予習・復習を徹底。苦手の数学を補うためにも、社会を得意科目にしようと猛スピードで進めました。
高2の冬から中だるみになってしまいましたが、高3の6月に受けた初めての東大型模試で受験勉強への姿勢が大きく変わりました。数学で2点しか取れずE判定。中だるみなんて一気に吹き飛びましたし、数学を他の教科で挽回する戦略の失敗で教科ごとの点数のバランスが重要だと悟り、数学の勉強の比重を一気に増やしました。
「大学への数学 1対1対応の演習」シリーズ(東京出版)にひたすら取り組み、頻出分野に絞って過去問を解きました。得点源は英語・社会なので、数学の目標は「最低2完」。直前までずっとネックでしたが、何とか2次試験1週間前に2完できるようになりました。その上で、解法が分からなくても方針を検討した痕跡を残して、部分点をもらうことを意識しました。
高3の夏休み明けは、信頼できる塾の先生を信じひたすら問題を解き続けました。特に過去問が重要なのは英語と世界史。英語は分量が多いので、模試や過去問で時間配分の戦略を何パターンも試し最適なやり方を模索することが大切です。世界史の第3問は過去問と関連する単語が多く出題されるので、しっかり確認しておきましょう。逆に日本史は、細かい知識はほぼ要りません。初めて見る史料に戸惑っても、提示された史実を時代状況と照らし合わせて考えれば大丈夫です。
最大の勝因は、教科ごとのバランスです。最近の東大入試は易化傾向で毎年教科ごとの難易度が変わるので、得意教科で差を付けるのが難しく、苦手教科でも簡単な問題で他の受験生と引き離されない実力が必要になります。一つの教科に頼りすぎず、特別な苦手教科をつくらないことが大事です。
自分に合った戦略をしっかり立てて、バランス良く勉強をすれば道は開けます。頑張ってください。
***
この記事は、2017年8月に東京大学新聞社が発行した書籍『東大2018 たたかう東大』からの転載です。本誌に掲載した8人の合格体験記のうち、1人分を抜粋しました。
『東大2018 たたかう東大』は現役東大生による、受験必勝法から合格体験記、入学後の学生生活のアドバイス、後期学部への進学、そして卒業後の進路に至るまで解説したガイドブック。東大受験を考えている高校生や中学生の皆さんにお薦めです。大河ドラマ『おんな城主 直虎』脚本家・森下佳子さんへのインタビューなど、読み物記事も充実しています。
【東大2018】