星野学研究員(理化学研究所)、中西義典助教(総合文化研究科)らは、単結晶試料の構造解析の結果を事前に評価する技術を開発した。解析作業の効率や精度の向上が期待される。成果は8月22日付の英科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』(電子版)に掲載された。
研究の場では、分子や物質の性質を評価、理解するために単結晶構造解析という測定法が用いられる。この解析には数時間から数日かけた計測を要するため、数分の予備計測をして研究の目的にふさわしい結果が見込まれる試料の選別や計測条件の設定を行うことが多かった。しかし、試料の選別や計測条件の設定は研究者の「勘と経験」を頼りに行われ、「勘を外し」たり、未熟練であったりした場合、計測を繰り返す必要があり低効率だった。
星野研究員らは、事柄の原因を観測された結果から推定するベイズ推論という統計解析法に着目。予備計測で得られるデータから被験試料の結晶構造を推定する技術を開発した。実際に、この技術を異なる溶媒分子を含む2種類の結晶に適用。従来はデータ測定と単結晶構造解析を経なければ判別できなかった溶媒分子の違いを単結晶構造解析の前に確認することに成功した。試料の選別や計測条件の設定を未熟練の研究者でも効率良く行えるだけでなく、これらの作業をコンピューターに置き換える技術への発展が期待される。
この記事は9月3日発行号からの転載です。本紙では他にもオリジナル記事を公開しています。
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