五十嵐正樹助教(医学部附属病院)らは、加齢による幹細胞の機能低下を改善する方法を発見した。「健康長寿社会」の実現に貢献するとされる。成果は28日付けの英科学雑誌『エイジング・セル』(電子版)に掲載された。
身体の老化はがんや糖尿病などさまざまな疾患を引き起こし得る。老化には、組織を作るもととなる幹細胞の機能低下が関係することが知られていたが、幹細胞の機能が低下する原因は十分に分かっていなかった。
五十嵐助教らはマサチューセッツ工科大学との共同研究で、若齢マウスと老齢マウスの腸管上皮組織の標本で幹細胞を観察した。老齢マウスでは幹細胞の増殖能力が低下し、寿命を延ばすとされる遺伝子SIRT1の活性も低下していることが分かった。さらに、研究チームはSIRT1を活性化する化合物のもととなるニコチンアミドリボシド(NR)を老齢マウスに投与。結果、幹細胞の増殖能力や修復能力が改善した。
NRは食品成分やサプリメントとして摂取可能。NRの摂取により幹細胞の機能低下を回復する手法は、身体の老化を改善するための有効な方法として実用化が期待される。