学術ニュース

2019年9月6日

飢餓を学習・回避する機構発見

 ジャン・ムンソン特任研究員(理学系研究科)らは飢餓時に経験した味を忌避する学習に関わる感覚神経を見つけ、その機能を明らかにした。動物の学習と適応の基本的な仕組みが明らかになり、複雑な学習への応用が期待される。成果は8月27日付の米科学誌『米国科学アカデミー紀要』(電子版)へ掲載された。

 

 動物は飢餓を避けるため、飢餓時の環境条件を神経細胞で記憶し、同様の環境を回避するよう行動を変える。しかし、環境条件の感知から行動の変化までには複雑な情報処理が必要で、不明な点も多かった。

 

 ジャン特任研究員らは、塩濃度に応じて線虫に与える餌の量を調整し、餌の有無と塩の関係を学習させた。その後線虫を塩濃度勾配上で自由に動かせると、餌があった塩濃度には近寄り、餌がなく飢餓状態に陥った塩濃度を回避した。

 

飢餓経験と同時に感知した塩濃度を忌避する仕組み

 

 飢餓を経験した塩濃度を回避する線虫の行動には、餌があった塩濃度に向かわせる感覚神経ASERに加え、ASGという感覚神経の協力が必要なことが判明。飢餓後にASERを活動させると餌が豊富だった際の行動が誘導されたが、加えてASGを働かせると行動は抑制され、両神経が協調し線虫の進行方向を制御していると示唆された。


この記事は9月3日発行号からの転載です。本紙では他にもオリジナル記事を公開しています。

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