総長選考会議に要望書を提出していた15人の部局長らは9月28日、小宮山宏選考会議長らから書面と口頭で要望書に対する回答の説明を受け、予定通り30日に意向投票を行うことで合意した。部局長らと選考会議との間で持たれた議論において小宮山議長が意向投票を尊重すると表明したことを受けての措置で、部局長らは意向投票の予定通りの実施と選考プロセスのさらなる検証を行うとしている。
ある研究科で教授会構成員宛に送信されたメールによると、28日午後に総長選考会議の小宮山議長、渡辺努議長代行(経済学研究科長)から15人の部局長全員出席のもと口頭で回答の説明があり、部局長らとの間で2時間余りにわたって議論が交わされたという。最終的に、小宮山議長から意向投票の結果を尊重する旨が表明されたため、別途持たれた部局長らのみの会合で、30日の意向投票を予定通り実施すること、今回の選考プロセスについてなお一層の検証を求めることで合意した。選考プロセスの問題については、選考終了後の総括で検証・是正を行うとしている。
総長選考会議からの回答は、25日に4人の学部・研究科長及び11の研究所長・センター長らの連名で総長選考会議に提出された要望書の質問に答えたもの。東大新聞が入手した書面回答によると、要望書を受け25日に行われた臨時総長選考会議で、全構成員の確認を取って作成したとされるが、2人の選考会議委員が意見を保留した旨も付記されている。前提として①意向投票が総長と大学構成員の信頼関係の基礎となる重要なものである ②今回の総長選考の方法に関する議論を2015年度から学内の構成員のフィードバックも得て行ってきた、という2点を主張した上で、個別の疑念に回答している。
回答書の要点は以下の通り。
- 第2次候補者を決める9月7日の総長選考会議で、意向分布の確認か表決なのかが不明瞭なまま投票が繰り返され、表決だった場合「総長選考内規に関する了解事項」に違反していた可能性があるとされる点について
- 「審議の仕方の決定と実際の審議において、議長は全員異存ないかを確認しつつ議事進行を行っ」た。投票の方法を用いつつも合議で決定した。
- 代議員投票で1位を獲得した候補に関する否定的な投書(匿名文書)の存在が唐突に議長から示唆され、その候補が排除される大きな原因になったことについて
- 各候補者から提出された所見、面接でのやりとりを踏まえ、選考会議メンバー全員で否定的な意見と肯定的な意見を出し合いながら、丁寧に検討を行った。
- 審議を踏まえ、最終的には合議により3人の第2次候補者を選出した。
- 代議員会投票の結果は総長選考会議の議長代理と開票立会人が開票を行い、代議員会の推薦候補を決定。得票数は規則に則り一切非公表とした。その後、選考会議での面接・審議の前に、代議員会投票の結果を「情報の一つとして利用することが適当との議長の判断の下」、投票結果が選考会議委員に伝えられ、各候補者の所見の文書、面接での候補者の発言と併せて審議に利用された。
- 内規では「3人以上5人以内」の第2次候補者選定が可能であるところ、あえて最少人数の3人に絞り込んだことについて(内規に関してはこれまで「5人程度」の第2次候補者を選ぶとしていたのが今回から「3人以上5人以内」に変更されていたが、要望書の質問ではこの点には触れていない)
- 内規の改訂については、15年の『改正国立大学法人法』の施行や20年の『国立大学ガバナンス・コード』の策定といった社会情勢を踏まえ、総長選考会議がより主体的に選考に関与するのが望ましいとの判断で、所定のプロセスを経て行った。
- 第2次候補者の人数の変更については19年12月の科所長との懇談会で改訂の主旨を説明した他、4月28日の選考公示に際して発表された談話でも主旨を説明した。
回答を受け、要望書に名を連ねた部局長がいる部局では、30日に意向投票を予定通り実施する旨の説明が、29日までに部局長からなされた。一方、部局長が要望書に署名していなかった部局では、これらの回答内容や意向投票に関する説明はなされなかったという。
29日・30日には、23日に行われていたという第2次候補者3人による所信表明演説及び質疑応答の様子が、投票権を持つ各教員に録画配信されている。こちらは元々経済学研究科が中心となって開催し、教育学研究科も協力したもので、質疑応答なども二つの研究科の教員からなされた。一連の動画は29日になって情報学環など一部を除く各部局の教員に配信されたという。
今回の総長選考を巡っては、選考プロセスの透明性に疑義を唱える一部の教員が意向投票の即時延期を求める緊急アピールを行っていた他、元理事の有志も意向投票の延期を求める要望書を提出していた。意向投票は当初予定されていた30日の午後から、予定通り実施される。