濱田純一総長に替わる次期総長予定者が11月27日夜、決定する。第2次総長候補者となっているのは江川雅子理事、五神真教授(理学系研究科長・理学部長)、長谷川壽一理事・副学長、宮園浩平教授(医学系研究科長・医学部長)、大和裕幸副学長の5人だ(五十音順)。誰が総長になることで、東大にどんな変化が起こるのだろうか。
「来年度に総長が替わるが、今後も改革は継続されるのか」。これは10月15日に開催された「総長と語る集い」の質疑応答で、とある学生から飛び出した質問だ。これに対し濱田純一総長は「改革は議論を重ねた末に組織として決定しているので、継続的に改革は続く」と応じ、次期総長への期待をにじませた。
江川雅子理事
第2次総長候補者には、濱田総長を支える現職の理事と副学長から、3人が選ばれている。1人目は江川雅子理事。江川理事はハーバード大学経営学大学院で経営学修士を取得後、ソロモン・ブラザーズに入社し、ニューヨーク本店と東京支店で勤務した。日米両国で勤務経験を持つ立場から、理事として社会連携・産学連携などを担当する。
江川理事が次期総長予定者に選ばれると、東大史上初の女性総長になる。また、国際化に向けた改革がさらに進むことも考えられる。
長谷川壽一理事・副学長
2人目は長谷川壽一理事・副学長。11~13年には総合文化研究科長・教養学部長を務め、近年の初年次教育に関する改革にも深く関わっている。理事・副学長としては、学生担当などを務めている。
濱田総長が進めた改革の中で、前期教養課程を含む教養学部は特に大きな影響を受けている。総合文化研究科・教養学部出身の長谷川理事・副学長は、改革の継続に適任といえるかもしれない。
大和裕幸副学長
3人目の大和裕幸副学長は、工学系研究科出身の教授だ。09~11年には、新領域創成科学研究科長を務めた。工学系研究科・新領域創成科学研究科は共に規模が大きく学生数・教職員数で大きな割合を占め、学内で強い影響力を持つ。
五神真教授
第2次総長候補者の残りの2人は、現職の研究科長だ。五神真教授(理学系研究科長・理学部長)は、今年から任期に入ったばかりで、12~14年は副学長を務めていた。
理学部は今年10月から、海外の大学で2年以上修めた学生を学部3年生に編入させる「グローバルサイエンスコース」を開始。本年度は化学科で実施し授業は全て英語とするなど、国際化に向けた取り組みを強めている。
宮園浩平教授
宮園浩平教授(医学系研究科長・医学部長)は医学部を卒業後、医学部附属病院で教授となった。11年から現職についている。
東大では近年、医学部附属病院での臨床研究などに関する不正疑惑が取り立たされている。日本最高峰の研究機関として、東大の信頼回復に向けた取り組みが期待される。
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今回の総長選は濱田総長が今年3月で任期を満了することに伴うもの。2015年4月~21年3月の6年間の任期となる次期総長予定者が選ばれる。最終的には文部科学相の任命を受け、正式に就任する。
次期総長予定者は11月27日、教授・准教授・教授会構成員の講師などの投票結果を考慮して、総長選考会議で確定する。次期総長予定者は同日20時ごろから、本郷キャンパス伊藤国際学術研究センターで記者会見に臨む予定だ。
投票は有効投票数の過半数獲得者が出るまで、最大3回実施。3回目の投票でも過半数獲得者が出なかった場合、その投票の上位2人で決選投票を実施する。
投票結果以外に選考時に考慮されるのが、今回の総長選の公示に当たって新たに策定された「求められる総長像」。総長像として「東京大学憲章の掲げる目標・理念を尊重し達成・実現を追及する強い意志」を持つことなどが示された。
今回の総長選では9月に、代議員会と経営協議会が第1次候補者10人程度を推薦(結果は非公表)。第1次候補者は、総長選考会議による大学の将来構想や経営方針などの聞き取り調査を経て6日、第2次総長候補者として5人に絞られている。
(構成・石原祥太郎)
この記事は、2014年11月25日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。