学術ニュース

2024年9月29日

湿熱指標と死亡リスクの関連の地域差を解明

 橋爪真弘教授、郭強特任研究員(ともに東大大学院医学系研究科)と沖大幹教授(東大大学院工学系研究科)らの研究グループは、湿度と気温による健康への影響の調査を世界最大規模で実施した。日本においては、湿度と日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、気温の三つを取り入れた指標である湿球黒球温度(WBGT)と死亡リスクに高い関連があることを明らかにし、現在日本での熱中症警戒アラートの指標として用いていることが適切だと科学的に裏付けた。

 

 人間が感じる熱ストレスは気温や湿度、風速や太陽放射などさまざまな条件の影響を受けるため、各地域でどのような気温や湿度に基づく指標(湿熱指数)を熱中症警戒情報として用いるのが適切なのかは研究者の間でも意見が分かれている。そこで、今回の研究で世界43の国と地域、739都市を対象とし調査を行った。日別死亡データと気象再解析データを使い、さまざまな湿熱指数と夏季の死亡リスクとの関連を調べたところ、湿熱指数によって熱ストレスが高いとされる時期が異なることが分かった。これは適切な湿熱指標を選択することが熱中症警戒情報の精度を高めることを示唆している。

 

 湿熱指標の性能に地域差が生まれる要因も解析。米国の沿岸部や五大湖周辺地域、ペルー、韓国、日本では気温と湿度の相関が弱いため、湿熱指標の中でもWBGTが死亡リスクと高い関連を示すことが明らかになった。

 

 今回の研究の成果は各地域の熱中症や高温警戒情報の精度向上に役立つことが期待される。

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