部活・サークル

2025年4月1日

【兼部先紹介】出版甲子園実行委員会 読む側から作る側へ 学生と出版社の橋渡し

 

 東大新聞には、さまざまな個性・経歴を持った部員がいる。ここでは特に、他の部活・サークルと兼部している部員や、東大新聞に入部する以前に、他の部活・サークルを経験していた部員に焦点を当て、そうした部員の他の一面や他部活の特色を読み解く。今回は、「出版甲子園実行委員会」と兼部している部員がサークルの様子について紹介する。 (構成・山本桃歌、執筆・管原秀太、写真は出版甲子園実行委員会の提供)

 

読む側から作る側へ 学生と出版社の橋渡し

 

 2005年設立の「学生の、学生による、学生のための出版コンペティション」─出版甲子園。全国の学生から募った企画案を複数回の審査にかけ、最終的には現役の編集者・書店員数十名の前で行われるプレゼン審査でグランプリ作品を決定する。勝ち上がった企画の中には編集者からのオファーを受けて出版されるものがあり、この大会を通じて計43冊が出版された。

 

 大会を運営する実行委員会は、学生が持つ潜在的な可能性を本という形で世に発信することをモットーに、出版業界とのつながりが薄い学生を出版社に結び付け、多様な関心が発信される場を提供する。行動経済学、呪い、インド。毎年バラエティに富む企画の数々に目を通すことは、刺激的で興味深い。加えて、新入生は興味を持った企画のフィードバックや出版のサポートを行うこともできる。直接出版社に赴き、出版に向けた交渉を行う経験はなかなか得られるものではない。担当した企画が書籍化され、店頭に並んだ時の感慨はひとしおだろう。

 

 実行委員会は運営局・編集局・広報局の三つから成り、それぞれ主に会場設営、企画審査の統括、広報活動を担っている。現役の編集者を招いて業界の知見を深める「出版業界講座」、読書推進活動を兼ねたフリーペーパー「SHIORI」の作成、出版文化産業振興財団が開催した「BOOK MEETS NEXT」をはじめ複数イベント・メディアへの出演など、各局が多様な活動を展開しており、各自の都合に合わせて活動量を調整することも可能だ。学年を問わず自由闊達に意見を交わせる組織風土で、活動内容の自由度は高い。ビラなどの制作物が多く、動画・画像編集の経験が多く積めることだろう。

 

 イベント運営に興味を持っていたり、読書を趣味としていたりする人が多いため、共通の話題を見つけやすく、代をまたいで和気あいあいと活動している。入部者の希望進路はさまざまだが、出版業界を視野に入れている者は特に、実行委員会での経験が有益になるだろう。出版社や編集者と密に連携する中で、業界の雰囲気を味わうことができる。

 

 出版不況が叫ばれて久しい昨今、本というメディアの美質について再検討されることが多い。出版社に限らず書店員や作家も本の行く末について頭を悩まし、さまざまな発想で業界に新風を吹き込もうと努めている。その中でも実行委員会は、市井の学生読書家としての立場から出版業界の再興を図る。団体としてはまだ発展途上にある分、誰もが進取の気性をもって活動に臨んでいる。気苦労が多い反面、やりがいは十分だ。

 

 記者が実行委員会に所属して1年がたつ。たまたま上級生が女性のみという慣れない環境下で、当初は心細さを覚えたが、今となっては組織の醇風に包まれながら心地良く活動している。目下の目標は出版甲子園の知名度向上。達成に向け部員一丸となってまい進中だ。

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit

   
           
                             
TOPに戻る