東大大学院人文社会系研究科は3月22日、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」としても知られる熊野古道が通る、和歌山県新宮市と連携協定を締結した。締結式は新宮市と本郷キャンパスをオンラインでつなぎながら実施された。
締結式ではまず、秋山聰教授(人文社会系研究科、4月より同研究科長)があいさつした。2017年度から熊野古道での体験活動プログラムに携わる中で、新宮市との関係が深まり、半ば冗談のように連携協定を提案したところ、とんとん拍子で話が進んだという。
新宮市の田岡実千年市長は、連携協定の締結を機に、一層緊密な関係性を構築したいと述べた。人文社会系研究科が新宮市を舞台に活動することで、学術や文化、教育以外にも波及効果が期待されるとした。
大西克也教授(人文社会系研究科、締結当時は同研究科長)は、地域社会連携を通じて他者との相互理解を深めることが重要だとした。人文社会系研究科は、北海文化研究常呂実習施設が位置する北海道北見市とも既に協定を結んでおり、新宮市を含めた3者の連携を進める考えを示した。大西教授自身は、熊野古道が通る阿倍王子神社(大阪府大阪市)の近くで育っており「道は熊野につながっていた」と感慨深げに話した。
国際熊野学会の山本殖生代表委員は、大西研究科長と田岡市長が署名した協定書に、熊野三山の牛王符というお札が描かれていると紹介。協定書は起請文でもあるとして「熊野の神様の罰が当たらないように、この関係が長く続いてほしい」と語った。
連携協定は元々1月の締結を予定しており、同時期にはそれを記念した東大・熊野フォーラム(第2回)の開催も予定されていた。しかし新型コロナウイルス感染症の流行に伴う緊急事態宣言に合わせて、連携協定の締結とフォーラムの開催が延期されていた。フォーラムの代替日時は未定。