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2014年5月9日

志望企業の理念を一言一句間違えずに暗記する「企業理念クン」が落とされる理由 霜田明寛の就活十番勝負8

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モデル:てしがわらゆか 元bay Girls campus(bayFM)レポーター

 最近、社会人の方もこの連載を読んでくださっているという、ありがたい声を頂戴しています。 そんなみなさんに質問です。ご自分の勤めてる会社の「企業理念」って覚えていますでしょうか?

 会社によっては、朝礼で企業理念をみんなで唱えるところもあります。そういった会社でなければ、なかなか企業理念を「一字一句暗記している」とはいかないのではないでしょうか。 ただ、一字一句覚えていなくても、自分の会社が目標としているところは、なんとなく肌で感じてわかっているかもしれません(僕もそうです)。企業理念とは、頭で覚えるものではなく、体に染み込んでいるものなのだと思います。

 だから、自社が目指すところは理解していて、理念の言葉を強く意識せずとも、その目指す方に向かって動いているという人が多いのです。 しかし、就活中の学生にとっては、企業理念は「一字一句暗記すべきほど超重要」なものに見えているようで、毎年、”企業理念クン“が登場します。

 ”企業理念クン”は、自分の志望理由を、「企業理念に共感した」と書いたりします。「御社の●●という企業理念に共感し~」とか、もしくは自分がその企業理念と一致した人間であるといったようなことを語ります。理念を一言一句違わず言えたりするのでビックリです。そして、こうした努力はほとんど功を奏さず、彼らは戦場からの退却を余儀なくされます。

 なぜ、”企業理念クン”は、面接担当者の心に突き刺さらないのでしょうか。 そもそも面接担当者が、自社の企業理念を覚えていなかったら。熱く語られても響かないでしょう。”企業理念クン”が「人間尊重という御社の理念に共感し……」とか言っても、相手はポカンとしてしまいます。「うちの理念はそんな言葉だったのか……」と逆に思うかもしれません。企業理念に限らずですが、その会社の人ならその会社のことを全部知っていると思ったら大間違いです。部署が違えばやることも違いますし、たとえ有名な商品でも、担当者でなければ詳細を把握しているとは限りません。

 また、学生が企業理念を熱く語っても、面接担当者は「ずいぶんと言葉の上っ面だけの話をしているな」と感じてしまいます。まだ働いたことのない学生が、なぜそんなに共感できるのか、不思議に思うかもしれません。同じ理念の言葉でも、実際にその会社で働いている人と、学生とでは、感じる重みが違って当然です。言葉だけ暗記して力説しても、広い海の中からうわずみをすくい取ったような、薄っぺらい志望動機に聞こえて、全然刺さってこないのです。 もちろん、その会社の理念をもとにして志望理由を考えたのですから、間違ってはいません。でも、間違っていないことに説得力があるとは限らないのです。

 もし朝礼で企業理念を唱えるような会社だったらどうでしょう。面接担当者もちゃんと一字一句覚えている人だったら、「お、ちゃんと事前に調べてきたな」と、印象は悪くないかもしれません。ですが、それだけで面接に受かるかというと、残念ながらそうではありません。だって、面接担当者にとって、理念は「自分の知ってる情報」です。それをとうとうと述べられても、退屈じゃないですか?

  自分の会社の企業理念を褒められたら、面接担当者も人なので、嬉しいかもしれません。でも、どうせ褒めるなら、他の人が褒めないようなポイントを見つけないと、あまり効果がありません。ある企業の人事の方に聞いたところ、「あまりにも的はずれなヨイショ学生が多いので哀れになってしまう」という辛辣な意見もありました。そもそも、その会社については人事の方のほうが詳しいのが当然なので、褒めるポイントがハズレてしまうのは仕方がないのかもしれません。 “企業理念クン”に限らず、志望動機が「御社の●●というところに魅力を感じました!」で終わってしまっている人は、多くの場合、落とされます。これは、面接が「何を伝える場なのか」を忘れているパターンです。

 面接とは本来、自分がどんな人なのかを伝える場です。会社のどういうところが魅力なのかという話をするだけでは、あなたがどういう人なのかは伝わりません。 もし会社の魅力の話をするのならば、「こういうところに魅力を感じた自分」について語らなければならないでしょう。なぜ、自分はそこに魅力を感じるのか、それは、こういう人生を送ってきたから、こういう部分に魅力を感じられる感性になっているのだ、と。あくまで会社の魅力の話をフックにして、自分について語らなくてはならないのです。 企業理念の話が面接担当者にウケないのは、あまりにも多くの学生がその話をするので、うんざりしているからかもしれません。多くの学生が企業理念の話をするのは、それが簡単に手に入る情報だからです。だからこそ、なかなか手に入らない、「自分が足を使って得た情報」について面接では話をすることをおすすめします。

 企業に関する情報を、入手しやすい順番で並べると、

 企業理念 > 説明会で得られる情報 > OB訪問で得られる情報 > お客さんの生の反応

となります。入手しづらい情報をもとにすれば、面接担当者が面白いと感じる話ができるのです。 「お客さんの生の反応」とは、例えばその企業が開催したイベントに実際に行って、そのときのお客さんの様子を観察したり、感想を聞いてみたりすることで得られます。これは、立派な足を使った情報です。ここまでくると、「社員もぜひ知りたい情報」になります。

 先日、ある地方局からアナウンサーの内定をもらった女のコは、ゆかりのないその土地に行って、街頭で人をつかまえて、その局について地元の人がどう思っているかを勝手に調査しました。そして、そこから見えてくる課題を面接で話したそうです。 足を使って得た情報と、そうでない情報は、すぐにわかります。よく知りもしない相手に「あなたはこういう人だよね! 好き!」と言われても、心に響かないどころか、嫌悪感すら抱きますよね。それと同じことを面接でしてはいけません。相手を褒めるなら、まず足を動かし、他の人がしないようなアプローチをとることが重要なのです。

POINT 面接は「会社プレゼン」ではなく「自分プレゼンの時間」

POINT 自分のしたい話だだけでなく、「相手が知りたい情報」を提供する

 

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霜田明寛 (しもだ・あきひろ) 1985年生まれ、東京都出身。国立東京学芸大学附属高等学校を経て、早稲田大学商学部を卒業。2008年の大学在学中に、第四回出版甲子園準グランプリを受賞し、執筆活動を始める。雑誌記者・ライターとして活動する傍ら、『夢をかなえるゾウ』著者の水野敬也氏に師事し、『テレビ局就活の極意 パンチラ見せれば通るわよっ!』『マスコミ就活革命(レボリューション)~普通の僕らの負けない就活術~』の著書を出版。 その後、就活生相談や全国の大学からの講演依頼が殺到。アナウンサーをはじめ、テレビ局、出版社、広告代理店など、マスコミを中心に多くの就活生を送り出す。2013 年からはPR会社に勤務する傍ら、早稲田大学で就活講座を担当。主宰するセミナー『就活エッジ』も好評を博している。

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