モデル:下田奈奈 元「ZIP!」リポーター/明治ガールズコレクション2012 グランプリ
4月に入り、連日、面接が続きますね。面接には正解はなく、人によって答えが違います。僕は多くの就活生の相談を受けながら、その人なりの”模範解答”を一緒に考えたりしてきました。
ですが、ある質問に関しては、全員に共通して授けることのできる模範解答が存在します。 完全な模範解答が存在する質問、それは、「うちの会社が第一志望ですか?」です。 この質問については、どう答えればいいのかとよく聞かれます。そして、こんな相談をしてくる就活生は、基本的に「いい人」のことが多い。
しかし、就活では、いや人生では、基本的に「いい人が損をする」ので、今回はそんな人に向けて、バシッと回答したいと思います。 就活はよく恋愛にたとえられます。そんなベタなたとえは避けたいものですが、やっぱりわかりやすいので、恋愛にたとえます。
例えば、以下はどちらも僕が好きな恋愛ソングの歌詞なのですが、これを相手に言われたとして、どっちがつきあいたいと思うでしょう?
大好きだ 君が 大好きだ 僕は全力で生きる (AKB48 『大声ダイヤモンド』 作詞:秋元康)
一番大事なものは自分なのよ その次に大事なものは勉強で 三番目に大事なものが恋人よ (RCサクセション 『三番目に大事なもの』 作詞:忌野清志郎)
いや、本音は後者だとしても、本質を捉えた客観的な分析になってるのが後者だとしても、やっぱり、大声で大好きだって叫んでくれる人の方を選びたいじゃないですか。「あなたは三番目」って言ってくる人より、「あなたが一番です」って言ってくれる人を選びたいじゃないですか。
企業側の視点で考えても、一応は定年まで一緒に人生を添い遂げるという約束をするわけで、その入口で迷ってる人は「こいつ、どっかで辞めるかもな」と判断されかねないのです。つきあうかどうかのタイミングで「一番だよ」って言ってくれなかったら、「絶対こいつ浮気すんじゃん! わたしキープちゃんじゃん!」って思いますよね。 特に、人事にとって、内定者に辞退されたり、採った社員にすぐ辞められるということは、自分の評価にも響いたりするので、とても怖いことです。ときに怖さが転じて、学生が内定辞退をしようとするとキレてくる人事がいるくらいです。ちなみに、こんな風に、社会人になると「自分が上に怒られないように、自分より下を怒る人」が出てくるので気をつけましょう。
なので、就活生にはせめて面接のときくらい「第一志望です!」って言ってくれるくらいの気概を見せてもらわないと、いつか裏切られるんじゃ……と人事もおびえます。すると、採用の対象から遠のいていくのです。 仮に同じくらいの点数をつけていた就活生が2人いて、ひとりは「1番です!」もうひとりは「3番目に大事なの」といっていたら確実に前者をとりますよね。いや、仮に後者のほうが点数が低かったとしても、熱意の強い後者を逆転採用する可能性も出てきます。
実際にあった例をひとつ。某通信系大企業の最終面接を受ける前に、人事に「君は最高の評価を出しているから。無難にやれば絶対内定できるから」を言われていたサトルくん(仮名)。しかし、彼は最終面接で「内定を出したらうちにくるかね?」と聞かれ、あろうことか「うーん、集英社いきたいっすねー」と本音を答えてしまい、不採用になってしまいました。 僕らは、「本当のことを言うことがいいこと」という教育を受けてきましたが、このタイミングにおいては「本当のことを言うのは悪い」とまでは言わないまでも、「本当のことを言うのは損をする」になってしまうのです。
ということで、「うちの会社が第一志望ですか?」と聞かれたときの模範解答はひとつ。 面接官「うちの会社が第一しぼ…」 就活生「第一志望です!」(食い気味で) もちろん、こんなスタンスに抵抗を持つ人もいると思います。でも、ですよ。 内定をたくさんとる人とは、多くの企業を虜にして、たぶらかす人。すなわち内定たらし、もしくは人事たらし、にならないといけないわけですよ。多くの企業をキープして「私を選んで!」って言わせないといけない。デートの日程を入れられまくって、他の人と遊べなくなるように、内定拘束という名の縛りを受けないといけないわけです。
『失恋ショコラティエ』の松本潤は、序盤で「俺は悪い男になる」と言って、本命である石原さとみ以外の女性にも手を出して、魅力を増していきました。 冒頭で「いい人は人生で損をする」と書きました。ただ、就活という人生のかかったタイミングでは、損をするのはちょっと避けたい。このタイミングでは「悪い男」になるのもアリだと思うのです。
ほら、冷静に考えればAKBだって、ひとりに対してではなく、客席の万人に向かって大好きだ、って言ってるじゃないですか。この「君が大好きだ」がみんなに向かってではなく「自分だけに言ってくれてる!」と思わせることができた人から、企業にも異性にも、どんどんと縛られていくのです。
POINT
- 就活においては『本当のことを言うことは損をすること』のパターンがある
- 「あなただけ」のフリをして、みんなに「第一志望です♡」って言う。
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霜田明寛 (しもだ・あきひろ) 1985年生まれ、東京都出身。国立東京学芸大学附属高等学校を経て、早稲田大学商学部を卒業。2008年の大学在学中に、第四回出版甲子園準グランプリを受賞し、執筆活動を始める。雑誌記者・ライターとして活動する傍ら、『夢をかなえるゾウ』著者の水野敬也氏に師事し、『テレビ局就活の極意 パンチラ見せれば通るわよっ!』『マスコミ就活革命(レボリューション)~普通の僕らの負けない就活術~』の著書を出版。 その後、就活生相談や全国の大学からの講演依頼が殺到。アナウンサーをはじめ、テレビ局、出版社、広告代理店など、マスコミを中心に多くの就活生を送り出す。2013 年からはPR会社に勤務する傍ら、早稲田大学で就活講座を担当。主宰するセミナー『就活エッジ』も好評を博している。